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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第五十四話 レッドサーペントは超高級品

「買取お願いします」
「おう、見せてみろ」
 ここでもファリエールの冒険者ギルドと同じく出て来たのは冒険者上がりっぽい厳つい禿げ頭のおっさんだった。
「おっ、ラーシュたちの知り合いか?」
 その言葉にラーシュさんたちと禿げ頭のおっさんは軽く言葉を交わしている。
 禿げ頭のおっさんはラーシュさんたちフェニックスのメンバーとは顔馴染みのようだ。
「えーと、たくさんあるんですけど……」
 そう言うと倉庫に案内された。
「ここなら問題ないだろう。出してみろ」
 そう言われてまず出したのは、オークジェネラル×5だ。
「こ、こりゃオークジェネラルじゃねぇか……。しかも5体もか……」
 オークキングもこの際出してしまおうと思ってたけど、この驚き方じゃ止めといた方がいいな。
 オークキングはしばらく封印と。
「それから、これもお願いします」
 出したのはロックバード×3だ。
 地鶏みたいな美味さのロックバードの肉は是非とも確保しておきたいからな。
「ロ、ロックバードもか……」
 禿げ頭のおっさんもフェニックスのメンバーもめちゃくちゃ驚いている。
 驚いてるところ申し訳ないけど、まだ続けるよ。
 これだけじゃ肉がまだ足りんのだよ。
 フェルとスイという大食らいがいるからな。
「あとは、ジャイアントドードーとジャイアントディアー」
 あれ、みんな唖然としてるね。
 でも、まだあるんだぜ。
「それから、マーダーグリズリーとブラックサーペントとレッドサーペント。これで最後です」
 オーガは食えないって言ってたから別に今じゃなくてもいいもんな。
 それにメタルリザードも名前とあの見た目からして食えそうにないし。
 あとキマイラとオルトロスは、出すと大変なことになりそうだから永久封印だ。
「………………レ、レッドサーペントだと?」
 驚き過ぎたのか無言だった禿げ頭のおっさんが一早く復活して、レッドサーペントを確認してそう言った。
 え?出しちゃマズかったか?
「どこでこんなの獲って来たんだ?」
 鋭い目つきで聞いてくるおっさんにちょっとビビった。
「えーと、私が獲ったんじゃないんで……」
 俺の後ろで寝そべりながら欠伸をしているフェルを見てそう言った。
「ああ、そうか。フェンリルなら可能か……」
 このおっさんもフェルがフェンリルって分かってるみたいだな。
「そうですよ、おやっさん。フェンリルならレッドサーペントくらいどうってことないでしょう。その上のランクの魔物だって屁でもないでしょうよ」
 ラーシュさんの言葉にギクッとする。
 すんません、キマイラとオルトロスあります。
「確かにラーシュの言うとおりだな。これくらいで驚いてらんねぇな」
 ホント、すんません。
 キマイラとオルトロスは永久封印して出しませんので勘弁してください。
「こんだけの魔物を一遍に見ることなんてないぜ、普通は……」
「俺、レッドサーペントなんて初めて見た」
「それを言うなら、俺、ブラックサーペントも初めて見たぜ」
「ホント、すっげーな。それに、ムコーダさんがこれだけ入るアイテムボックス持ちだってことにも驚いてるぜ」
 復活したラーシュさん以外のフェニックスのメンバーが口々にそう言った。
「確かに、こんだけ入るならすげーよな」
「うんうん、この量入るアイテムボックス持ちってそんないないんじゃねぇの」
「いいよなー大容量のアイテムボックスって」
「ムコーダさん、俺らのパーティー入らないか?」
 アイテムボックスの話題が出たことでフェニックスのメンバーがそんなことを言い出した。
 げ、マ、マズい……。
 肉優先でポンポン出したのがマズかったか。
『グルルルルル』
 ラーシュさん以外のフェニックスのメンバーに、フェルが歯を剥き出しにして唸って威嚇した。
 威嚇されたフェニックスのメンバーはビキリと固まる。
「おい、オメーら黙ってろッ!」
 ラーシュさんが血相を変えて他のメンバーに怒鳴る。
「ムコーダさん、すまん。許してやってくれ。威嚇するの止めてくれねぇか」
「はい……。フェル、大丈夫だから止めてくれ」
 そう声をかけると、フェルが威嚇するのを止めた。
「オメーらは余計な事口にすんな。分かったな」
「「「「はい」」」」
 ラーシュさん以外のフェニックスのメンバーは青い顔のまま首ふり人形みたいにガクガク頷く。
 みんな、すまんな。
 けど、アイテムボックスのことは突っ込まんといてくれ。
 アイテムボックス云々(うんぬん)のことはフェルも承知してたんだろうな。
 フェニックスのメンバーには悪いけど、フェルよくやった。
「おい、すまんがこっちの話いいか。こんだけあるとさすがに少し時間もらわにゃならんぞ。そうさな、明日一日時間もらって明後日には大丈夫だ」
 おっさんが苦笑いしながら、予定を告げた。
 明後日か……。
 うーん、肉がもうないんだよな。
 1匹分だけでも肉がほしい。
 今日の夕飯分と明日1日分の肉は何とか確保したいところだ。
「あのー、1匹分だけ先に解体してもらえませんか?」
「ん、1匹だけ?」
「はい、正確に言うと肉が必要なんです。今、出した魔物も肉だけはこちらにいただきたいんです。それ以外の素材は買取で大丈夫なんですが、肉はどうしても必要なんで……」
 チラっとフェルを見る。
「ああ、なるほどな。分かった1匹だけこの場で解体してやる。何がいい?」
 良かったー。
 何がいいかな……うーんと、あ、夕飯はあれにするか。
 そうなると、ロックバードかな。
「ロックバードでお願いします」
「分かった」
 おっさんが鮮やかな手つきでロックバードを解体していく。
 やっぱり内臓は廃棄処分のようだ。
 ちょっともったいない気がして内蔵は食べないのか聞いてみたら変な顔されたよ。
 ここには内臓を食べる文化はないみたいだね。
 残念だけど今はしょうがないか。
「あ、レッドサーペントって食えるんですよね?」
 レッドサーペントだけ初めての魔物だから一応聞いておかないと。
 ブラックサーペントが食えるんだから大丈夫だとは思うんだけどさ。
「ああ、食えるぞ。超高級品だ。俺ら庶民じゃ一生食えないくらいのな」
 え?そ、そんなにか?
 どんな味がするんだろう。
 ブラックサーペントも美味かったから、こりゃ期待大だな。
「ムコーダさん、気になったんだが、俺らが食わせてもらった肉って何の肉だったんだ?」
 ラーシュさんが気まずそうな顔でそう聞いてきた。
 ん、あれか?
「えーと、ブラックサーペントとコカトリスとロックバード、それからジャイアントディアーとマーダーグリズリーですね」
 そう言うと、ラーシュさんを含めたフェニックスのメンバー全員があんぐり口を開けた。
「肉だけはほしいって言ってたから、まさかとは思ったが……すまないっ」
「「「「すんませんっす」」」」
 ラーシュさんとフェニックスのメンバーが深々と頭を下げた。
「エッ?ちょ、ちょ、頭上げてくださいよ。な、何なんですか?」
「そんな高級品とはつゆ知らず、俺たちバクバク食っちまったし……」
 ラーシュさんの言葉にフェニックスのメンバーはうんうんと頷く。
「一生に一度食えるかどうかの高級品の数々を食ったんだな、俺たち……」
「どうりで美味いはずだ」
「ああ、どれも美味かったなぁ」
「…………(味を思い出しているのか無言で何度も頷いている)」
 感動してるところ申し訳ないけど、あれ、全部フェルが獲ってきたものだからぶっちゃけタダなんだよね。
 高級食材だとは聞いてたけど、俺らは普通に食ってたからそれほどありがたみもないっていうか。
 それに俺が買ったのって調味料類だけだから、俺の懐はほとんど痛んでないし。
「本当にすまない、ムコーダさん。何かあったら何でも言ってくれ。俺たちにできることなら何でもするからよ」
「いや、そんな気にしないでください。私の方も盗賊を街まで連れてきてもらったのもありますし……」
「いやいや、こんな高級品を食わしてもらったんだから」
「いえいえいえ、盗賊を街まで連れてきてもらってますし」
「おい、その辺でやめとけ。解体終わったぞ」
 おっさん、ナイスタイミング。
 ロックバードの肉をおっさんから受け取る。
「それじゃ、明後日また来ますんでよろしくお願いします」
「おう」
 俺とフェニックスのメンバーたちは連れ立って冒険者ギルドを後にした。


