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Imitation friend (偽友達)

作者:菜宮 雪
この話は、フィクションです。作中の、人物名や、ハンドル名など、実在の方とは何の関係もございません。
 雅彦はずっと同じ画面を見ていた。手に持っている煙草はすでに連続三本目。彼の住まいであるワンルームマンション内は、その煙で空気が濁って白い。
「このクソやろう……俺をバカにしている」
 口の奥でそうつぶやいては、何度も何度もそこばかりを読み返す。彼が見ているパソコンの画面。デスクトップ型のモニターに映されているのは、色とりどりの、花とハートが散りばめられたブログ。そこの書き込みを見つめているうちに、すっかり短くなってしまった煙草を、満タンになった灰皿の中で揉み消した。
 今、雅彦が頬をひきつらせながら見ているのは、『月乃キメラの言いたい放題☆』というブログ。たまたま見つけたそこは、ネット小説の紹介や、管理人の月乃キメラの日常などが書かれている。開かれているページは、ある小説の批評。そこでこっぴどくたたかれているその小説は、仕事で忙しい雅彦が、心血を注いで一年近くかかって完成させたものだった。
「これは、ちょっとないだろう。こいつめ……」
 雅彦の筆名、『白木りん』の名が画面上に出ている。



は〜い! キメラのページへようこそぉ。見てくれてありがとね〜♪
今日もキメラは元気いっぱい。本日のキメラの火炎放射的小説感想は、これだよ〜ん。
 『愛を追い求めて、涙』 (白木りん 作) ジャンル:恋愛 
これははっきり言ってチョー駄作。長編で八十話までひっぱっておいて、この終わりはない。後味の悪さダントツ。このラストはゲロだな。
なんだこりゃ。ザケルナー!  
この作者は完全自己満足型。恋人役の男がダサイ上にキモいし、登場が臭すぎ。あんな調子よく出会うわけがないだろ、バーカ(笑)。それに女の方もちょいバカで、男に誘われるままにのこのこついていって、そのままHするなんてあり得ねー。ただの尻軽女。ナンパなれしている設定かと思いきや、そうではなく女は純情派として描かれていて、最初にすんなりヤッたくせに、後で意味不明にモジモジとじらしたりしている。
ウザッ! くだらねー。
読んだ時間がもったいなかった。小説ランキングの一位はインチキだ。これは仲間同士で投票しているに決まっているね。あたしの時間を返してくれー! 
みなさ〜ん、これはめちゃくちゃばかばかしいアホ物語。でもコメディーじゃないんだよね。どうやら、真剣恋愛のつもりらしいから、それがまぬけすぎて、鼻水が出るほど笑えたョ。最悪ストーリーで読むだけ無駄。何が涙だよ。笑い泣きしろってか? 
この話、ウザすぎでおもしろくないから絶対に読むな。駄文に長時間付き合うのはばかばかしいよぉ。
読むな、ヨムナ、よむなぁぁぁぁ!


 あちこちが、赤で大きい文字にしてわざわざ強調してある。びっくりマークをつけているところはほとんどそうだ。雅彦の目は「ザケルナー」の赤い字の上で止まっていた。
「俺は……俺はふざけてなんかいない。真剣に書いたのに、なんだ、その言い草は。ふざけているのはおまえだ。気に食わないなら最後まで読まなきゃいいだろう。えらそうに、あれこれ書きやがって。俺はランキングの投票依頼なんか、したこともないのに」
 胸くそ悪く、画面をにらみつける。
 雅彦は、その酷評から目を離し、月乃キメラのプロフィールと、ブログの内容を調べた。


月乃キメラ☆
おとめ座のA型人間
女子高の二年生やってまーす
ネット小説と映画音楽が大好き^^
よろしくぅ♪

 隅っこの方には、生年月日をはじめ、好みの食べ物や、住んでいる市町村名まで明記してあった。高二、と書いてある。
「……ってことは、十六、七ってとこか。自分で自分を特定出来るような内容を暴露するなんて、個人情報漏えいの危険を何も考えていないな。こいつの方がバカじゃねえか」
 こんな子供に、三十すぎに自分が笑われているかと思うと、しゃれにもならない。 
 雅彦は、画面をつけたままパソコンから離れて、狭い部屋に敷きっぱなしになっているふとんの上に、ゴロリとあおむけになった。たばこで煙った部屋の、やにで黄ばんだ天井を見上げる。不快感が口から出ていく。
「ははっ、あれは駄作か。コンテストに出さなくてよかったってことか。それにしても……もうちょっとましな言い方があるだろうにな。そりゃ、読んだ人全員から好意的な意見をもらえることなんか、あるわけがないけど、キャラの魅力がないから面白くなかった、と書いてくれれば、俺も素直になれるのに……」

