第六百二十六話 朝からこってりヘヴィな味でも無問題
お久しぶりです。
なんとか親の施設への入所が叶いました。
とは言っても第一希望だったところではなくて、今は様子見段階です。
本人が慣れてくれれば良いのですが、ちょっと心配な点もなくはないところがあれですが……。
本人と施設との相性もあるし、介護は施設に預けたらそれで終わりということではないことを実感しているところです。
とはいえ、家で介護していた時よりは少し余裕も出てきたので少しずつ更新を再開しようと思います。
皆様本当にお待たせいたしました。
前みたいな更新頻度に戻るにはもう少しかかるかもしれませんが、少しずつ更新頻度も上げられるようがんばります。
それから、皆様の励ましのお声本当にありがとうございます。
特に介護を実際にされていた方のお声は自分にとっても励みになりました。
あと思ってるより介護を体験されている読者さんが多いことにも驚きました。
介護の大変さを理解されている同志のような方がこんなにたくさんいるというだけでありがたかったです。
皆様、引き続き「とんでもスキルで異世界放浪メシ」をよろしくお願いいたします。
「ふぁ~あ」
欠伸をしてからグルグルと肩を回す。
「昨日は疲れたわ~、マジで。「ステーキなんていくらでも焼いてやるから」なんて安請け合いするんじゃなかった……」
昨日、ヴィクトル一家と“暁の旅団”の連中を案内した後に夕飯となったわけだけど、うちの食いしん坊カルテットが『ステーキ三昧だー!』ってそれはもう盛り上がっちゃってさぁ。
フェルなんて目をギランギランさせながら鼻息荒く『さぁ、早く肉を焼くのだ』とか言い出す始末だし。
ゴン爺もドラちゃんもスイも『肉、肉、肉』コールで食う気満々。
みんなにせっつかれて最初っから魔道コンロもフライパンもあるだけ使ってステーキを焼いた。
残っていたギガントミノタウロスのステーキから始まって、ダンジョン牛の上位種のステーキ、途中にステーキとは違うけど変わり種で焼きドラゴンタートルにリバイアサンのムニエルなんかも挟んで、メインは地竜・赤竜・緑竜の三種のドラゴンステーキ。
食いしん坊カルテットがここぞとばかりに食いまくるもんだからフル回転で焼きまくったわ。
みんなの大好きなステーキ醤油も大活躍で、日頃からみんなの食事を作り続けている俺でさえびっくりするほどの量の肉がみんなの腹に収まっていった。
こっちが呆れるほどに本当の本当に肉LOVEな奴らなんだなぁと改めて思ったわ。
分厚いステーキを次々とガッフガフと食らう姿に、見ているだけでこっちは胸焼けしそうだったよ。
途中、焼きドラゴンタートルとかリバイアサンのムニエルを作って正解だった。
フェルたちはステーキ続きの中のあっさりした箸休め的なものだと思ってたみたいだけどね。
ありえない量の肉を焼かされ続けてそれだけで胃もたれしそうだった俺的にはこっちで十分だった。
みんなのステーキを焼く合間にそれはそれは美味しく頂きましたよ。
あっさりしつつもうま味もちゃんとあって最高だった。
とは言ってもゆっくり味わって食ってる暇もないくらいにステーキを焼きまくってたけどね。
そのせいで今日は朝から腕がパンパンだわ。
「それでも朝飯は用意しないといかんのよね~……」
キッチンにある魔道コンロの前で一人そうつぶやきながらガックリと肩を落とす俺。
「昨日あんだけ肉食ったんだし、もうさ簡単に白飯に味噌汁に香の物くらいでよくね? 朝飯なんだしあっさりしたのでいいじゃん。たまにはさ」
俺の定番の朝飯みたいに。
『今日の朝飯はなにかと見にきてみれば、お主はなにを言っておる』
俺のつぶやきに返ってきた声に、ハッとして声のした方に顔を向ける。
「げっ、フェル。って、みんなもいるんだ……」
呆れ顔のフェルとゴン爺、ドラちゃん、スイがキッチンの出入り口から顔を覗かせていた。
『いいか、よく聞け。肉のない飯は我らの飯ではない』
『うむ。そして昨日は昨日。今日は今日じゃぞ主殿』
『そうそう。それによ~、俺ら朝から肉でもなんの問題もねぇし~』
