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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第三百五十七話 臨時ベビーシッター

7月25日に発売した『とんでもスキルで異世界放浪メシ3 ビーフシチュー×未踏の迷宮』の重版決定です!
お買い上げいただいた皆様、本当にありがとうございます!
そしてなんとシリーズ累計10万部突破いたしました!
これも読んでくださっている皆様のおかげです。
これからも本作をよろしくお願いいたします!
 早めに朝飯も済ませて、子どもたちが来るのを待っていると……。
「兄ちゃん、来たぜ~」
「おう、いらっしゃ……い? え、ちょっとちょっと、人数多くないか?」
 ゾロゾロとやって来た子どもたちは、明らかに昨日よりも多い。
「いやぁ、それがさぁ……」
 チラチラと俺を見ながらバツが悪そうにそう言うルイス。
 話を聞いてみると、要は昨日と同じパターンだ。
 ダンジョン豚の肉塊持ち帰ると、それを見た子どもたちが「どこから手に入れてきたんだ?」って話になって、おしゃべりな子どもたちの口からはホルモン焼きを食ったことやらモツの下処理の話が出た。
 当然、今日の話題にもなって、モツの下処理の仕事をすれば銀貨1枚もらえて美味い飯にもありつけるとなれば……。
「それでこの人数か。ま、人手があるのは仕事がはかどっていいけどさ」
「なんか、今日仕事ない奴のほとんどがついて来ちまった」
 子どもたちの集団を見るからに、おそらくは昨日の倍はいるだろう。
「それに何かわからんけど、特に将来料理人になって屋台だとか飯屋をやりたいって奴が絶対に行くからなって息巻いてさぁ」
「何かわからんけどって、お前、そりゃモツの処理の方法が知りたいってことだろう」
 昨日のことを話したならそれしかないよな。
「え、何で?」
「お前、昨日食ってどうだった?」
「すっげぇ美味かった!」
 昨日食ったホルモン焼きを思い出したのか「口の中でジュワァって」などと言うルイス。
「そうだろ。で、あの肉は何だって言ったっけ?」
「…………あっ! そっか、あれって“はずれ”だった!」
 ようやくルイスも気がついたようだ。
 モツがここのダンジョンのいわゆる“はずれ”で、ほとんどの冒険者はその場に捨て置くようなものだということに。
 ダンジョン豚にしてもダンジョン牛にしても、ドロップ品1つでもけっこうな量がある。
 知り合いの冒険者にでも頼んでモツの1つでも持ち帰ってもらって、それを安く譲ってもらったならば、店をやるにしても十分やっていけるのではなかろうか。
 今までは、あの見た目と処理が不十分でただ不味いと思われていたものが、美味く食える方法があるならば、料理人を目指す者ならそれを知りたいと願うのは当然の話だろう。
「でもさ、いいのか兄ちゃん。そういうのは秘密にするんじゃないのか? 飯屋とかでも秘伝のーっとか言ってなかなか教えてもらえないって聞くぞ」
「うーん、まぁなぁ。俺がもしここで飯屋をやりますって話になれば違ったかもしれないけど、そんなつもりは今のところないし。美味いもんを食えるようになるのはいいことだしな」
「そっか。ありがとな、兄ちゃん」
「まぁ、仕事はしっかりしてもらうからな。……ってかさ、さっきから気になってるんだけど、こんなちっちゃい子まで連れてきてどうするんだよ」
 俺の視線の先には年長の子どもと手をつないだ5歳くらいの幼児がいた。
 それもざっと数えただけでも6人はいる。
 兎耳の獣人の男の子1人と犬耳の猫耳の獣人の女の子2人、人間の男の子2人に女の子が1人だ。
 どの子も当然何のためにここに来たのかも何をするのかもわからないだろうけど、年長のお兄ちゃんお姉ちゃんに手をつないでもらって嬉しそうにニコニコしていた。
「それが、行くって言って聞かなくて。置いていこうとすると泣くんだぜ……」
 この幼児たちにはルイスもほとほと困ったようだ。