 プログラマーの仕事をしている雅彦が、ひとり暮らしのさびしさと、忙しすぎる仕事で、たまったストレスの解消に始めたのが、オリジナル小説執筆。深夜に少しずつ執筆し、ネット投稿をはじめてすでに八年目になる。それなりに書き方も覚え、ランキングでも上位に食い込めるようになってきただけに、たまたま見つけたこのブログの内容は、睡眠をさまたげるには充分だった。目を閉じても、赤く拡大された「ザケルナー」や「読むな」の文字がちらつく。酷評をもらったことは初めてではないが、こんな酷い書き方をされたことはない。
 時刻は日付が変わる頃。新聞や雑誌は、重ねられることなくあちこちに乱雑に置かれ、コンビニの弁当の空箱で散らかった部屋。空気のよどんだ部屋の、真ん中に敷かれたふとんの中で、しばらく天井をにらんでいた雅彦は、ふとんから起き上がると、冷蔵庫から缶ビールを出し、その場で立ったまま、半分ほど一気に飲んだ。
 ネット上で小説を公開するということは、どんな批評でも受けなければならないということはわかっている。酷評されてくやしいなら、もっと腕を磨けばいい。そんなことぐらい承知している。こんなことを書かれるのは自分の筆力がないだけなのだ。自分を納得させようと、深呼吸し、吐き出す息に不快感を混ぜても、胸のつかえがとれない。
「は……女子高生にバカと言われるほどとは……そんなに酷い作品だったのか……」
 自分に言い聞かせても、胸やけするような、もやもやした闇は収まらない。再びパソコンラックの椅子に座った。画面は、まだキメラのページを出したままになっている。
 缶ビールを飲み干すと、画面を見ながら濃いため息を吐き出す。ここでけなされているのは自分の作品だけではなかった。ほとんどが酷評。ザケルナ、ウザイ、駄作の連発。『本日のキメラの火炎放射の標的は――』などのその書き方からして、どうやら、このブログの主、月乃キメラという自称感想文屋は、さまざまなネット小説を読んでは、自分のブログでこき下ろすのが趣味らしい。
 読み進めるうちに、怒りと疑問がわいてくる。
 他の作者はなぜ怒らないのか。普通、バカとか書かれたら許せない人間が多いと思う。自分よりも酷いことを書かれている作品もある。作品の出来が悪いのは作者の力不足だろうが、この感想は酷過ぎる。
「火炎放射的感想」――最初から腐らすつもり丸出しで、調子に乗りすぎている記事。どの感想も、ほとんど、ほめ言葉は一切なし。けなしていない作品がたまにあるかと思えば、相互リンクしている者の作品ばかりみたい。身内びいきがみえみえだった。
 雅彦は、キメラが思いっきり、ウザイ、ウザイ、と酷評している他人の小説を開いてみた。読んでみると、それは短編で、甘い恋愛小説だった。文章は読みやすく、筋もはっきりしている作品。文句をつけるなら、設定がありがちで先が見えてしまう、といったところか。レベル的には普通で、そう悪くはない。
 はっ、と急に笑いがこみあげてきた。
「なんだよ、駄作だの、ウザイ恋愛だの、って。大げさすぎる。ふん、こいつ、ガキだから本当の恋愛を知らないな。こんなケツの青い鼻たれ女子高生のことで、俺の貴重な時間をつぶすこともない。くだらねえブログだ」
 雅彦はその日はそれで、パソコンを閉じた。

 翌日、帰宅してから、やはり気になり、再び、あのキメラのページを開くと、長いコメントが入っていた。書きこんだのは、雅彦ではない。



2008:10/29 14:15 おせっかいおばさん

はじめまして、キメラさん。
通りすがりのおせっかいおばさんです。
キメラさんの小説感想、まめな更新で、とてもすばらしいですね。
でも、ちょっと思うことがいろいろあるので、書かせてください。
このところ、批評の度が過ぎていませんか? 
特に、この、白木りんさんの作品、『愛を追い求めて、涙』は私も読みましたが、これは駄作ではなく、秀作だと思います。
主人公の美奈が、尻軽女だなんて酷いです。彼女は、出会ったばかりの健に、雰囲気で体を許してしまいましたが、そのことで苦しみ、それがこの話の中心となっているので、意味不明な展開とは思えません。揺れ動く美奈の気持ちにつられ、私は何度も泣かされました。
そして、このラスト。読了後、涙を止めるのが大変でした。
健の容姿が、ダサイと思っておられるようですが、かえって親近感がわき、物語に入り込めるので、これでいいと思います。
キャラの設定やストーリーが好みではなかった、という理由だけで、酷い言葉が並んでいるのを見るのは、この小説に感動した読者にはきついです。
それに、この作品、文法作法もきちんとしていますし、どの部分もよく推敲されており、駄文とは言えません。
キメラさんがここでやっておられる小説感想は、失礼ですが、内容が気に入らない小説の誹謗中傷でしょう。これを作者や、これらの作品のファンの方が見たら、どう思うか考えてください。もちろん、読み手に不快な思いをさせるような作品を、書く作者の方にも非がある場合はありますが、だからといって、なんでも言いたい放題はいかがなものかと思います。
読み手のことを考えていない、との小説評価をされていらっしゃいますが、こちらのブログにも同じことが言えるのではないでしょうか。ブログも小説と同様、公開した以上、不特定多数の人が見る物なのですよ。
もしも、『キメラさんのブログは、中身がなくてただの中傷しかしていない、最悪、見るな』とどこかに載っていたらどう思いますか? そして『最悪、見るな』の文字が赤で大きく示されて強調されていたら、平気でいられますか? 
作者が一生懸命に書いた物を、悪い点ばかりをあげて中傷する行為は、犯罪に等しいです。小説の感想を書くことは自由なことですが、ある程度のマナーは必要だと思います。どうしても感想を出したいならば、小説の粗ばかり探すのではなく、少しでもいいところを探して、ほめることも大切ではないでしょうか。口ぎたなくののしるだけでは、作者のやる気をそぐだけです。
素人の作者たちが、精一杯力を注いで作り上げた作品たちが、こちらのブログでけなされているのを見るのはとても悲しいものです。
「ザケルナ」「バカ」「ウザイ」などの、人を見下みくだした言葉は、相手の心を切り裂く凶器になりますよ。


