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~前回のあらすじ~

森の中で身ぐるみをはがされた状態で見つかったユニコーンの青年ティールを仲間にした翔一行は再びディアトリアに向かって歩き出すのであった……

以上、解説はハデスでお送りしました。
第一章 五話 ~山賊再び~
ティールが仲間になって早一日……木漏れ日が差し込む森の中を俺達はディアトリアに向かって歩いていた。
ただ単に歩くだけだがとりあえずは退屈はしていない。あえて不安点を言わせてもらえれば昨日の夜は風呂に入れなかったという事だ。まあ森のど真ん中で風呂が焚ける訳が無いのだが……
そういえばこの世界には風呂に入るという習慣はあるのだろうか?最悪水浴び程度はあると思うが現代っ子の俺としてはあったかいお湯に肩まで浸かってゆったりしたいというのが本音だ。

……やばい、想像したら風呂入りたくなってきた。もう考えるのは止めよう、辛くなるだけだ。

「足りませんね……」

俺の横で歩いていたティールが唐突に口を開く。そう言えば昨日の夜辺りから何事かブツブツと呟きながら考え事をしていたようだが一体何なんだろう?足りないって事は何かが不足しているのか?
しかし盗品は全てティールに返した筈だしな……何が足りないというのだろう?

「昨日から考え事してるみたいだけど……何が足りないんだよ?」
「ああ……うん……」

何故俯いて言葉を濁すんだよ……言いにくい事なのか?
もしかして食料……はジェミィはディアトリアまでは普通に大丈夫だって言ってたし、
まさかハラハラドキドキの展開が無いことに味気無さを……ってバカか俺は!少しでもそんな事を考えてしまった自分が恥ずかしい…

まあしかし食糧の線は無いな、この森魔物ウジャウジャいるし……つまりは食糧が魔物なわけで今日の朝も襲いかかってきた魔物を頂いた……初っ端からサバイバル全開で食糧は普通に大丈夫って事の意味をすぐに理解出来た。
夜の間にもティールが何回か喰われかけて大変だった……ってか不用心すぎだよこいつは、ゴブリンに身ぐるみ剥がれたのも納得がいく。
正直俺が眠ってる間に喰われなかったのが奇跡なぐらい好戦的な魔物がうじゃうじゃ居た。

まぁジェミィさんがすぐに飛び起きて全部撃退したんだけど……ティールには火の番が任せられない事が判明したなぁ……まさかその事が彼のプライドを!
……うん、前日の行動からして彼にプライドは無いな。いやあるのかもしれないけど他人に誇れるようなプライドは多分持ってない。

「……考えてみて下さい」
「………何を?」

長い沈黙の後ティールはそう言って顔を上げるとため息をついて自分の額を指差した。

「私は角が一本ですよね」

まぁそれは見なくても分かる。ユニコーンだから一本だよな。
そして次は俺を指差した。

「で、翔は角が二本」

うん、まぁ変身すればね。普通は角なんて生えて無いぞ?現に今俺の頭に角生えて無いし。
そして最後に少し前を歩いているジェミィを指差した。

「ジェミィは角が四本です……これで解りましたか?」

う~ん、角が一本、二本、四本。
…………何だ?何を考えてるのか全く分からないんだが。


「分からないんですか!?角ですよ角!!」

少しイラついた口調で言うティール。角…角の数ね……何だよ一体?ヒントが少なすぎるせいで全く答えが浮かび上がってこないんだが……そんな顔されたって俺困るぞ?

「三本角が居ないんですよ!このパーティー!!!」
「……………」

下らねえぇぇぇ!!分かるかそんな事!角と本数というヒントだけで理解出来る方がおかしいわ!
もっとマシな事考えろよ!それで昨日から悩んでるってオイ………。

「何をさっきから喋ってるんだ![ヒュン]」

ジェミィが大声を出して怒ると同時に矢が飛んで……って矢ぁ!?

「[シュカン!]あぶねぇぇぇぇ!!」

俺に向かって一直線に飛んで来た矢を体をそらして間一髪で避けた。やばい凄い怖かったんだけど。
飛んで来た矢は後ろにあった木にいい音を出して刺さった。あれ当たったら怪我じゃ無く死んでたぞ絶対……一体なんだっていうんだ!?

