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元勇者の嫁ですが、なにか? 作者:(=`ω´=)
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初歩魔法の講義ですが、なにか?

「さぁ、完爾くん。
 ちゃっちゃとすべてを吐き出したまえ」
 ICレコーダーを手にテーブルの上に身を乗り出してくる是枝女史。
「……と、いわれてもなあ……」
 完爾は頭を掻きたくなる。
 十八年間に渡る体験を即座に要領よく語って聞かせることができるほど、弁がたつわけではない。
「なにから、どう、説明をすればいいのやら……」
「むこうでは、主にどういうことをやっていたの?」
「魔族……と呼んでいた怪獣を退治していました。
 生物なのかそれと別のなにかなのかはわかりませんが、やたら大きくて硬くて壊れにくいくせに数ばかりは滅茶苦茶多くて、敏捷だったり魔法を使ってきたりして……」
「……それを退治って……完爾くんが?」
「流石におれ一人だけでは厳しいし、他にも何人か手伝って貰いましたけど……メインは、おれです。
 戦力があまり増えないもんで、完全に駆逐するのに十八年もかかってしまったけど」
「そんなのと……どうやって……」
「あー……そりゃ、魔法とか勇者補正とか、いろいろあって……。
 うーん……実際に、やってみせた方が早いかな?」
 完爾はポケットから財布を取りだし、いくつかのコインを左手に握った。
 右手には、安物のボールペンを構える。
「速度とか筋力は素でもかなり底上げされているんですが、それに加えて補助魔法って系統の魔法を自分にかけて、反射速度や動態視力を倍増してます」
 そう前置きし、左手で硬貨を弾き、右手のボールペンでその硬貨を真上に持ち上げる。
 とん、とん……と、リズムよくボールペンで硬貨を真上に打ち上げ続ける。
 そして、硬貨の枚数を無造作に増やしていく。
 一円玉から五百円玉まで、大きさも重さもバラバラな硬貨が数十枚、ボールペンの上で踊り続ける。
「隠し芸みたいなもんですが、今のおれには止まっているのも同然に感じられますので、これくらいの芸当はなんでもない」
 完爾が使用する攻撃魔法は室内で使用するには威力が大きすぎるため、あえて補助魔法を選んでみたわけだが……是枝女史は、目を見開いて驚いていた。
「……それ、なんのタネも仕掛けもないの?」
「魔法を使っているのが、強いていえばタネになりますか。
 そもそも、おれ、是枝さんがここに来ることすら知らなかったわけで……あらかじめタネとかを用意できる状況ではないと思いますが……」
「……そうね。そうよね」
 そういっている間にも、ボールペンの上で舞い続ける硬貨。
 その一枚一枚を左手の親指と人差し指で摘んでテーブルの上に置いていく。
「もっと広くて誰にも迷惑がかからない場所でしたら、もっと派手な魔法も実演できますよ」
 完爾は面白くなさそうな顔をして、そう締めくくった。
 完爾にしてみれば、この程度のことは余興にすらならない。
「いろいろと聞きたいことができてきたわけだけど……」
 是枝女史は、少し思案顔になる。
 まずは、完爾くん。
 その魔法というのは、誰でも使えるものなの?」
「ごく簡単なものなら、むこうの世界では練習次第で誰でも使うことができていましたね。
 ただ、向き不向きもありますので、高度なものになればなるほど、使える人が限られてきます。
 ええっと……ユエ。
 なにか簡単な魔法を使ってみて」
 後半は、むこうの言葉でユエミュレム姫にいってみた。
「こうですか?」
 即座に、ユエミュレム姫の手にテレビのリモコンが飛び込んできた。
「……今のは……こっちの言葉でいうと、引き寄せの魔法とでもいうのかな?
 なくし物を捜すときに使う魔法です。
 あらかじめ対象物を指定しておくことが必要ですが、それが近くにあればこうして実物を引き寄せることができます。
 対象物が遠くにある場合でも、それがどこにあるのか、漠然とした方向ぐらいは知覚できるようになります」
「金貨を硬くしたのも……」
「ええ。
 物体を硬くする魔法……というよりは、形が崩れないようにする魔法ですね。
 建材や防具などを加工する際、最後には必ずといっていいほどこの魔法がかけられます」
「そういった魔法は……こちらの人も習得が可能かしら?」
「どう……でしょうね?
 試してみたことがないので、なんともいえませんが……」
 この是枝女史の問いかけは、完爾の意表をつくものだった。
 なにしろ、これまでは人前で魔法を使わないように気をつけるのが前提であり、あえて有効活用しようという、その手の発想を自発的に封じてきた側面がある。
「では、試してみるのを前提として……こちらの平均的な人たちが魔法をはじめてから実際に使えるようになるまで、どれくらいの期間が必要になりますか?」
「こちらの世界の人たちに関して……ですか?
 魔法の素養の有無などがまるで読めませんので、どうにも断言ができません」
 完爾は軽く首を振った。
「仮に、むこうの人間とこちらの人間が、ほぼ同一の存在であると仮定して……。
 つまり、むこうの人間の平均を申しあげるのなら……そうですね。
 素質により多少前後しますが、十日から二週間くらいあればごく初歩的な魔法なら、使えるようになるはずです」
「応用というか……もう少し高度な魔法も、時間をかけて習得すれば使えるようになりますか?」
「その人の素質によりけり、ですが……十人中八人から七人くらいは、中程度の魔法までが習得可能でした。
 その、あくまでむこうでは、ですが」
「修練に必要となる期間は?」
「その人の素質や習得したい魔法の種類によってかなり前後するので……。
 あまり難易度が高すぎず、実用的な魔法であるのなら……半年から一年も練習すればなんとか使い物になるはずです」
「こちらから人を手配して……完爾くんと、それに奥さんに、魔法を使えるように仕込んで貰うことは可能ですか?
 もちろん、相応の謝礼はお支払いします」
「……参ったな」
 是枝女史の提案に対し、完爾はしばらく絶句した。
「どうしましたか? カンジ」
 完爾のとまどいを敏感に察知したのか、ユエミュレム姫が問いかけてくる。
「……こちらの人間に魔法を教えることが可能かと、そう訊かれた」
「知識や技能を教えることは可能でしょう。
 ですが、実際に使えるようになるかどうかまでは、保証の限りではありません」
 むこうでも、十人に一人か二人という割合で、まるで魔法が使えない体質の者がいたのだ。
 こちらの人間が魔法を使えるかどうかは、まったくの未知数といえる。
「それについては、すでに説明してあるはず……だけど……」
 完爾は是枝女史に向かって念を押す。
「知識などを伝えることは可能ですが、魔法が使えるようになるかどうかは、正直なところ、やってみないとなんともいえません」
「ええ。
 当然、それを前提としています」
 是枝女史も、完爾の言葉にうなづいてくれた。
「たとえば、あの金貨を頑丈にしていた魔法だけでも習得できれば……もし可能であるなら、魔法の原理などを分析、解明して応用できれば、それだけでも画期的な加工法になります。
 なにも試さないで最初から利用するのをあきらめるは、あまりにも勿体ない」
 そうした発想や想像力とは無縁であった完爾は、説明されてはじめてそうした可能性について思い当たり、同時に驚きもした。
「つまり……あー……。
 特許とか、パテントとか……」
「ええ。
 他にどんな魔法があるのかはわかりませんが……利用が可能なものならばすべて、しかるべき権利料金をお支払いすることを前提として、独占させていただきたい」
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