第六話 俺のとんでもスキルがとんでもない威力を発揮した
キールスの街を出発して3日目。
本当ならば、乗合馬車だと今頃はフェーネン王国に入っているころだ。
それから半日かけてフェーネン王国国境の街ファリエールに辿り着く。
だが、現状は徒歩。ようやく半分の道のりを過ぎたところだった。
徒歩だけに時間はかかっているが、旅路で特に大きな問題はなかった。
アイアン・ウィルは中々に優秀で、出て来たゴブリンや狼の魔物はすぐに切り伏せられた。
さすがはCランクで、このくらいの魔物は腕試しにもならないそうだ。
「もうすぐ日も落ちる。今日はここまでだ」
ヴェルナーさんの言葉に各々が野営の準備を始める。
俺も夕飯の準備だ。
メニューにはちょっと気を遣う。
あまり奇抜な物や手の込んだものだとこの世界の食の基準からいくとマズいだろうから、できるだけシンプルなものを心掛けている。
今日はソーセージを焼いたものとポトフとパンにしようと思う。
みんな肉は好きみたいだから文句は出ないだろう。
まずは熱した鍋に切ったベーコンを入れて、その後に野菜とソーセージを投入。そこで少し炒めたあとに、水を入れる。煮立ってきたら固形コンソメスープの素を入れて更に弱火でコトコト煮込む。
「うん、いい感じだな」
味見をしてみたが、ベーコンとソーセージの塩味も加わって味を調えるまでもなくそのままでいけそうだ。
後はソーセージを軽く焼いてと。
「夕飯できましたよ」
木の器にポトフをよそったものと焼いたソーセージとパンの載った木皿を渡していく。
「あー美味い。相変わらずムコーダさんの飯はウメェな」
ヴィンセントが飯をガツガツ食う合間にそう言った。
その言葉にリタがうんうんと頷く。
「ホント美味いよね。美味い飯を食ってるおかげか、あたいなんていつもより体の切れがいい感じしてるもん」
「私もムコーダさんのお食事を食べ始めていつもより力が湧く感じがしてます」
フランカがリタの言葉に相槌を打つようにそう言った。
「人にとって食うことは最も大切なことだ。その食う物が美味ければ人の気の持ちようも違ってくるさ」
普段は無口なラモンさんがしみじみとそう言った。
うん、俺の食事気に入ってくれてるってことだなラモンさん。ありがとよ。
「確かにそうだな。人は食わなければ生きていけない。それならマズい物より美味い物を食った方がいいに決まってる。旅路でこんな美味い飯が食える俺たちは幸せってことだな」
最後にヴェルナーさんがそう締めた。
何かそこまで絶賛されると照れるんですがね。
日本の食品産業の勝利ということか。
でも、リタやフランカが言ってた体の切れがいいとか力が湧くって何だろ?
大した物は作ってないんだけど……。
悪い影響じゃないみたいではあるけど、何か気になるな。
ちょっと鑑定させてもらうか。
【 名 前 】 リタ
【 年 齢 】 16
【 職 業 】 斥候
【 レベル 】 18
【 体 力 】 135(+27)
【 魔 力 】 64(+3)
【 攻撃力 】 119
【 防御力 】 107
【 俊敏性 】 138
【 スキル 】 短剣術 聞き耳 忍び足
「ブフォッ」
「ちょ、いきなりどうしたんすか?」
「ゴホッゴホッゴホッ、い、いや、ス、スープが変なとこ入って咽ただけだから、大丈夫、ゴホゴホッ……」
な、何なんだよ、+27とか+3って。
思わず噴き出しちまったぜ。
俺の作った飯食ったからか?
これか?これなのか?
俺は手元のポトフを鑑定してみた。
【 ポトフ 】
異世界の食材で作られたポトフ。体力を1時間およそ20%向上させる。
oh…………。
俺の料理がモロ原因だよ。
待て待て、ポトフが体力をプラスさせた原因だとすると、魔力は何だ?ソーセージか?パンか?
【 ソーセージ 】
異世界のソーセージ。魔力を10分間およそ2%向上させる。
【 食パン 】
異世界の食パン。魔力を10分間およそ1%向上させる。
うん、ソーセージも食パンも原因だよ。
これって、考えたらかなりヤバいもんだよな。
食うだけで体力とか魔力が上がるんだからさ。
誰かに知られたりしたら…………
うぉッ、寒気がする。
絶対、絶対、絶対知られたらマズいことになる。
幸い鑑定スキルは召喚勇者しか持っていないし、鑑定の魔道具も国やギルド単位でしか持っていない。
それにみんなが自分のステータス確認をするためにはステータス確認の魔道具で確認しなきゃならないんだからバレることはまずない。
ここは俺が口をつぐんでいれば絶対バレないはずだ。
口にチャックだ。
このことについては絶対に一言もしゃべらないぞ。




