洒落たカフェにて向かいの席には、茶道部部長の四年生「美人さん」が座りなにやら携帯を弄っている。
美人さんってのは他でもなく「美人さん」なんだってのに友達は、どっちかっつうとかわいい系だろ?と言って聞かないってわけだ。だったらお前美人さんのことかわいこちゃんもしくはかわいこさんって呼ぶのかって。俺は美人さんのこと美人だと思ってるからそう呼んでるだけだ。
確かにまぁとかくにも言った俺だって、美人さんの呼称を「美人さん」と勝手に決めてそう呼んでるっつーわけなんだから、程度っちゃあいつと同レベルなんだろうな。
でも結構美人さんも美人さん気に入ってると思うんだよね。実際のところ。
じゃ。
試しに呼んでみるか。
「ねえ?かわいこさん」
なんて、ほらやっぱり変だし呼ぶなら「美人さん」の方が断然いいじゃんか。
考えていると、美人さんは気恥ずかしそうに笑った。
うふふ。そんな風に呼ばれたことないから変な感じするね。
そりゃあそうだろーな。こんなこと現実に実行するってぇのは、世界広しと言えども俺だけとは言い過ぎでもあるか。
ま結局それくらいのもんだ。
「たまには気分でも変えてみようと思ってさ。どうだった美人さん?」
げっしまった。
あぁやっぱり慣れってのはなかなか取れないもんだなぁ。
ボンヤリ思うと、美人さんはそれを読んだかのごとくにとても良いタイミングで笑った。
はは。慣れないことはしないほうがいいよ。
「そうだね」
俺はエスプレッソを飲み干した。
カップを置いたとき、美人さんの携帯が震えた。
ああもういかなきゃ。友達待ってるんだよねぇ。
立ち上がる美人さん。
「……美人さん。ラテ残ってるけど」
ふと言う。
カップは半分ほど汗をかいていた。
うーん。……勿体ないから飲んじゃっても良いよ?どうせ君のおごりなんだし。
「いつだれがボクのおごりって決めたの?」
それは今私だけど良いじゃない。私のリップチュー……ん?チューリップかしら。まあいいわ。それもらえるんだし十分おつりが来るでしょ?
そう言われた俺はカップの口を見つめながら、美人さんの唇のことを考えていた。
何気なく手を伸ばし自分の口元に持ってくると美人さんが驚いた。
あ!ちょちょっと冗談だってぇぇぇ、ぇ……(ごぐごぐと飲んでいくうちに、美人さんの声はデクレッシェンドした)……。
「ふぅ。美人さんの唾液入りのラテ間接キス添えおいしいよ」
もう。本気にしないでよぉ。
いじらしい美人さん。
「それより時間は良いの?」
携帯を指して俺は聞く。
あぁっ!ごめん、いかなきゃ!またねー!
駆けていく美人さんの翻るスカート。
滑るような長い足。
そりゃもちろん。
またこんな機会があるってんなら喜んでいくぜ。
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