「あら、桃」
「・・・・・・」
「大きいわね、東洋の神秘って奴かしら?」
「ふっ、くだらねえ」
そうして、桃は瀬戸内海へと無事に流れていきました。
「ほら、蘭ちゃん!桃や!」
「うわあ、おっきい!手、届くかしら?」
「あ、ここの竿、借りよ。蘭ちゃん、しっかり手ぇ持っといてや」
「和葉ちゃん、気をつけて、もう少し。ああ、届かない!」
「もうちょっとやったのに」
「ホント、すごくおいしそうな桃だったのに、残念ね」
「ま、しかたないわ。
それに、もしうまく拾えたとしても、
私ら、刑事と探偵の娘やろ。
やっぱし、拾ったもんをそのまんま
気軽に自分達のもんにはできへんしね。」
「そう、そうよね、和葉ちゃん
でも、拾えたら、少し食費が浮くかな、と思ったんだけど」
「しっかり、主婦しとるんやな、蘭ちゃん」
そうして、桃は瀬戸内海へと無事に流れていきました。
「ちょ、ちょっと、高木君、桃よ、桃。
何であんな大きな桃が流れてるのよ」
「・・・もしかして、由美さんのいたずらじゃあないですか?」
「そう言えば、由美の奴、ヤケに今日の予定について
探りを入れてたわね」
「で、佐藤さん、どうします?桃」
「とりあえず、回収して、隠しカメラとか、盗聴器とか
怪しげな仕掛けがないかどうか調べてみましょう」
「あ、佐藤さん、僕が行きます」
「高木君!足元気をつけて!ああ!
・・・だ、大丈夫?高木君」
「は、はは・・・、何とか」
と言うわけで、心ならずも二人の熱いデートに
水を差して、桃は、瀬戸内海へと無事に流れていきました。
「おい、工藤、桃や」
「ああ、桃だな」
「お前、普通の桃やないで!」
「俺は、もう桃にはうんざりしてるんだよ」
「体は、俺より、若いくせに、エネルギーのないやっちゃなあ」
「おい、服部、俺に巻いてる腰紐は何だ?
まさか、俺を道具に使う気か!」
「よ〜し、工藤、きっちり桃にしがみつくんやで。
よっしゃあ、かっ飛べや!工藤!!
・・・あ・・・、悪りい・・・
お〜い、工藤〜、元気かあ〜」
「・・・ああ、
立ち木に叩きつけられた人間にしてはな。
服部、お前が最初から、狙ったとは思わんが、
未必の故意くらいはあったんじゃねえか?」
「何を言うとんのや、今のは事故や、完全な事故。
しっかし、よう飛んだなあ。
まさか、向こう岸まで届くとは思いもせんかったわ」
というわけで、
東西高校生探偵コンビの追求を逃れ
桃は、瀬戸内海へと無事に流れていきました。
「アニキ、桃!バカでかい桃が流れてきやすぜ!」
「また、桃か・・・」
「またって、アニキ!
そんじょそこらにあるような、桃じゃあ、ありませんぜ」
突然、数発の銃声が響き渡りました。
その音が消え去った後、
水面には、かつて桃であった残骸が、
僅かばかり漂っているだけとなりました。
「行くぞ」
「・・・へい」
そうして、桃は、瀬戸内海の藻屑と消え去りましたとさ。
ちゃんちゃん。
(おわり)
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