 ギャン泣きされて仕方なく連れてきたそう。
「ま、まぁ、連れてきちまったもんはしょうがないか」
「ホント、兄ちゃんごめんよ」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



『おい、何で我が小童どもの面倒を見んといかんのだ?』
「フェルだけじゃないぞ。ドラちゃんとスイにもお願いしたもんな」
『俺はガキは苦手だからな。フェル中心で俺はあくまで手伝いだぞ』
『スイはねー、みんなと一緒に遊んであげるのー』
 幼児たちの横でスイがポンポン飛び跳ねる。
 それを見て幼児たちはキャッキャッはしゃいでいた。
「おおかみしゃん~」
 人間の女の子のフローラちゃんがフェルにしがみ付いた。
「あ、ずるいー、わたちもー」
 猫耳の獣人の女の子のデビーちゃんもそれに続いた。
 そうなると残りの幼児たちも「ぼくもー」「あたちもー」とフェルにしがみ付く。
『お、おいっ、小童ども、放せっ』
 よってたかって幼児にモフられて焦るフェルがちょっと笑える。
「天気もいいことだし、子どもたちを庭で遊ばせながら面倒見ててくれよ。みんなフェルに懐いているみたいだし、よろしく頼むな。俺たちは昨日と同じくモツの処理してるから」
『ちょっ、ちょっと待て!』
「じゃ、お願いな。あ、ケガさせないように注意な。それと敷地の外に出ないようにもな。ドラちゃんとスイもフェルと一緒に子どもたちの面倒見てやってくれな。夜には美味いもん作るから」
『ったくしゃーねぇなー』
『ヤッター! スイがんばるよー!』
『覚えていろよっ、お主ー!』
 フェルが何か言ってるが、聞こえない聞こえない。
「お、おい、兄ちゃん、大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫。フェルもドラちゃんもスイも頼りになる奴らなんだから。それよりも、昨日の続きだ。今日中にモツの処理を済ませたいから、みんながんばってな!」
 それからは、年長の子どもたちには昨日に引き続いてモツの処理をがんばってもらったよ。
 残っていた白モツの処理にレバーやらハツ、ハチノスなんかもやってもらった。
 レバーは、塩と酢を揉み込んで10分から15分くらい置いて、その後は水が透明になるまで水を変えながら洗っていけばOKだ。
 前は牛乳に漬け置く方法でやってたけど、塩と酢でもできるって知ってからはもっぱらこの方法だな。
 牛乳は切らしてるときがあるけど、塩と酢なら必ず家にあるからね。
 それにこっちの方が時間短縮できるし。
 ハツは切り込みを入れて血の塊やらをとって水洗いし、塩水の中で揉み洗いをしてから冷水にさらしておく。
 ハチノスの下処理はモツの中でも1番面倒と言えるが、そこはがんばってやってもらった。
 温度違いの湯につけて黒い皮を剥けやすくしてから、スプーンで黒い皮をこそげ落としていく。
 根気の要る作業だけど、これをしないと臭みがあって食えたもんじゃないからな。
 黒い皮を剥いたハチノスの処理はゆでこぼしたりと、これまた時間のかかる作業なので、これは俺が担当することに。
 その間子どもたちは多少の文句を垂れつつも、着々とモツの下処理をしてくれたよ。
 中でも料理人志望の子どもたちは、「なるほど、こうすれば臭みがとれるのか」とかブツブツ言いながら熱心に作業していたな。
 俺にもいろいろと聞いてきたし。
 ま、俺も分かる範囲でいろいろと教えてあげたよ。
 そんな感じで作業も進み……。
「よし、終わった。みんなご苦労様」
 俺がそう言うと、子どもたちの間から歓声があがった。
 人手があったこともあって、思ったよりも早めに作業は終了した。
「さて、約束の飯だ。人数が多いから庭で食うぞ」
 そう言うと再び子どもたちから歓声が。
 そして喜び勇んで庭へと飛び出していく子どもたち。
 それを追いかけて庭に出ると、庭で遊んでいたはずの幼児たちが遊び疲れてフェルに寄りかかってぐっすり眠っていた。
