(二百字小説)私の指
指切の感触を覚えてる。
ごつごつと大きな手。恥ずかしげに私と小指を絡ませて、秘密めいた囁き声。
全部思い出せるのに、あの人はもういない。
死んだのだと人から聞いた。
好きだった。
奥さんを大事にしてたから、絶対に言えなかったけど。
今の私に出来るのは、泣く事だけだ。
彼の好きな音楽で泣き、自分の小指を見るだけで涙が浮ぶ。
けれど悲しみはある日薄れた。
気付いたのだ。
私が泣きながら眠る夜、あの手が涙を拭いに現れると。
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スペース数えず200文字小説。