「ジェ、ジェミィさぁぁぁん!?怒ったからって矢を放つ事は無いで……しょ……」

いきなりの事に凄い形相でティールが怒鳴った。しかしジェミィの方を向いた瞬間ティールの声が急速にしぼんでいき最終的に凍りついたように動かなくなった。
その顔が真っ青になっているのに不信感を覚えた俺はジェミィの方に振り向く。

「どうしたティール、そんなにジェミィの怒り具合が…………」

最後まで言わないうちに俺も硬直した。何てったって俺達の前方には………

「よう……昨日は部下が世話になったみてぇだな」

距離にして五十メートル程だろうか、そこには昨日の奴らの仲間だと思われるゴブリン達が立ち塞がっていた。数にして約百~二百程度だろう、どれだけ仲間を集めたんだ昨日の奴ら。
そしてその先頭には先程の声の主だと思われる一際大きいゴブリン……本当にゴブリンかあれ?周りの奴の一・五倍ぐらいの身長だけど……顔つきが若干似てるし多分そうだろう。

「俺を昨日の奴と同じだなんて考えてんじゃねぇぞ?これでも王国騎士共と争っている程だからな…」

ゴブリンの親玉はそう言って担いでいる身の丈程もある巨大な戦斧を軽々と振り回し地面に振り下ろした。どうやらあいつの自信からして今言った事は本当っぽい。
ここは相手の数からして逃げた方が得策だろう…などと考えているとジェミィが突然

「ふ~ん、じゃあその騎士共もアンタに負けず劣らずの雑魚だった訳だ、緑の豚野郎」
「なっ…テメェ……」

堂々と挑発しちゃったよ……ジェミィの自信もゴブリンの親玉と負けず劣らずだな。
ゴブリンの親玉は馬鹿にされたからか怒りをこらえた表情で顔を赤くしながらも平静を保っている。

「ん?どうした?反論しないのか?頭の中の言語のボキャブラリーが少ないから反論の言葉も出ないのか?可哀相に……頭の中まで脂身になってしまったのか」
「こ、この体は脂肪じゃねぇ!筋肉だ!このバカ娘が!」
「あらら、私の今までの行動を馬鹿なんて単語で片づけようとするとは低能を絵に書いたような行動だな、それと筋肉があったとしてもその分厚い皮下脂肪でコーティングされてる状態ならどんなに筋肉が付いてようとデブと言うんだこの豚!」
「~~~~!!!!」

更に顔を真っ赤にしながらこちらを睨み付けてくる親玉、う~ん、ジェミィと口喧嘩をしたらまず勝てそうもないなぁ……どうしてああも簡単に受け答えを出せるんだか
必死にボスとしての対面を保つ為怒りを押し殺していたようだがジェミィの一言がトドメを刺した

「ふむ、まるで赤い風船だな、遂に口の中まで脂肪まみれになって声が出せなくなったか…それに空気の代わりに脂肪がいっぱい詰まってるせいで体が熱くなりやすいんだな……これだからデブは……」

これでもかと言うほど馬鹿にしたような声で言った。まあここまで言われ続けたらまず怒らない筈もなく、わなわなと震えていた親玉は地面に突き刺していた斧を勢いよく引き抜いた。そして俺達の方を向くと

「うがぁぁぁぁぁぁぁ!ぶっ殺ぉぉぉす!!」

凄まじい雄たけびと共にキレた……って待て、ジェミィの発言でゴブリン共笑ってるぞオイ。
親玉と部下の間のテンションの差が凄まじく違うぞ。てか自分のボスを馬鹿にされて笑うなよ…

「ぶっ殺せぇぇぇ!!ってテメェら何笑ってんだオイ!お前らから潰すぞコラァ!!」
「ククッ…すいませんでしたぁボス!」

笑いながら謝ってるよ……相当ツボったんだな今までの発言。最早親玉(笑)状態になってるぞ。文字通り。

「お前ら殺っちまえぇぇ!」

その号令と共に一気に押し寄せて来るゴブリンの大群。
ジェミィも俺達の一歩手前に立っていたが後退してくる。そしてそのまま俺達を通り過ぎ…って待てぇぇ!?
え?ちょっとちょっとジェミィさん!?俺達を残して一体どこに行くつもりですかぁ!?

「さて、翔とティール……ぶっ飛ばして来い!」
「えぇ!?ちょっと待…」

無理があるだろぉぉ!と叫ぼうとしたがゴブリン達はもう目の前まで来ていた。

「やるしか無いのかよ……」
「覚悟を決めましょう!翔!!」

最早選択の余地は無い事を悟った俺とティールは突っ込んで来たゴブリンの群れに突っ込んで行った。


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