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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連
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第三百三十七話 ムコーダ、畑を作る。

 作り置きしておいた、ブルーブルの肉で作った牛丼温玉載せで昼飯を済ませたあとは、みんなでまったり過ごす。
 フェルは再びリビングで横になっているし、ドラちゃんとスイはフェルによりかかって昼寝している。
 俺は、ドリップバッグで淹れたコーヒーを飲みながら、今度は自分のものをネットスーパーで物色していた。
「多めに10足くらい買っとくか」
 靴下が大分くたびれてきたから買い足した。
 それから、ここのところ毎日風呂に入っているため入浴剤が大分減っていたことを思い出した。
 いつも使っているゆずの香りの炭酸ガス配合の入浴剤をカートに入れた。
「たまには違う香りのも買ってみるか」
 最近はゆずの香りばかりだったから、4種類のハーブの香りの入浴剤も買ってみた。
 今夜早速使ってみよう。
 そんなことを考えながらネットスーパーでの物色を続けていると……。
「ムコーダさん、頼まれていた詰め替えが終わりました」
「おお、早いな」
 俺は、家の中のことを頼んでいる女性陣にあることを頼んでいた。
 ネットスーパーで買ったシャンプーと【神薬 毛髪パワー】の詰め替え作業だ。
「ムコーダさんからいただいた“すぽいと”ってやつがありましたから、難なくできましたよ。それにセリヤの手際も良かったからそんなに時間もかかりませんでした」
 テレーザがそう言うと、セリヤちゃんが恥ずかしそうに下を向いた。
 セリヤちゃん恥ずかしがり屋であんまり主張しない子だけどやるときはやるな。
 それに細かい仕事が得意みたいで、幼いながら掃除なんかも細かいところまでキレイにやってくれるんだよね。
 テレーザの言う“すぽいと”はもちろんネットスーパーで仕入れたものだ。
 スイ特製エリクサーを1滴ずつ入れるためにスポイトがあったら便利だなって思って、もしかしたらと思ってネットスーパーで探してみたらあったんだ。
 すぐに購入して、詰め替え作業を頼むときに一緒に渡してあったんだ。
「これ、大分まだ残ってますんで返しておきますね」
 そう言ってテレーザから渡されたのはスイ特製エリクサーの入った瓶だ。
 テレーザの言うとおり、中身が大分残っていた。
 とりあえず伯爵様へ献上する分も含めて200本お願いしたんだけど、この分だと瓶1本でもけっこうな本数の【神薬 毛髪パワー】ができるな。
「またそのうち頼むかもしれないから、そんときはよろしく。セリヤちゃんもそのときはよろしくね」
 俺がそう言うと、アイヤとテレーザが「はい」と言い、セリヤちゃんはハニカミながら「はい」と頷いた。
 ロッテちゃんも「ロッテもがんばるよ!」だそうだ。
「ムコーダさん、他に仕事ありますか?」
 アイヤの言葉に少し考える。
 家の掃除も申し分ないし、詰め替えもやってもらったし、今日の夕飯も作り置きを出すつもりだし……、今のところ特にないなぁ。 
「今日は特にないな。少し早いけど、終わりにしていいよ」
 そう言うと、女性陣は「それじゃ買い物に行きましょうか」などと話していた。
「何か買いに行くのか?」
「野菜が少なくなってきたので、買いに行こうかと思いまして」
「あれ? マジックバッグ渡したよね? たくさん買ってあれに入れてくればいいのに」
 俺がそう言うと、アイヤとテレーザが困ったように笑った。
「安全になって護衛がいらなくなったのに、マジックバッグを持っていたらならず者に狙われますよ」
「……あ~、そっか。マジックバッグって、それなりの価値があるんだったっけ」
 自分がアイテムボックス持ちだから、マジックバッグって言うと、フェルたちの狩りの得物を入れるくらいのもんだったけど、世間じゃそれなりの値段で取引されるもんだったわ。
 あれ、そうすると、野菜なんかは頻繁に買いに行ってたのかな?
