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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第九話 フェーネン王国入国

 フェーネン王国まで目前というところまで来ていた。
 国境の砦がここからも見えている。
 何だかわらわらと警備兵が砦から出てきてるけどね。
 はぁ~、やっぱそうなるか。
 後ろからのそのそついてくるフェルを見て溜息をついた。
「なんか、いっぱい兵隊さんが出てきてますねぇ……」
「フェル様がいらっしゃるからな。先行して事情を説明してきます」
 そう言ってヴェルナーさんは砦の方へ走っていった。
 ご迷惑をおかけしますね。



 砦にはヴェルナーさんと警備兵がずらっと並んで待ち構えていた。
「私はフェーネン王国第四騎士団隊長のエドガー・ヴォルゴードという。こちらのヴェルナー殿から話は聞いた。そのフェンリルは君と従魔契約を結んでいるというが、本当か?」
 警備兵の中で一番偉そうな肩書きの隊長さん(苗字があるから貴族なのかもしれない)が、見て分かるくらいの緊迫した雰囲気でそう聞いてきた。
 これ、フェルがいるからだよねぇ。
 いつでも対応できるように警備兵のみなさんも武器を手に持ったままだし。
 腐っても伝説の魔物というか、何というか。
「はい、私はこのフェンリルと従魔契約を結んでいます」
 そう言うと、警備兵の間から「おぉっ」という声が漏れた。
「そうか。だが、一国をも滅ぼしたと言われる伝説の魔獣フェンリルだ。本当にこの国やこの国の民に危害を加えることはないか?」
 国境警備を預かる者として、その心配はごもっともだ。
「おい、フェル。ここのみなさんは、伝説の魔獣と言われるほど強いフェルを国に入れることを非常に心配しておられる。国の中で暴れられると困るからな。フェルは絶対にそんなことしないよな?」
『ぬ、我を頭の悪い魔物と一緒にするな。主であるお主と我に危害を加えようとしない限りは我の方から手を出すことはない』
「だそうです。隊長様」
 俺とフェルのやり取りを見ていた隊長は呆気にとられた顔をしていた。
「本当に伝説の魔獣を従魔にしているのだな……目の当たりにしても、未だに信じられん…………」
 そうなんですよ、隊長さん。
 何だから訳が分からんうちに従魔の契約を結ばされてしまいました。
「今のやり取りを見るに、従魔契約を結んでいるというのは本当のようだな。それならば入国を許可しよう。しかし、従魔であるフェンリルの手綱はしっかりと握っているようお願いする」
「はい、承知いたしました。おい、フェル、お願いだから大人しくしててくれよ」
『分かっておる。先ほど言ったとおり我らに手を出さねば、我の方からどうこうするつもりはない』
「本当に、本当に、お願いだからな。なんかあれば俺のせいになるんだから」
『くどいぞ』
「いや、念には念を入れて注意しておかないとね。あ、みなさんの迷惑になる行為をした場合は食事なしってこともあり得るから」
『ぐっ……』
 何とか入国を許可してもらったんだから、変なことしないように念には念を入れて注意しとかないと。
 何かあったら俺の罪になりそうだし。
「なるほど。あのフェンリルをこれほど手懐けているとは、心配していたような事態になることはなさそうだな」
 隊長さんが少しホッとした様子でそう言った。
「隊長さん、そんな事態になることはまず無いと思いますよ。俺たちは、ムコーダさんがフェル様と従魔契約した時にも居合わせたし、それから一緒にここまで来ましたが、フェル様がむやみに暴れることなんてありませんでしたから」
「リーダーの言うとおりだよ。ムコーダさんなんてフェル様に指図して獲物とって来させたりしてるんだから。あたいびっくりしちゃったよ」
 リタ、俺もびっくりだよ。
 獲物とってこいっていうのは、自分の食い扶持は自分で確保してくれってことで獲りに行かせたんだからな。
 俺のために獲ってこいっていうんじゃないんだから、そこは間違えないようにね。
「ほぅ、きちんと掌握しているということか」
 ちょっと隊長さん、何が「ほぅ」なの?
 あごに手を置いて、何か良からぬ事を考えてるように見えるんだけど?
 やめてよ、面倒事はさ。
 そんなこんなで何とか入国許可も下りて無事フェーネン王国に入国できた。
 ちなみにギルドカードを持っていなかった俺は入国税として銀貨5枚を支払った。
 あと従魔にも入国税がかかるということで、フェルの分として銀貨2枚支払った。
 フェルの分もかかるとは地味に懐に響くぜ。
 早く商人ギルドに加入しなきゃな。