『お肉はいつ食べても美味しいよ~』
食いしん坊カルテットに俺の主張は通らない様子。
『そういうわけだから朝飯も肉だぞ』
フェルが当然という顔でそう言うと、ゴン爺もドラちゃんもスイも同意するように大きく頷いた。
「ハァ~。はいはい分かりました~」
『『『『…………』』』』
去らずにジィーっとこちらを見ている食いしん坊カルテット。
「なによ?」
『肉だぞ』
『うむ』
『肉だからな』
『お肉だよ~』
「も~分かってるってば! リビングで待ってなさいって」
シッシと追い払ってようやく去っていった食いしん坊たち。
「さてさてなにを作るかな」
作り置きもほとんど残ってないはずだし……。
アイテムボックスの中身を確認しながら考える。
「ふ~む、十分な量が残っているのはご飯と千切りキャベツだけか……」
パンも食うけどうちは米の方が食うからねぇ。
白米のストックは切らせないんだわ。
千切りキャベツは、肉ばかり食う食いしん坊たちに少しでも野菜を食わそうと丼ものによく使ってたから大量に作ってあったんだよなぁ。
そうなると、やっぱり丼ものがいいか。
なんと言っても簡単だし。
「そうだ。あっさりしたのが嫌なら超こってりしたのを出してやろうじゃないの」
ニヤリ。
まぁ、朝から揚げ物もOKな鉄の胃袋を持つあいつらにどれだけ効くのかはわからないけどね。
ということで、メニューは決まった。
「こってりヘヴィなお味のてりマヨ豚丼だ!」
まずは手持ちに無い材料をネットスーパーでちゃちゃっと調達してと。
「よし。それじゃあ作っていきますか」
使う肉はダンジョン豚。
これを薄切りにして、片栗粉をまぶしていく。
うちは大量だから袋に入れてシャカシャカシャカシャカ。
時短になって洗い物も出ないから結局これが一番手間がかからない方法。
肉の準備ができたらあとは炒めでいくだけ。
フライパンに油をひいて熱したら、ダンジョン豚の肉を投入。
肉の色が変わってきたら、醤油・酒・みりん・マヨネーズ・おろしニンニク(チューブ入り)を混ぜた合わせ調味料をドバっと入れていく。
そうしたら肉に絡めながら炒め合わせて……。
「うん、イイ感じ」
あとは器にホッカホカのご飯をよそって、その上に千切りキャベツを……、野菜を食わさねばってことでドッサリ載せる。
そして、炒めたダンジョン豚の肉をこれでもかってくらいに載せてやる。
その上にピュピュッと格子状に追いマヨを。
そこに白ゴマと刻み細ネギを散らして……。
「こってりてりマヨ豚丼の出来上がり~」
まぁ、美味いのはわかっているんだけど、一応味見。
一口分くらいの白飯に肉を載せてゴマとネギをパラリとしてパクリ。
「うん、やっぱ美味い。美味いんだけども…………、朝に食うものではないわな」
こってりヘヴィな味は目覚めの胃袋にはキツイよ。
「あいつらにはなんてことないんだろうけどねぇ~」
おっと、遅くなるとまた催促に来るだろうから持っていってやるか。
「お待ちかねの肉だぞ~」
そう言ってみんなの前に特盛のてりマヨ豚丼を出していく。
『うむ。やはり肉でないとな』
『実に美味そうじゃのう』
『やっぱ肉だよなぁ。山盛りの肉最高!』
『お肉お肉~!』
「昨日あんだけ食ったのに、というかほぼ毎日毎食肉食ってるってのにホン飽きないよね~」
『馬鹿者。肉に飽きることなどないわ』
『うんむ。主殿の料理を食うようになったらなおさらだのう。味付けも様々だから飽きるなどということはないじゃろう』
『魔物によって肉だってそれぞれ違うしな~』
『どのお肉もね~美味しいの~! だからスイいっぱい狩るんだ~!』
さいですか。
食いしん坊カルテットはこってりヘヴィなてりマヨ豚丼を朝でも関係なくモリモリ食ってたよ。
当然おかわりもばんばんしてね。
見ているこっちはそれだけで胸焼けしそうだった。
そんなこともあって、俺の朝飯はサラッといけるお茶漬けにした。
食いしん坊カルテットこってりヘヴィなてりマヨ豚丼をバクバク食う中、ズゾゾ~ッとあっさりお茶漬けをすする俺だった。