 びっしり字の詰まったコメントを読み終えた雅彦は、一杯になった灰皿の中身をごみばこに開けながら、ひとり笑いをもらした。
「ふっ……ちゃんと俺の作品のよさをわかってくれているやつがいるじゃないか。やっぱり、俺の作品、そんなに悪くないよな。おせっかいおばさん、ありがとう! キメラがこのおばさんのコメントにどう対応するか楽しみだ」
 キメラがどんな顔でこのコメントを読んだのかと想像すると、にやけずにはいられなかった。ひとりきりの、狭いマンションで、満足の祝杯を掲げた。

 翌日の夜、あのコメントの返信を見ることを心待ちにしていた雅彦は、楽しみにしていたキメラのブログを見て、大きなため息をついていた。灰皿の上に置かれたままの、火のついた煙草の煙が、ため息の風で、途中でちぎれた。
「このぉ……」
 おせっかいおばさんの長いコメントは、返答があるどころか、削除されており、しかも、ブログは改装され、『荒らし、中傷、このブログに関する批判、一切おことわり』と一番上に大きく目立つように出ていた。
「このガキめ、ザケルナ! こいつは自分の気に入らないコメントは中傷として削除するのか。中傷しているのはおまえの方だろう」
 雅彦は、過去のコメントをすべて調べたが、残されているコメントは、厳しい意見は一つもなく、皆、キメラをほめたたえたり、励ますものばかり。ネット友達だと思われる人間からの好意的なコメントが多く、こき下ろされた作者たちからの反論はひとつもない。
「ふ〜ん、そういうことか」
 どうやら、キメラは今までも、うるさいコメントは削除していたらしい。
「それなら、俺がおまえをこらしめてやろう。調子に乗って大人をからかうと、どういうことになるか教えてやるぜ」
 雅彦は、キメラのブログ内の『お友達募集。キメラへの連絡はこちら』というところをクリックした。メールフォームが立ち上がる。雅彦は、口元をゆるめながら、慣れた手つきで入力した。そこへ書き込んだ自分のメルアドは、複数所持しているうちの、ほとんど使っていないアドレスにした。


はじめまして。雨宮モモと申します(ペコリ)
キメラさんと同じ、高校二年生です。
いつもキメラさんのブログ楽しみにしているんですよ。
キメラさんの感想集、おもしろくって、大好きですwww
近いうちに私も小説感想ブログを始めようと思うので、そしたら、見に来てくださいね。
でわ、でわ、また^^


 翌日、雅彦のパソコンには、キメラからの返信メールがきちんと来ていた。

こんにちは、モモさん
おもしろいって思ってもらえてうれしいです(笑)
モモさんも感想屋を始めるなら、応援しますよ〜
毎日覗きにいっちゃおうかな
他にもこういうの、やっている人を知っていたら紹介してくださいね
モモさんのブログ立ち上げ、楽しみにしてマス
ぜひ相互リンクさせてネ♪


「よし、かかったな……これでいい」
 女子高生雨宮モモとしてメールを送った雅彦は、笑いで目を細めながら、煙草の煙をプカリと吐き出した。


 それから約三週間後。
 仕事を終えた雅彦は、ネットカフェで遅い夕食を取っていた。そのネットカフェは、二十四時間営業なので、仕事で遅くなった時には便利だ。プライバシーはきちんと保たれ、隣の人のパソコンが覗けないように、完全に仕切られた個室ばかりになっている。
 雅彦は、唐揚げを口に運びながら、なじみになった月乃キメラのブログを開き、雨宮モモの名で書きこんだきのうのコメントに目を通した。