 フェーネン王国に入り、俺たちは目的の国境の街ファリエールに向かって歩いていた。
「無事入国できてホッとしました。みなさんありがとうございました」
 そもそも魔物がいる世界を1人で旅するなんて無理なことだったからアイアン・ウィルのみんなには感謝だよ。
 しかも、フェルのことにしてもみんなの援護があったから何とかこの国に入れたわけだし。
「いやいや、俺らもいい経験させてもらったよ。伝説の魔獣フェンリルの実物を見ることができたし、更に話もできたんだからな」
「リーダーの言うとおりだぜ。俺、みんなに自慢するぜ」
「あたいもヴィンセントと同じくみんなに自慢するんだー。おとぎ話のフェンリルに会ったんだぜってさ」
「ふふふ、リタったら子供なんだから。でも、確かにこれは自慢したくなりますわね」
「生きているうちにフェンリルを見られるとは……冒険者冥利に尽きるな」
 やっぱみんなにとってもフェルって存在は衝撃的だったんだなぁ。
「しかし、ムコーダさんはこれから忙しくなるかもな」
 ヴェルナーさん、忙しくなるって何で?
「フェンリルとその主がこの国に入国したってのは、当然この辺りを治めているリンデル辺境伯には連絡が行っているだろうし、国王にも行ってるだろうからな」
 げッ、やっぱそうなるんだ。
「しかもあの隊長、ムコーダさんとフェル様の関係を見て、どうやったらこの国に引き込めるかって考えてるようだったしな」
 隊長ーッやっぱ良からぬこと考えてたんだね。
「そう言われましても、私もこの国に留まるつもりはないので、その時はその時でフェルと話しながら考えるしかないですねぇ」
「ははは、そうだな。フェル様がいれば無体なこともできないだろうしな」
 フェル頼みだが、そこはしょうがない。
 異世界に来たからには俺だってこの世界をいろいろ見てみたいからな。
 今回の旅を通して、俺にはネットスーパーがあるから、それで利益を得ながらこの世界を旅してみるのもいいかなぁって思いが出てきたんだ。
 異世界を旅するなんてロマンだよな。
「この国に留まるつもりはないって、旅でもするのか?」
 ヴェルナーさんの問いに頷いた。
「この世界をいろいろ見てみたいなと思ってまして」
「なるほど。なら、ムコーダさんは冒険者ギルドに登録した方がいいな」
 え、冒険者ギルド?俺、冒険者になるつもりはないんだけど。
「冒険者ギルドですか?私としては、商人ギルドの方へ登録するつもりなのですが。私は料理もできますから旅をして街に着いたら屋台で金を稼いだり、ちょっと伝手があるので商品の卸をしたりできると思うので」
「そうか、でもなぁ……」
 ヴェルナーさんはフェルを見ながら思案顔。
「ムコーダさんは、これからもフェル様の食い扶持はフェル様自身に獲ってきてもらうことにするんだろ?」
 当然のことなので頷く。
「だとするとだ、フェル様が獲ってきた魔物の解体はどうするんだ?」
 あ、それがあった。
「それにな、ロックバードのことを考えると、フェル様が獲って来られる魔物はすべて高ランクだろう。そうなると、魔物の素材を買い取ってもらえる冒険者ギルドがうってつけというわけさ」
 確かに。
 買取してもらえるなら、買取してもらった方がこれからの生活にも足しになるってもんだ。
 でも、冒険者か、うーん。
「ムコーダさん、何か悩んでるみたいだけど、どっちも登録すればいいだけじゃねぇの?」
 俺とヴェルナーさんの話を聞いていたヴィンセントがそう言った。
「それは、確かに。でも、それって大丈夫なんですか?」
「まぁ、数は少ないけど、冒険者ギルドと商人ギルドの両方に登録してるヤツいるぜ」
「へーそうなんですね。それじゃ私も両方に登録することにします」
 俺は、冒険者ギルドと商人ギルドの両方に登録することに決めた。




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