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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第六十一話 自由にしていいみたいです

レビュー5つ目いただきました。
お読みいただいている皆さまありがとうございます。

今日は61話、62話、63話の更新です。
 カレーリナの冒険者ギルド前でフェルから降りて、フェルと共に中に入った。
 ちょうど冒険者たちがギルドに戻ってくる時間帯にぶつかって、中は冒険者たちで混雑している。
 俺たちも受付の列に並んだ。
『これでFランクとやらに上がれるのだから、明日には海に向かうことができるのだな?』
 フェルの念話だ。
『Fランクに上がれたとしても、もうちょっとこの街に滞在するよ』
『何故だ?』
『ランベルトさんって、あの盗賊から助けた商人な、あの人のお店にも行きたいし』
『なら、明後日か?』
『そんな焦るなって。海は逃げないんだからさ』
『ぬ、そうだが……どうも人の街は窮屈でな、特に今の宿屋の寝床は良くない』
『ああ、あの獣舎ね』
 今の宿の従魔用の獣舎は、フェルにはちょっと狭い感じがした。
 フェルが入って横になって少しだけ余裕があるくらいだ。
 今までの旅では空の下で気兼ねなく寝てたから余計に狭く感じるんだろう。
 ちょっとかわいそうな気もするな……あっ。
『獣舎に布団敷くか? そしたら少しは寝心地良くなるだろう』
『そうだな。そうしてくれ』
『まぁ、そんなに長い期間にはならないと思うから、ちょっとだけ我慢してくれ。その代わり、美味い飯作るからさ』
『分かった。美味い飯忘れるなよ』
 はいはい。
 ってフェルと念話をしているうちに俺の番が回ってきた。
 受付嬢にギルドカードを渡す。
「ゴブリンの討伐ですね? 討伐証明部位の右耳はお持ちになりましたか?」
「はい。えーっと、これです」
 ゴブリンの右耳でパンパンになった麻袋を受付嬢に差し出した。
「は? いや、これ? え?」
 ごめんよ、混乱してるようだけどこれだけじゃないんだ。
 俺は続けて同じようにパンパンになった麻袋を3つ差し出した。
 合計4つの麻袋、中にはゴブリンの右耳が〆て227個入ってるぜ。
 いやー、余計に麻袋買っておいて良かったよ。
 ん、一言もしゃべんないけど受付嬢さんどうしたんだ?
 受付嬢は4つの麻袋の中を覗いて唖然としていた。
「あのー、大丈夫ですか?」
 そう声をかけると、ハッとしたように我に返った受付嬢が「ちょっとお待ちください」と言ってどこかに行ってしまった。
 少しすると受付嬢が戻って来た。
「ギルドマスターがお呼びですので付いてきてください。従魔もご一緒に」
 俺は頷くとフェルに『付いてきて』と念話を送った。
 ギルドの2階にあるギルドマスターの部屋に入る。
 ギルドマスターの部屋ではあるので普通の部屋よりは広そうだが、フェルが入るにはギリギリだった。
「儂はこのカレーリナの冒険者ギルドのギルドマスターでヴィレムという」
 ギルドマスターのヴィレムさんは白髪で厳つい顔には多くの皺が刻まれていた。
 顔を見た感じは60代に見えるけど、背が高くがっしりした体つきはまだまだ現役だと言わんばかりの爺さんだ。
「ムコーダと言います。よろしくお願いいたします」
 ギルドマスターに呼び出されるなんて、ゴブリンの右耳を一度にあんなに持って行ったのマズかったかな?
「そちらの従魔はフェンリルで間違いないな」
 問いかけと言うより断定した確認のような言葉に、こりゃさすがにギルドマスターだからバレてるみたいだし誤魔化しようがないなと思う。
「はい。フェンリルのフェルです」
 ギルドマスターがフェルを見ながら感慨深げに「まさか伝説の魔獣を目にすことができるとは……」と呟いている。
 やっぱりフェンリルだって分かったうえでフェルを見れば、めっちゃ驚くかそういう反応になっちゃうんだなぁ。
 あ、従魔といえば一応スイのことも紹介しておくか。
「あの、私の従魔はフェル以外にもいまして……」
 鞄の中からスイを抱き上げる。
「スライムのスイです。特殊個体のようで普通のスライムとは違ってすごく強いですよ」
「ス、スライムがか?」
「ええ」
 ギルドマスターの問いかけに深く頷く。
 ギルドマスターにはスイが普通のスライムに見えているようだが、違うぞ。
 スイはめっちゃ強いんだからな。
「ゴホンッ、ま、まぁ、フェンリルを従えてるくらいだからな、いろいろ秘密があるのだろう」
 ええ、そうですよ。
「それでな、わざわざここに来てもらった用件を伝えよう。王宮から至急の伝達があった。簡単に言うと”我が国内ではご自由にお過ごしください。こちらから無理強いするようなことは絶対にいたしません。国内の貴族たちにもそのことはよく言って聞かせてありますので心配無用です。ただ、何かあった時には是非ともお力添えお願いします”ってことだ」
 え?自由にしていいの?
 国も貴族も手出ししてこないってこと?
「この国の王なら考えそうなことだな。ありゃ完全に実を取るタイプだからな。実際問題お主らはあまり干渉されたくなかったのだろう?」
「ええ、まぁそれは……」
「だから下手に干渉せず、自由にしてもらいながらこの国にいてもらった方が良いと考えたのさ。伝説の魔獣フェンリルがこの国にいるってだけで敵対国にとっては脅威だからな。そのフェンリルが従魔契約を結んでいるとなれば、言わずもがなだ。そうやって自由にしていてもらっていて、何かあった時はお願いしますよってな」
 確かに。
 従魔契約を結んでなかったとしても、フェルなら自分の住処を荒らされたらその相手は徹底的に滅ぼすような気がする。
 まぁ、俺と従魔契約結んでるって言っても、飯に釣られてだからねぇ。
 お願いすればある程度は聞いてくれとは思うけどさ。
 ってかこんなに飯作ってやってるんだから聞いてくれよな?
「うーん、ありがたいお話ではあるのですが……フェル、それでいいか?」
『問題ない。うるさく言ってこないのなら、こちらとしても好都合だ』
「だそうです」
「そうか、良かった。お主らがこの国にいてくれることは、我々にとってもありがたい話だ。冒険者ギルドが国を超えた組織だと言っても、やはり同じ国の冒険者ギルド同士の方が結びつきは強いからな。この国の冒険者ギルドにとってもお主らがいることは心強い。そこで相談なのだが……」
 何だか改まってそう言われると怖いんだけど。




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