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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第三百六十二話 肉肉肉の肉三昧

 肉ダンジョン祭り2日目。
 屋台街には人があふれ今日も大盛況だ。
『今日は食って食って食いまくるぞ』
『当然だぜ!』
『スイもいーーーっぱい食べるよー!』
 …………食う気満々なのはいいけど、君らのいっぱいっていうのがちょっと怖いんだけども。
 それに、昨日もかなり食ってたと思うんだけど。
 昨日、フェルとドラちゃんとスイに請われるままあっちこっちの屋台で大量購入したのを思い出す。
「昨日も相当食ってたよな?」
『昨日は昨日だ。それにあんなのは序の口よ』
『そうそう。昨日回れなかった屋台もいっぱいあるしな!』
『えへへ~、いろんなの食べるんだー』
 どうやら昨日の分はまだまだ始まりに過ぎないらしい。
『よし、今日はそこの串焼きの屋台からだ。ドラ、スイ、付いて来い』
『よっしゃ、今日も肉食いまくるぞ!』
『お肉~』
 そう言って、近くにあったダンジョン牛の串焼きの屋台に突撃するフェルとドラちゃんとスイ。
 いきなり現れたフェルたちにも意に介さず串焼きを焼き続ける屋台のおっちゃん。
 職人気質の頑固親父って感じだね。
 そのおっちゃんが焼いているのは、大ぶりの肉が2つ刺さった串焼きだ。
 ジュウジュウと焼けるダンジョン牛の肉からはハーブを使った特製ダレだろうスパイシー香りが漂ってきて実に美味そうだ。
『おい、我はこれを10本だ』
『俺は5本だな』
『スイはねー、20本食べるー』
『おい、スイ、10本にしておけ。この後もたくさん屋台を巡るのだぞ』
『あっ、そっかー。フェルおじちゃんの言うとおり、このあともいっぱい食べるんだもんね! うん、スイも10本にするー』
『はいはい、じゃ、注文するな』
「すいません、26本お願いできますか」
 ついでに俺の分も1本追加で注文した。
 スパイシーな肉の匂いをかいだら我慢できなくなったぜ。
「あいよ」
 ちょうど焼きあがった串焼きを代金と引き換えにおっちゃんから受け取った。
 そして、空いたスペースに移動していつものように串から外した肉をフェルたちそれぞれの専用の皿に盛って出してやった。
 みんなすぐにがっつき始めてペロッとたいらげてしまった。
『まぁまぁだったな』
『ああ。少しピリッとする味付けでさらに食欲が増したぞ』
『やっぱりお肉はおいしーね! スイもっともっと食べるよー!』
「みんな、早いよ。俺、まだ半分も食ってないんだけど」
『何をちんたら食っているのだ。早く食え。次に行けぬだろうが』
「そんなこと言ったってこの串焼きけっこうボリュームがあるから、お前らみたいにそんなすぐには食えないんだよ」
 ドラちゃんもフェルに同調するように『そうだそうだ。早く食えよ』って言うし、スイはスイでジーッと見てくるしで、急かされるようにダンジョン牛の串焼きを食う俺。
 何のハーブを使っているのかピリッとスパイシーなタレと脂身の少ない赤身の部分の肉に非常にマッチして美味い串焼きだ。
 しかし、美味いのは美味いけど、急かされながら食ってるもんだから感動も半減だ。
『よし、食い終わったな』
『次だ次っ』
『お肉~』
 俺が食い終わるのを確認すると再びフェルとドラちゃんとスイが次のターゲットの屋台へと突撃していった。
 美味いものはゆっくり味わって食うのが1番なんだけどね。
 これじゃあ、今のところは無理そうだけど。
『おい、次はこれだぞ。早く来い』
 フェルからの念話が入る。
『へいへい。今行くよ』
 俺はいそいそとフェルたちの下に駆け寄った。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 フェルたちの食欲の赴くままに十数軒の屋台を巡ったところで、見覚えのある顔に出くわした。
「お、あそこの屋台メイナードとエンゾがいる」
『む、ちょっと前に屋敷に来ていた小童か。確かお主が内臓の料理を教えていたんだったな』
「ああ。けっこう人が並んでるし、繁盛してるみたいだな。良かった良かった」
 メイナードとエンゾの屋台は行列も出来ていてなかなかに繁盛しているようだ。
 それを見てドラちゃんがポツリ。
『内臓か。あれ見てくれはあれだけど、けっこう美味かったな』
 それを聞いてスイも『美味しかったー』とポンポン飛び跳ねる。
『……どれ、小童どもの作った内臓料理を味見してやるか』
 そんな偉そうなことを言いながら行列を無視してメイナードとエンゾの屋台に近付こうとするフェル。
『俺も食うぞ』
『スイもー』
 そう言ってフェルの後に続くドラちゃんとスイ。
「ちょちょちょちょ、ちょっと、みんな待ちなさいって」
 フェルの尻尾とドラちゃんの尻尾をひっつかんで慌てて止めた。
「スイもダメ。止まって」
 1人ポンポンと飛び跳ねながら屋台に近付くスイも止める。
『何故止める?』
 俺に止められて不機嫌な声でそう言うフェル。
「何故止める? じゃないよ。みんな並んでるんだから食いたいなら並ばないとダメだよ」
『む、そうなのか。面倒だな』
「じゃ、違う屋台行くか?」
『ぬぅ、内臓料理の味を思い出して食いたくなったのだぞ。次はやはり内臓料理が食いたい』