2008:11/20 23:11 雨宮モモ

モモでーす。またお邪魔しまあす。
今日の感想、最高! サイコー、サイコー!
あたしもね、この小説、読んだよ。
改行が多すぎてウザイし、話も全然イケてないなって、思ったの。
キメラさんの感想を見て、大拍手!
あたしと同じ考えだァ!(うれし泣きぃ。。。)
モモのブログ、だいぶ準備できたんだよ^^
もうすぐ立ち上げるから、そしたら遊びにきて〜


 それの返答はきちんとついている。モモ、こと雅彦は、何度も応援のコメントを入れたため、たった三週間ほどの間に、すっかりキメラの友達の扱いになっている。


2008:11/21 22:28 月乃キメラ

モモちゃん、いつもありがとー!
モモちゃんのコメントで元気もりも〜り!
キメラはまだまだ頑張るからねー
ブログ立ち上げ、はやくぅ
待ってるよ〜ん♪

 このコメントはどちらも一般公開されている。どうみても、親しい仲間同士のコメントのやり取りに見えることだろう。唐あげをほおばっている雅彦の、唇が横に伸びた。
「ククク……バカだな。俺が本気でおまえの感想に同調しているとでも思っているのか? おまえをほめちぎっていい気にさせてやっているだけだぜ。今のうちに舞い上がっておけ。俺が女子高生だと信じている間抜けなおまえに、とっておきのプレゼントをやるぜ。だてにプログラマーをやってるわけじゃない。おまえ用に開発した最高のプログラムを送りつけてやる。作るのに三週間近くかかって、苦労したんだ。絶対に開封しろよ」

 はやりの歌が流れるネットカフェの一室。雅彦のつぶやきは誰も聞いていない。雅彦は、キメラのページのメールフォームを開いた。メールなら、一般公開されないので、キメラだけが見ることができる。



キメラさん、聞いて聞いてぇ〜
ついに、ついに、ついに――!
モモのブログを立ち上げました!
荒らされるのは嫌なので、会員制にしたの。
ページへ行くには、このメールの添付ファイルを開いてね。
もし、ウイルスソフトに邪魔されて開けなかったら、その場合は一度、ウイルスソフトを切ってからやり直してください。
警告が出ても無視してOKダヨ。
一瞬、意味不明なダウンロード画面が出るかもしれないけど、気にしないでね〜
キメラさんの招待番号は――

「さあ、行け! キメラのパソコンデータを破壊しろ」
 雅彦は唇を横にひいたまま、カチリ、と送信ボタンを押した。添付ファイル付きのメールは、何事もなく送信された。後は、キメラがこのファイルを開いてくれるかどうかの問題。このプログラムは、メールを開くだけでは作動しない。メールと同時に送信した添付ファイルを開くと、画面には偽のログインボタンが現れる。そこをクリックすると、システム内に入り込んですべてのデータ消去活動を起こすように作った。 
 雅彦は、薄笑みを浮かべながら、自分が作った破壊プログラムの入っているCDを、パソコンから抜くと、ネットカフェを後にし、自宅のワンルームマンションへ戻った。


「あれ?」
 月乃キメラは、突然固まってしまったノートパソコンの前で首をかしげた。パソコンは青いエラー画面になっており、予期せぬエラーが――と出ている。再起動しようとしても操作で電源を落とすことができない。やむなく電源スイッチを強制的に切った。再び立ち上げ直そうとするが、画面は黒いままで、カーソルすら出ず、まったく動かない。
 自宅の勉強部屋に置いてある、大きめのノートパソコンは、まだ購入して一年ちょっとしか経っていない。故障にしては早すぎる。モモからのメールに、ウイルスが付いて来たのだろうかとあせりながら、電源を入れ直していると、母親がノックして戸口に顔を見せた。
「俊夫、ごはんよ。何、まだ着替えてなかったの? 帰ったら学生服はすぐに脱いで、ハンガーにかけておいてって言ったでしょう。さっさとしないと塾に間に合わないわよ」
「パソコンが壊れちゃってさ。電源は入っているみたいだけど、何でかなぁ……」
 月乃キメラ、こと、佐田俊夫は、黒い画面のままのパソコンのキーをあれこれ触っている。詰襟の学生服姿のままパソコンにかじりついている息子に、母親は眉をひそめた。
「もう、俊夫はパソコンばっかり。勉強しないなら、取り上げるわよ。受験まであと半年もないのよ。今のままの成績が維持できれば、県内最高レベルの南高に手が届くじゃない」
 俊夫は母親の方を見もしない。
「……僕、南高校になんか行きたくない。高校そのものに行く気がない」
「何をいまさら言っているの。俊夫が南高に入れるかもしれないって、おばあちゃんも楽しみにしているわ。天才の俊夫には、みんなの期待がかかっているんだからね。さあ、時間がなくなるから早くごはんを食べなさい」
「わかったよ。うるさいなあ」
 俊夫は、しぶしぶパソコンをたたみ、勉強机から離れると、学生服から普段着に着替えた。

