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第一章 最終話 ~冥王とナル神~
生前罪を犯した死者が集う冥界。
そこでハデスはいつものように紅茶を片手に書類を見つめていた。

いつもと違う所と言えばいつも彼の秘書をしている
悪魔の少女が居ないという事だろうか。

そして最も違う所と言えばこの暗く陰気な冥界には似合わない者がハデスの目の前に腰掛けてじっと見つめているという事だろうか。

「………ハデス、お前は一体何を考えているんだ?」

ハデスの目の前に座っていた男がおもむろに口を開く。
彼の名はオーディン、その名を世界に知らしめた有名な神の一人である。

その声を聞くとハデスはやれやれと言った感じで書類から目を離し目の前に座っている男に目を向けた。

「ん?わざわざそれを聞くために来たんですか貴方は?」

そう言うとまた書類に目を落とした。

するとオーディンはおもむろに立ち上がるとハデスが見ていた書類を取り上げた。

「あっ!ちょっと!何するんですか!」
「それよりも私の問いに答えて貰おうか」
「ふぅ………面倒ですね、それで?何なんですか、北欧の最高神様」

「……貴様が作った世界についてだ」

ハデスの眉がピクリと動く、
それを見るとオーディンはやはりかと言う目をしてハデスを見つめた。

「………やっぱりバレてましたか」
「…………………当たり前だ、いくら隠しても何時かはボロが出るからな」

そう言って胸を張るオーディン、
普通に見ればただ自慢しているいい年をしたオヤジだが
彼の性格からかハデスには見下しているようにしか見えなかった。

「…………流石世界一のナル神」
「………聞こえてるぞ」

オーディンが顔をひきつらせる。
彼は“慢心せずして何が神だ!”的な考えを持っている節があり、
ナルシストっぷりが異常なのだ。

「いやだってもうオーディンさんはナルシストっぷりが異常じゃないですか!いや~某選択肢を間違えると主人公が死ぬゲームに出てきた黄金ナルシストと比べてみたい物ですな!アッハッハッハ!」

「貴様一遍死なせてやる!」
「ハッハー!私を死なす?ああ!やってみて下さいよ?」
「覚悟しろ!出よグングニ……」
「遅いっ!バルス!」
「アギャァァァァ目が!目がぁぁぁ!!」

「まだまだぁ!」

「させるかバカが!」

「え!?ちょ!マジでグングニル投げんの!?止め」

「シュート!」

「ぐほぉっ!心臓に!心臓に刺さったぁぁぁぁ!」

「ちくしょ………」

「あぁ!?しぶと……」

「やんの……」

「…」






「さてお二方、これをどう始末するおつもりで?」
「全くだ、一体これをどうするつもりだ」

「「スミマセン」」

今二人はゼウスと閻魔ににありがたいお説教を食らっている所である。

あの後二人の戦いはヒートアップしハデスの城を半壊させるまでに及んだ、

しかし問題なのはそこでは無い。
問題となっているのはその戦闘の余波が冥界の門まで及んでいたことである。

「全く………逃げ出した亡者達は私の方で地獄に送っておく、」

そう言って立ち去って行く閻魔。

「ハデス、お願いだからもう面倒事は起こさないでくれ、」
「あー、ゴメン」
「………全く、頭を下げるこっちの身にもなってくれ」

そう言うとゼウスもトボトボと帰って行った。
その体からは苦労人のオーラが体中からにじみ出ていた。



「………話を戻そう、お前が創った世界の事だが…」
「あんたらがラグナロクやってた時沈んだ九つの世界の残骸を集めて創ったんですよ」

ゼウスが立ち去った後、冷静になったオーディンが
ハデスに聞こうと思っていたことを聞くと
ハデスは以外とあっさり答えた。

「ふむ、やはりそうだったか、しかし何故……」
「神の気紛れ……とでも思って下さいよ」
「そうか……」

しかしオーディンは一つ引っかかる事があった。
それがそもそも彼がここに来る要因になったことだ。

「お前があの世界を創った事は構わん。しかし何故今になって外界から人間を入れるんだ?それも只のガキを……」

それを聞くとハデスはオーディンの方を向き苦笑いをしながら答えた。

「いや……理由の一つはそんな大層な事じゃないです。それこそお遊び、サービス的な事ですよ。私の気紛れです」
「そうか……まあ自由人なお前らしい理由だな」
「まあそうですね……もう一つは、あの世界をまた一つにまとめ上げると言う事ですかね」
「“また”と、言うことは過去に一度世界が統一されたことがあるのか?」
「ああ、一度だけ、私があの世界を作った始めの頃ですけどね」

「………そうか、でも上手く行くのか?」
「さあ」
「さあってお前……」
「いやいや誤解はしないで下さいよ、あくまでまた世界が統一されるっていうのは私の願い、いや願望の一つみたいなものですからね」
「はあ?」

ハデスの意図が全く分からず困惑したような顔をするオーディン。
そのオーディンの顔を見て苦笑いを浮かべてハデスは話し始めた。

「いや、一度生でやってみたかったんですよ異世界に飛ばされるってやつ」
「何だそれ………訳が分からん」
「ん?あぁ、ちょっと待ってて下さい、今持って来ますから」

そう言うとハデスは“元”自分の机だった所から
手の平位の大量の書物とノートパソコンを持ち出した。

「………何だこれ?」

ハデスが持ち出した物が何なのか分からないオーディンはハデスに訪ねる。
するとハデスは目を輝かせながら解説を始めた。

「これはラノベ、ライトノベルと言う比較的新しい部類に入る書物です!今の若者はこれを読んで仲間を増やすことがあるらしいです、そしてこれはノートパソコン。簡単に説明すると下界の情報を素早く集められる代物です!しかしやりすぎると中毒になるらしいので一日二時間程しか見てません!因みに見ているのは小説です!どうですか?素晴らしいとは思わないでしょうか!」

「あ………あぁ、素晴らしいと思うぞ」

オーディンは自分を置いて一人訳の分からない物の解説をしている
ハデスを見ていて思った事が一つだけあった。

(コイツが創った世界に飛ばされた少年、面識はないが同情するぞ………)

そしてオーディンは一人ハイテンションになっているハデスを置いて
自分の宮殿へと帰って行った。

当初の目的

……ハデスが作った世界の危険性について話さないままで。


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