断たれた未来
あらすじにも記載しましたが、この小説は死ネタです。苦手な方はご遠慮下さい。
6月21日、その日の空は雲一つなく、太陽が煌々(こうこう)と輝く、とても穏やかな日だった。既に梅雨は明け、街はもう夏の準備で大いに賑わっていた。
灰原が作ってくれた解毒剤の試作品で、一時的ではあったが、久々に“工藤 新一”の姿に戻った俺は、そんな街の中を、何処か懐かしそうに眺めた。やっぱり本当の身体は良い…。コナンの姿だった時は、何処に行っても子ども扱いされて来た。中身は高校生でも、誰一人として気付くやつはいなかった。しかし、今は違う。これが俺の姿だ、本当の姿だと、はっきり皆の前に示せるのだ。
しかし、俺は、そんな自殺行為的なことは絶対にしない。
何故なら、そんなことをしたら、今俺が追っている奴らに、秘密保持の為に、俺の正体を知った人達の生命を狙う可能性が非常に高くなってしまう。俺は、人が人に殺されるのだけは、どうしても許せなかった。それだけは、何としても阻止したい!そう思っていた。俺にとってそれは、探偵としての心構えみたいなものだった。
暫く、この姿で懐かしそうに街並みを眺めていると、何処かの交差点に着いたらしく、車が忙しなく走っている光景が目に付いた。俺の正面に見える信号は赤を示していた。そして、俺の周りには、歩道を渡る為に、青になるのをただじっと待っている人達で一杯だった。中には、携帯を弄っている女子高生、時計を見ながら足をパタパタと鳴らして待っている会社員等もいた。
俺は、外に出てはみたが、別に何処にも行く宛てが無かったので、ただ何処までも青く広がる晴天の空をボーっと眺めていた。その時、遠くの方で何やら騒ぐ声が聞こえて来たので、俺はその声がする方を見た。するとそこには、まだ5歳位の子どもがサッカーボールを夢中で追いかけて、道路に飛び出していたのだ。そしてその子どもの数メートル先には、大型トラックが、スピードを出して走行していたのだ。
「クソッ!!」
俺は無意識の内に人混みを掻き分けてその道路に飛び出し、漸く取れたサッカーボールを手に持ちながらトラックを目を見開きながら見ている子どもを安全な方に突き飛ばしていた。そして、俺も此処から早く逃げ出そうと考え、直ぐに走り出そうとした。しかし、俺が逃げる前にトラックはぶつかり、そのまま青く広がる晴天の空に俺の身体は玩具のように軽々と舞った。そして、太陽の日差しで熱を帯びたコンクリートの上に強く叩きつけられ、そのまま俺の身体はピクリとも動かなくなった。その時、俺は気付いてしまった。これが、全ての生物が必ず迎える生命の終わりである、“死”なのだと……。俺の身体からは、赤色の液体が滲み出し、その道路を赤く染め上げていった。そして、俺の意識は、永遠の闇の中に放り出されたのだった。
あの事故があってから10年が経ち、街並みも随分と変わって来ていた。街には高層ビルが立ち並び、道路を走る車は俺が生きてた時よりも格段に多くなっていた。しかし、あの事故があった道路は、未だに俺の死んだときの証が残っている。
「何だよ、まだあんなものを残してるのか?全く、あんなもの、早く消しちまえば良いのになぁ……。」
そう毒づいて言うも、俺は心の何処かで、この場所がまだ残っていることに安心してしまっている自分がいることに少々呆れていた。
あの時、俺は即死だった。直ぐさま誰かが救急車を呼んだらしいが、病院に着いた時にはもう手遅れだったそうだ。それを医者から聞かされた蘭や園子、母さん、博士は号泣し、父さん、おっちゃん、目暮警部達、そして灰原は泣きはしなかったが、酷く暗い表情をしていたのを覚えている。蘭は泣きながら、
「返して!新一を返して!今すぐ返してよー!」と何度も何度も言っていた。蘭の必死に訴える姿を見て、俺は蘭に悪いことをしたなぁと思った。こんなことになるのだったら、さっさと蘭に自分の思いを伝えれば良かったと、死んだ今になって後悔した。しかし、今後悔しても、既に後の祭り。もうどうしようもないのだ。死んだ人間は二度と生き返らない。それは俺自身、よく分かっていた。あの後、蘭は俺の死が受け入れられずに、自分の部屋で泣き続けていたが、漸く何時もの明るい表情に戻り、今は高校教師として働き、新出先生と結婚して、幸せな家庭を築いているらしい。俺としては、新出先生との結婚は断固反対なのだが、蘭には、俺の分まで幸せになって欲しいから、結婚を許すことにした。だって俺は、蘭の笑っている姿が大好きなのだから…。
その時、優しく温かい風が俺の身体を静かに吹き抜けていったのだった。
こんにちは。そしてお久しぶりです。ウォーターです。今回、連載小説とは別に、何となく思い付いた短編を掲載しようと思い、執筆致しました。ただ、今回の小説では、新一が死ぬ内容なので、「新一が死ぬなんて嫌ッ!」という方は、見ないことをオススメします。まだまだ未熟ですが、何卒宜しくお願いします。評価・感想等もお待ちしております。又、『不思議な出会いと不思議な日常』の方も宜しくお願いします。今回は、このような小説を最後まで読んで下さった読者の方々、本当に有難う御座いました。心より御礼申し上げます。以上、ウォーターでした。
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