 夜十時過ぎ、塾から帰った俊夫は、再びパソコンを立ち上げようと試みた。背中を丸めてノートパソコンを覗き込む。
「だめか……」
 相変わらずの黒い画面に、舌打ちする。いったん周辺機器を全部はずし、接続を確認したが、状況は変わらない。これでは今日の更新はできそうにない。更新どころか、人のブログを覗くことすら無理。モモのブログを早くみたい気持ちがよけいにあせらせる。モモにはいずれ正体を明かし、メル友になってもらおうと思っていた。
「くそ、くそ、くそう!」
 たくさんの人が更新を待っているはずだ。ウイルスソフトを切ったから、おかしなウイルスがどこかからついてきたかもしれない、と不安がよぎったが、画面が何も出ない以上、ウイルスなのかどうか、確かめることすらできない。
 そこへ、母親がノックして、俊夫の部屋に入ってきた。手に持っている木製の丸盆には、コーヒーと小さいおにぎりが乗っている。
「俊夫、お夜食よ。なに、またパソコン? だめって言ったでしょう。パソコンはお母さんが預かるわね。勉強のさまたげになるなら、私が預かる、そういう約束だったわね」
 母親は、盆を勉強机の隅に置くと、パソコンに手を伸ばした。俊夫はあわててその手を払った。
「触らないでくれよ。勉強のさまたげになんかなっていない。これは勉強道具だ」
「いつもいつも、何を見ているの。私が入って来ると慌てて閉じて。勉強のサイトを見ているなら、隠すことはないでしょう」
 母親はパソコンにはうとく、俊夫が月乃キメラとして、ブログをやっていることは全く知らなかった。
「俊夫……あなたのためよ。パソコンをよこしなさい」
「いやだ、持っていかないで。壊れているから、ちょっと直したい。これがないと困るんだ。パソコンを取り上げるつもりなら、母さんの携帯を貸してよ」
「携帯電話なら、合格お祝いに買ってあげるからね。ネットよりも、今やるべきことは勉強でしょう」
「母さん、僕、高校になんか行かない。高校に行かずに、このパソコンを使って独学で作家になるための勉強をする。だから、もう受験なんか――」
「俊夫、何を言っているの? そんないい成績で、どこの高校にも行かないなんてもったいない。大学卒業後に作家になるならそれでもいいけど、今は、さっさと今日の課題を済ませて睡眠をとるのよ。次に見た時に、またパソコンに触っていたら、本当に取り上げるからね、いいわね」
 母親は、きつくそう言うと、俊夫の部屋を出て行った。俊夫は、母親の出ていた戸口をしばらくにらみつけていた。
「母さんなんか大嫌いだ。僕の気持なんか、聞いてもくれないじゃないか。僕のすみかはパソコンの中にしかない。学校生活は生徒にストレスを与えるだけで、何も教えてくれない。僕は学校なんか行かなくても、ネットさえあれば生きていける。勉強なら、この中の情報から取ればいい。それに、ネットの中には、僕をわかってくれて、応援してくれている人が何人もいる。学校の友達と話しているよりもずっと楽しい」
 俊夫は再びノートパソコンを開き、電源を入れた。パワーランプは点灯しているものの、相変わらず、立ち上がらない。
「う〜ん、やっぱりだめか……」
 パソコンの説明書を取り出し、トラブルについての説明書をパラパラめくった。よくわからないので、勉強部屋に備え付けてある電話機の子機を手に取ると、パソコンメーカーのサポートデスクへ電話した。すぐに出ないサポート電話を待ちながら、母親が用意した夜食を口にした。もし、パソコンが立ち上がらなかったら……俊夫は、指先を無意識にコツコツと机に叩きつけていた。