 スイも幼児たちにまぎれてぐっすりおねむ。
『お主、やっと来たか……』
 フェルが何か疲れた顔してるんだけど。
『この小童どもをどうにかしてくれ。我の毛を引っ張るわよじ登ろうとするわで、此奴らは魔物などよりよほどたちが悪いぞ』
 あー……、幼児なだけに怖い物知らずでやりたい放題だったわけね。
 ご愁傷様。
 でも、おかげでこっちは助かったよ。
 ルイスたちに言って、フェルに寄りかかってぐっすり眠る幼児たちを起こしてもらった。
 若干グズッていた子もいたけど、美味いものが食えると話すとパッチリと目を開けた。
『フゥ、助かったぞ……』
「ご苦労様でした。これから飯にするけど、フェルも好きなから揚げだからいっぱい食って元気出せよ」
『うむ。美味い飯を食って英気を養わねばやってられんわ』
 その後はみんなでから揚げパーティーだ。
 昨日の夜のうちにダンジョンで仕入れたコカトリスの肉で大量に作っておいた。
 醤油ベースのたれを揉み込んだオーソドックスなから揚げと塩ベースのたれを揉み込んだ塩から揚げ。
 子どもたちにはどちらも人気で見る見るうちに減っていく。
 フェルもドラちゃんもスイも負けじとバクバク食っている。
「から揚げ、美味いか?」
 子どもたちに聞くと、口いっぱいにから揚げを頬張った子どもたちがコクコク頷く。
「まだまだあるからゆっくり食え」
 そう言ったけど、我先にとパクついていたな。
「あっ、忘れてた! これ、兄ちゃんにって」
 ルイスがから揚げを食いながら思い出したように懐から紙を取り出した。
「何だ?」
「院長先生から預かってきた。兄ちゃんに渡してくれってさ」
 手紙を読んでみると、院長先生からのお礼の手紙だった。
 丁寧にお礼の述べられた手紙に、若干むず痒い思いが。
 ただ肉を持たせただけなのにな。
 中には直接会ってお礼が言えないことが申し訳ないということも書かれていた。
 何でも手伝いに来ていた人が辞めて、今は院長先生とシスター2人で何とか孤児院を切り盛りしている状態でとても忙しいそうだ。
 ルイスの話では子どもたちは60人前後はいるみたいだし、中には乳飲み子もいるということだから本当に大変だと思う。
 この街にいる間に、少しだけど寄付でもしておこうかな。
 何の目的に使われるかわからん寄付なら嫌だけど、子どもたちのためなら惜しくはないからな。



「はぁ~、美味かった」
「美味しかったぁ」
「もう入らない」
 腹をさすりながら満足そうに口々にそう言う子供たち。
 やっぱりから揚げはハズレないねぇ。
 大量に作っておいて正解だった。 
「師匠、この“から揚げ”の作り方も教えていただきたいですが、それよりも先ほどの臓物をどのように調理するのか是非とも教えていただければっ」
 …………師匠て、俺は君の師匠になったつもりはないよ。
「そうですよ、師匠。是非とも臓物の調理の仕方を我々にお教えください!」
 えーと、だからね、俺は君の師匠にもなったつもりもないよ。
 ちゃっかり俺のことを師匠呼びするこの2人は、料理人志望の子どもたちの中でもとりわけ熱心に俺に質問してきたメイナードとエンゾだ。
「師匠、是非とも!」
「是非とも!」
 迫るメイナードとエンゾ。
「あー、分かった分かった。でも今日はもう遅いから、あとでな」
「あとっていつですかっ?」
「明日ですかっ?」
「「ハッキリしてください!」」
 何だかわからんが、すごい気迫の2人。
「あ、あー、明日っ。明日の朝、今日来たくらいの時間でっ」
 メイナードとエンゾの気迫に押されて、思わずそう言ってしまった俺。
 ニッコリ笑ったメイナードとエンゾが「では、また明日伺います」と。
 はぁ、何だか知らんが明日は2人にモツ料理を教えないといけないみたいだ。
 あ、賃金の銀貨1枚は帰る間際にそれぞれにちゃんと渡したぞ。
 みんな嬉しそうに銀貨1枚を握りしめてたよ。




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