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EVE:2108 - The Place of the Heart 作者:志室幸太郎
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Evangelium02-1:恐るべき大人達

 首都福岡、新国会議事堂。
 ガラス張りの喫煙室に、箕輪外務大臣が入って来た。
「及川さん」
 喫煙室には先客がおり、携帯端末を眺めながらぷかぷかと煙を吐き出していた。及川と呼ばれた白髪の男は、箕輪に気づいて頭を下げ、携帯端末を内ポケットにしまった。柔らかな笑みを浮かべるその顔は、どこか日本人離れしている。
「ご苦労さまです。どうぞ」
「ありがとうございます」
 促されて、箕輪は及川の隣に腰かけ、電子煙草の電源を入れる。目を閉じて煙を深く吸い込み、吐き出した。顔には疲労の色が浮かんでいる。
「お疲れですか」
「ええ、まあ。上手くいかないことばかりで……。及川さんはお元気そうですね」
「いやいや、私も上手くいかないことばかりですよ。中東の後処理も難航していますしね。さらには武装をいくつか紛失したという報告もあって……本当に、悩みの種が尽きません。そちらは東京の件ですか?」
 箕輪は目を閉じたまま頷く。
「おかしな集団が居着いてましてね。立ち退かせるには骨が折れそうで――」
 言葉の途中で、箕輪は目を見開いた。
「そうだ、真っ先に報告しようと思っていたのにすっかり忘れていました」
「なんです?」
「及川さん、例の猫の件はどうなってます?」
 及川は困ったような笑みを浮かべる。
「痛いところを突かれましたね。実は一匹、脱走してしまった猫がいまして。今必死に探しているところなんですよ」
「やっぱり……。実はですね、東京にいたんですよ。神田です」
 及川はそれまでと変わらない紳士的な笑みを浮かべていたが、目だけは鋭く光った。
「……本当ですか」
「ええ。雇った護衛の一人が足を折られそうになりましたよ。話には聞いていましたが、恐ろしい身体能力でした」
 及川は煙を吸い込むと、ゆっくりと吐き出した。
「それはありがたい情報です」
「お役に立てたのなら嬉しいですね。しかし、ゼノイドはその……洗脳に近い教育を施されているのでは? なぜ逃げ出すようなまねを……」
「その件に関してはこちらの人為的なミスです。面目ありません」
「ああ、いや……。でもそれなら、連れ戻すのは簡単そうですね」
「どうでしょうね。あの子たちの知能指数は非常に高い。上手く教育すれば、すぐに判断力を身につけ、自身の考えで行動するようになるでしょう。頭の悪い人間に拾われていればいいのですが……」
「……それが、ですね」
 見ると、箕輪がバツの悪そうな顔をしている。
「伏見家の長男が関わっているんですよ。伏見ヒロト」
 及川は天を仰いだ。箕輪は煙草をふかしながら続ける。
「あそこの住民からかなり慕われているようで。先生なんて呼ばれてるんです。伏見家は与党議員に顔が利きますから……おかげで強引に立ち退かせるわけにもいかなくて、困りました」
 突然喫煙室に大きな拍手が響いて、箕輪は驚いて身をすくめた。
「な、なんです?」
 及川は拍手を止め、咥えていた電子煙草の電源を切った。
「素晴らしい。天の導きを感じますね」
「は? どういうことです?」
 呆けた顔の箕輪に、及川は手を差し出す。
「筋書きが見えてきましたよ。何もかも上手くいきます」
この作品はシェアード・ワールド小説企画“コロンシリーズ”の一つです。

http://colonseries.jp/
cont_access.php?citi_cont_id=417046277&s
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