 翌朝、俊夫は、母親にせかされて朝食を取っていた。母親と二人きりの食卓の上には、ベーコンエッグにコーンスープ。そしてオニオンサラダ。俊夫の好物ばかりが並んでいる。朝日が差し込む明るい食卓でも、俊夫の顔は曇っていた。
「どうしたの、早く食べなさい。遅刻するわよ」
「母さん……頼みたいんだけど、僕のパソコン、修理に出すから、今日のうちにサービスセンターに送っておいてくれない?」
「修理って……壊れたならちょうどいいじゃないの。パソコンばっかりやっていては、勉強がおろそかになるでしょう。俊夫の受験が終わったら、修理に出してあげるわね」
「勉強ならちゃんとやる。頼むよ。僕、きちんとそれなりの成績を出しているだろう? だから――」
「ダメ! 今になって手を抜いたら負けよ。今はね、将来がかかった大切な時期だってこと、自分でもわかっているくせに、そんなことを言うもんじゃありません」
 母親は強い口調だった。いつもそう。何かと勉強。気に入らないとだんだんと声が大きくなる。こうなると何を言っても取り合ってくれない。
「じゃあ、いいよ。父さんに頼むから。パソコンは元の大きさはそうないけど、梱包すると結構大きくなるから、車で運んでほしいんだ」
「お父さんが忙しいのはわかっているでしょう。今日だって、たぶん深夜まで残業でしょう。夕べも帰りは遅かったのに、俊夫より先に出勤しているのよ。父さんには、そんな暇なんかないわ」
「じゃあ、この家に運送屋に取りに来てもらうように電話しておくから、回収に来たら渡してくれる?」
 いつもとは違い、すぐに引き下がらない息子に、母親は、今度は少し、声のトーンと速度を下げた。
「俊夫……あのねえ、今はどういう時期かわかっているでしょう。私が送ることは簡単だけど、パソコンが直ってしまったら、俊夫はそれがやりたいばかりで勉強できないわよ。子どもの勉強のさまたげになるような機械が、早く復活することに手を貸すなんて、気が乗らない。もし受験に失敗したら、後悔するわよ」
 母親は、その後もしつこく「そんなことわかっているでしょう、わかっているくせに」と繰り返し言った。今までもそうで、何度もその言葉を吐かれ、つっかかる気力が奪われていく。失望でうつむいていた俊夫は、ゆっくりと顔をあげ、食卓の向かいに座っていた母親に、びしりと視線を合わせた。
「母さん、じゃあさ、パソコン修理のことは自分で考えるからいいよ。でも、どうしてもネットが見たいから、携帯電話をすぐに買ってくれない? みんな持っている。持っていないのは僕だけだから」
「みんな、ってどういうみんな? 確かにクラスの半分以上が持っているかもしれないけど、携帯は合格したら買ってあげるって、この前も言ったでしょう」
「必ず合格するから、前祝いとして先にほしい」
「中学生には携帯は持たせないのが我が家の方針。学校で禁止しているようなものを買う必要はありません。他所よそは他所、うちはうち」
「もういいよ。母さんとは会話にならない」
 俊夫は、皿に残ったベーコンを全部口に放り込むと、食卓を離れた。ため息交じりに部屋に戻って、学校へ行く準備をする。夕べ、サポートデスクへ電話相談したが、パソコンは一度も立ち上げに成功しなかった。起動ディスクの使い方の手順を教えてもらったが、それすらうまくいかなかったので、電話の向こうの担当者が、内部の部品の故障の可能性があると判断し、修理に送るように指示していた。
 修理の発送は母親に頼めない。それなら自分で、と送る手段を考えた。あれこれ考えた結果、自分の自転車でコンビニまで運んで、発送することに決めた。しかし、平日は塾で忙しく、日曜日まで修理に出せない。コメントを確認したいが、どうしようもない。


 その週の日曜日の午後、ようやくパソコンを修理に送った俊夫は、その足で自転車を走らせ図書館に向かった。市立図書館には検索用として、インターネットが使えるパソコンが置いてある。使用料は無料で、ひとり三十分まで利用可能だ。
 数日ぶりに開いた自分のブログに、俊夫は思わずうめき声を漏らした。コメントがいくつもたまっている。それが、ほとんど意味不明な言葉を並べたものばかりだった。日本語として読むことができるものでも、「バカ」「ウザイ」「死ね!」などが連なっている。しかし、全部が荒らし、というわけではなく、それらの中には、長いコメントを入れたあの『おせっかいおばさん』のものもあった。



2008:11/26 13:35 おせっかいおばさん

キメラさん、私のコメントは削除しておいて、こういう荒らしは放置するのですか? 
私は、ネット小説を楽しむ仲間として、誠実に忠告しただけで、削除されるようなものを書いたつもりはありません。
荒らし行為にへこんでおられて、更新できないのかもしれませんが、私のコメントをあっさりと削除したあなたなら、これぐらいは平気でしょう。
忙しくなって更新が滞るなら、一言読者に連絡しては?



2008:11/27 20:45 こっぴどくやられた一作者

真面目なコメントが削除されたのって、私だけではなかったのか!
キメラさんは、勝手のいい人ですね。
あなた流に、火炎放射的いい方をするならば、最悪とあなたに言われた私の作品以上に、あなたのブログは最悪度満点。



2008:11/27 17:52 匿名

久しぶりに見たら、あれれ……
荒らされてるわ
荒らし対策に、しばらくコメント欄を閉鎖したらどうですか?