「じゃあ並ぶんだな。ほら、並ぶぞ」
『仕方がない』
 フェルたちとともに列に並ぶ。
 すると、数人からチラチラ見られている気が。
 フェルたちが一緒だからな?
 この街にも10日以上いるから、この街の人たちもフェルの存在はけっこう知られてるんだけど。
『まだか?』
「今並んだばっかりだろ。もう少し待て」
 ったく、並んだばっかりですぐ俺らの順番になるわけないだろ。
「…………あ」
『何だ?』
「フェル、念話念話っ」
 ちょっと焦りながらフェルの耳元でそう言った。
 人の多いところではなるべく念話を使うようにしてもらってたけど、今、フェルのやつ普通にしゃべってたぜ。
『む、そうだった』
「そうだったじゃないよ。頼むよ~」
 カレーリナならいざ知らず、ここじゃ聞かれると騒ぎになるだろ。
 こっちをチラ見してた人たちは俺たちの会話が聞こえてた人か。
 フェルもそんな大きな声でしゃべってたわけじゃないから、数人で済んだけど……。
 チラリ。
 俺らをチラ見していた人たちを、俺の方からもチラッと見た。
 ヤベッ。
 まだこっちチラ見してる。
 ここは……、必殺の知らんふりで通すしかないないな、うん。
 そんな感じで待つこと少々。
「お待たせしました。次の方どうぞー」
「なかなか繁盛してるじゃないか」
「「師匠!」」
「買いに来たぞ」
 軽く話しをすると、この店も最初はモツを見てみんな引いて閑古鳥だったそう。
 でも、新しい物好きな客が試しにと注文してくれて……。
 その客が「美味い美味い」と食べているのを見てそれじゃあと買う人が少しずつ増えていって、今では行列が出来るほどになったという。
 “はずれ”のモツを使っていることで、トマト煮込みが鉄貨4枚、モツの串焼きが鉄貨3枚と他の屋台より安い価格に設定できたことも良かったのだろうということだった。
 やっぱりこういうのは実際に食ってもらうのが1番なんだよな。
 美味ければ自ずと客は集まってくるってことだ。
「2人とも、良かったな」 
「「はいっ!」」
 メイナードもエンゾも店が繁盛して嬉しそうだしヤル気が漲っていた。
「とりあえず、これに3人前ずつトマト煮込みを。で、串焼きの方は26本お願いな」
 アイテムボックスから取り出したトマト煮込みを入れてもらうフェルたち用の皿と代金を渡して注文した。
 大分腹もくちくなってきたから、俺は串焼きだけ。
『おい、我はもっと食えるぞ』
『いやいや、行列もできてるし、お前らばっかりたくさん頼むのも悪いだろ。また俺が作ってやるから、ここは3人前で我慢しとけ。な』
『むぅ、しょうがないな。近いうちに絶対に作るのだぞ』
『はいはい、分かってるよ』
 フェルとそんな念話をしているうちに注文の品ができたようだ。
「師匠、どうぞ」
「ありがとな。じゃ、2人ともがんばれよ」
 モツのトマト煮込みと串焼きを受け取って、メイナードとエンゾの屋台を離れた。
 そしていつものように空きスペースを見つけると早速試食だ。
『この煮込み、お主の味にはちと及ばないが悪くはないな』
『ああ。けっこうイケる』
『おいしーね。でも、ちょっと少ないかなぁ』
 3人前ずつ頼んだけど、みんなにはちょっと少なかったかな。
 次はモツの串焼きだな。
 串から外して皿に載せて出してやると、みんなガツガツと食っていく。
 どれ、俺も。
 噛み締めるとジュワッとあふれ出るモツの脂。
 メイナードとエンゾが作ったという“究極のタレ”は、塩ベースのタレだった。
 レモングラスに似たハーブを使っているのか、それに似た爽やかな風味がフッと鼻を抜ける。
「ほー、なかなか美味いじゃないか。脂の多いモツもこの味ならさっぱりイケる」
 さすが2人とも料理人を目指しているだけあるな。
『まずまずの味だ。あの小童もなかなかやるな』
『言えてる。そんなに期待してなかったけど、割とイケたな』
『おいしかったー』
 うちのグルメな食いしん坊たちからも好評のようだ。
「これならメイナードとエンゾの屋台、上位入賞もありえそうだな」
 ちょこっと教えた身としては、2人にはがんばって欲しいところだ。
『よし、次に行くぞ』
『おう』
『お肉、お肉~』
「屋台も大分回ったってのに、まぁだ食うのかよ?」
『当然だ』
『まだまだイケるぞ!』
『スイ、もっといっぱい食べるもんね~』
 再び屋台街に突進する食いしん坊トリオ。
「ハァ、すごい食欲だねぇ」
 俺は呆れつつもみんなの後を追った。



 結局この日は30店舗近くの屋台を巡った。
 フェルとドラちゃんとスイは肉料理を食いまくった。
 肉肉肉の肉三昧で、最後にはフェルとドラちゃんは腹をパンパンに膨らませて満足そうな顔をしていたよ。
 一見変わりない姿のスイも、帰り道はいつもの定位置の革鞄の中で満足そうにスヤスヤと眠っていた。
『今日は食いに食った。やはり肉はいいな。明日も食うぞ』
『おう。明日も腹いっぱい肉食うぜ!』
『ムニャムニャ……お肉~…………』
 今日、あんだけ食ったんだからもういいやってなるかなって思ったけど、うちの食いしん坊トリオはまだまだ食う気満々だった。
 明日も肉ダンジョン祭りで屋台巡りかぁ。
 ウップ……、さすがに俺は明日は肉はもういいかな。



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