「ここの冒険者ギルドはいいですね。フェルと一緒に入ると、たいていざわついたり凝視されたりするんですけど、そういうのなかったし」
 話題を変えるように歩きながらそう言うと「リーダーがいたからな」と言われる。
「リーダーはこの街でもけっこう名前の知れた冒険者なんだ。その連れにちょっかい出すような馬鹿はいないぜ」
 へぇ、そうなんだ。
 知り合いになれてラッキーかも。
「こいつの言うとおり、俺もちっとばかしこの街では名前が知れてる。何度も言うようだが、何かあったときは何でも相談してくれよ」
「ありがとうございます。ラーシュさんにそう言ってもらえると心強いです」
「ただ明日からまた隣街までの護衛任務があって2週間ばかし街にはいないんだが……」
 あ、そうなんだ。
 でも、そんなすぐに困るようなこともないとは思うけど。
「こいつのわがままだよな」
「そうそう」
「サンドラちゃーん」
「うっせい」
 ああ、ギルド職員のサンドラちゃんに会いに行くんだね……。
 リア充爆ぜろ。
「2週間はいないが、その後は街にいるから、冒険者ギルドに伝言残してくれれば駆けつけるからな。なんかあったら声かけてくれよ」
 ここまで言ってくれるとはありがたいね。
 ラーシュさんも義理堅い人だよ。
 ……あ、大事なこと忘れてた。
「早速なんですが、従魔と一緒に泊まれる宿があったら教えてもらえませんか?」
「それならこの道を真っ直ぐ行くと”グリフォンの巣”って宿があるんだが、そこがおすすめだ」
「おお、じゃあ、そこに行ってみます。それじゃ」
 俺たちはフェニックスのメンバーたちと分かれて”グリフォンの巣”へ。
 久しぶりにベッドで寝れるぜ。




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