2008:11/27 23:54 毒絶男

そうだ、そうだ
閉鎖しろぉぉぉぉぉぉ!
コメント欄だけでなく、いっそのこと全部消せよなぁ(笑)
誰もおまえのことなんか、すごいやつだとは思っていないぜwww
応援コメントを書きこんでいるのは、おまえ自身だろう?
みえみえだぜ
つまらねー自作自演ブログ
糞以下だな



「僕のブログが荒らされてる。糞以下とは何だ、顔が見えないと思って……僕は、自作自演のコメントなんか入れてない。くそう、こんなの全部削除してやる」
 俊夫は、ブログの管理者画面を開こうとしたが、そこへ進めなかった。この図書館のパソコンは、書き込み作業ができないように設定されていた。
 俊夫はがっかりしてうつむきがちに図書館から出た。管理画面に進めないなら削除はできない。ネットカフェへ行くことも考えたが、俊夫の家からは遠すぎる上、それだけの時間はなかった。キメラのブログは、パソコンが直るまでそのままにしておくしかない。

 最後のコメントを入れた『毒絶男』は雅彦だった。他の数種類の悪質な書きこみも、雅夫が自分の職場から名前を変えては密かに送ったもの。キメラのパソコンが動くかどうかを試そうと、毎日一回ずつ卑劣な書き込みをわざとしたのだ。ワンルームマンションに戻った雅彦は、いろいろな書き込みが消されずに残っていることに、自然に口元をゆるめていた。
「どうした、キメラ? 俺の送ったファイルは無事に開いたか? 更新がストップしたところをみると、どうやら俺のプログラムは作動したようだな」
 ククク、と笑いをもらしながら、キメラのページのメールフォームを開いた。
「ケッ、甘い女子高生だ。パソコンが死んでも、いらないコメントは、携帯電話から削除すればいいじゃないか。これぐらいのことであっけなく沈んで、ブログを放り出すとは、やっぱりガキだな。せめて、俺からの最後のメールを読んでくれ」
 雅彦は、煙草の煙の味に、目を細めながら、メールを作成し、すぐに送信した。
「これで終わり。雨宮モモは今日限りでいなくなりましたぁ! と書きこみたいところだけど、よしとしよう。友達作戦は大成功。このメルアドは捨てておこう」
 雅彦は、契約しているプロバイダーのマイページを開き、キメラ用に使っていたメルアドを削除する手続きを済ませた。
「へっ、所詮、キメラはただの女子高生。考え深くも何ともなく、えらそうなことばかり並べてやがるから、これはおしおきだ」
 そうつぶやいた雅彦の喉仏は、ひくひくと動きだし、やがて大きな笑い声を発した。
「はっ、はっ、はっ……ざまあみろだ! 俺はおまえの友達なんかじゃないんだぜ。バーカ!」
 静かな深夜のワンルームマンション内に、雅彦の大笑いが響いた。



 修理に出した俊夫のパソコンは、サポートセンターでリカバリーされ、二週間ほどで俊夫の元へ戻ってきた。すっかりデータが消えてしまったので、初期設定からやり直した俊夫だったが、あのメールを見て以来、ネット小説を読む気力を失くしていた。
 修理から戻って一週間が経過した今は、ノートパソコンは閉じられたまま勉強机の端に追いやられ、ここ数日触れてもいない。あれ以来、俊夫は学校から帰ると、ベッドに寝転がり、目を半開きにして、寝るでもなく、起きるでもなく、ただ、塾へ通うのみだ。乾いた唇からもれる声は、ため息交じりのうらみ節。目に焼き付いてしまった、モモからのあのメール。


モモでーす。
キメラさん、パソコンの調子はどうかな?
うふふ……パソコン、パンクしたでしょう?
あれはね、モモのプレゼントのつもりだよ。
えへへ、実はね、モモは女子高生じゃないよ!
三十過ぎのおじさんなんだよぉー☆☆☆
驚いた? 驚いてくれなきゃつまんないなぁww
だってね、モモは、おまえが書く悪口ばかりのコメントなんて大嫌いダァァァァ!
全然面白いとは思わない。
おまえさ、仲間には甘いからさ、友達のふりしてやっただけだぜ。
人の小説こきおろして、何がおもしろいんだよぉ!
ストレス解消は別のことでやってくれ。
欲求不満がたまっているなら、俺がいつでも抱いてやるぜ。
ギャハハハハハハハ!
バ〜カ!
じゃあな



 所々が強調を示す大きな赤い文字。記載されているアドレスは『雨宮モモ』の物と同じ。このメールをよこしたのは、モモ本人で、それ以外の何者でもない。
「……モモちゃん……酷いよ……」
 ベッドに横になっていた俊夫は、いつまでもちらつくモモのメールを、追い払うように寝がえりをうって目を閉じた。

 俊夫を打ちのめしていたのは、モモのメールだけではなかった。モモのメールの衝撃の告白に、くやしさで唇を強く噛みながら、キメラのブログを開いた時、またもや頭を強打されたような気がした。キメラのブログは、以前図書館で見た時よりも、コメントは増え、その内容は過熱していた。
 長く見ていなかったブログは、『おせっかいおばさん』や他の作者たちからの厳しいコメントがあふれ、それに反論する意見も出現し、乱戦状態に陥っていた。読者のコメント欄は、キメラの小説感想のことだけでなく、読者同士がこのブログが取り扱っている内容に関して、勝手に言い合いをする場に変化しており、さまざまな批判の言葉が交わされている。悪意的なもの、そうでないもの、いろいろあるが、今までこんなに酷いコメントがたくさん並んだことはなかった。

 あれらを見てから一週間が過ぎた今も、俊夫の脳内は、色ととりどりの、けなし合いの文字で打ち上げ花火状態になっている。コメント欄を閉じる気力もない。
 コメント欄にはキメラのことを弁護してくれている知らない人もいるが、批判が大半で、削除する気力すらも失ってしまった。今後何を書いていいかわからなくなった。
 ブログは思ったことを自由に書いていいはずではなかったのか。勝手に批評された作者にとっては不快かもしれなくても、正直な感想のどこが悪いというのだろう。何よりも、それを望んでくれていた読者がいたから続けていた。感想が的確でおもしろいと。
 おもしろく読んでもらおうと、バカとか、ウザイとか、最悪とか、どれも軽いノリのつもりで書いていた。しかし、真剣にそれを自分に向けて書かれるとは。感想ブログそのものを否定する意見を読んだ時、顔から血が抜けていく感じがした。

 ――僕が悪いって言うのか? 中三の男なのに高二の女のふりしたから? 僕が人の小説をけなしたから? 受験生の僕が、必死で時間を作ってネット小説を読んで、感想を出していたのに……

 たくさん寄せられたコメントの中には、ずっと前に削除した『おせっかいおばさん』のコメントが、再び同じような内容で書き込まれていた。


『人を見下みくだした言葉は、凶器と同じです』

 見下すとか、そういうつもりはなかった。どうせ感想を書くのなら、おもしろい方がいいと思っただけだ。胸の奥がむかむかする。
「やっぱり僕が悪いって言うのか。言葉は凶器って……おまえだってなんだよ、おせっかいなおばさんめ。おまえの言葉だって僕をこんなに傷つけている。それにモモめ!」
 彼女は、いや、彼は、女になりすましてパソコンを壊す為に、好意的なコメントを入れていたと言うのか。
「信用していたのにあんまりじゃないか」
 結局、二人とも女子高生ではなく、だまし合っていただけとは。モモは最始からはめるつもりで――
「くそっ! どいつもこいつも、勝手なことばっかり書きこみやがって、なんだよ、バカヤロウ!」
 俊夫はマクラを壁に投げつけた。開いた目に映る勉強部屋は、涙でぼやけて、ピントの合わない写真を見ているようだった。



「俊夫、そろそろ塾の時間よ〜、支度できてるの?」
 母親が勉強部屋の外から呼ぶ声が聞こえた。返事をするのもだるく、黙っていると扉が勝手に開けられた。
「俊夫、ちょっと、どうしたのよ。熱っぽい顔してるわ。具合が悪いなら塾へ行かず、病院へ――」
 俊夫のうるんだ瞳に気が付き、母親は俊夫の額へ手を伸ばそうとした。
「いいって。どうもない」
 俊夫は、母親の手を払いのけると、ゆっくりとベッドから起き上がり、勉強机の上においてあるパソコンを指差した。
「これ、母さんの部屋へ持っていってくれる? しばらくいらない」
「それならそれでいいけど、どうして? 修理に出したばかりだし、あんなにしょっちゅう見ていたのに」
「ここの中には……」
 俊夫は、パソコンにチラッと目をやり、すぐにそらした。
「怖い物がいっぱい入っている気がする」
「怖いって?」
「ここには、正気を失くすほど熱くなっているやつがいっぱいいるってこと。僕もこれに向かうと、そうなる。相手の顔が見えないから、軽い気持ちになって、何を書いてもいいような気がしてくるけど、全部自分に返ってくるから怖い」
「俊夫?」
「母さん。僕、ちゃんと普通に勉強して南高へ合格するよ。独学で作家を目指すのはやめる。僕にはそれは無理だとわかった。いい高校へ入って、上の方の大学を目指して、もっともっと、いろいろな勉強をする。とりあえず、今はパソコンはいらない。もう少し大人になれたら、また返して」
 俊夫は、畳んだままのノートパソコンに、マウスを乗せて母親に渡した。
「いいのね?」
 俊夫は、ほんのわずかに唇を歪めたが、笑顔をつくってうなずいてみせた。
「これがここにあると、僕はいつまでも吹っ切れないから」






     (了)



 

 読了ありがとうございました。
 この話は、作り話であり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。キメラのブログのモデルとして参考にさせていただいたブログは、複数ありますが、この作品ほど酷い内容のものはありません。実際のこういうブログを見たい方は、小説名や筆名を、いろいろな検索エンジンにかけてみてください。時と場合によってですが、偶然引っかかって見つかることがあります。ただし、目を覆いたくなるような酷評もあるので、見るにはそれなりの覚悟が必要です。

 評価、感想をお待ちしております。

   二〇〇八年 十月  菜宮 雪

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