 聞いてみたら、どうやらそうらしい。
 最初の仕入れでたくさん仕入れた小麦粉やら日持ちする野菜はまだ大丈夫だけど、ほどほどの量にとどめた日持ちしなさそうなトマトに似た野菜やらブロッコリーに似た野菜にキノコ類なんかについては、3日に一遍くらい買いに行っているそうだ。
 元農家のテレーザ曰く「街で買うとしなびているし少し高くなってしまいますが、こればっかりはしょうがないですね」とのこと。
 テレーザのところでは、自分たちが食う野菜は育てていたそうだし、とれたて野菜に比べたら街の市場で売っているものは収穫してから多少時間も経っているだろうからね。
「それじゃ、買い物もあるんで失礼します」
「失礼します」
 アイヤとテレーザがそう言うと、セリヤちゃんがそれに習って「しつれいします」と言う。
 ロッテちゃんは元気に「ムコーダのお兄ちゃんバイバイ」って小さな手を振って帰っていった。
 俺もそれに手を振り返して見送った。
 それにしても、野菜か。
 野菜なら、確かにとれたてのものの方が美味いよな。
 特に日持ちしないようなものならなおさらだ。
 いっそのこと畑でも作るか?
 こんだけ広い土地なんだし。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「アルバン、こんな感じで耕していけばいいかな?」
「土も柔らかくなってますので十分です。やはり魔法はすごいですね。こんな使い方があったとは」
 俺は母屋の裏手にある使用人用の家が3棟並んだその隣の土地を土魔法で耕していた。
 畑を作るというのは上手く育てば食料になるという実利があるし、面白そうなのでさっそく実行してみることにしたのだ。
 そうは言っても、半分は道楽だけどね。
 アドバイザーはもちろん元農家のアルバン。
 アルバンに畑のことを話したらノリノリでOKしてくれたよ。
 やっぱり代々農家だったこともあって土いじりが大好きみたいだ。
 最初は、母屋の前の庭に作ろうかと考えたんだけど、フェルとドラちゃんとスイに大反対された。
 みんなの遊び場ではあるけど、広いんだからちょっとくらいはいいかなと思ったんだけどダメらしい。
 そして目を付けたのがここだ。
 使用人の家の隣というのは考えてみればベストな場所だ。
 畑は元農家のアルバン一家に託すつもりだし、みんなの食糧になるんだから使用人の家から近い方がいいだろうし。
 ただ場所的にテニスコートくらいの大きさの畑にしかならなそうだから、元農家のアルバンからしてみたらずいぶんと小さな畑かもしれないけどね。
 ま、その辺は家庭菜園程度のものだからしょうがない。
 そんなわけで、畑作りを開始したわけだけど、まずは土おこしからとなる。
 クワでやっていたら時間もかかるということで、魔法でできないかと思って試してみることにした。
 魔法はイメージということで、土がほぐれて柔らかくなるイメージでやってみたら何とかできた。
 一気にとはいかなかったけどね。
 魔力を込めて1回3メートル四方ってところかな。
 途中休憩を入れて、魔力を込めて地面に手をついて土がほぐれて柔らかくなるイメージを頭に浮かべながら土魔法を放つこと20数回。
「ふぅ~、こんなもんかな。おーい、畝作りは任せた」
 声をかけると、スタンバイしていたアルバンにオリバー君にエーリク君、そしてトニとコスティ君がクワを持って耕した畑に入ってきた。
 みんなには俺が魔法で耕している間にクワを買いに行ってもらっていた。
 元農家のアルバンはもちろんのこと、家の手伝いをしていたオリバー君とエーリク君もなかなかの手際だ。
 トニとコスティ君もアルバンに習いながら畝を作っていく。
「うわぁ~、畑だっ、畑があるよ!」
 買い物から帰ってきたロッテちゃんが俺の横でピョンピョン飛び跳ねている。
「ムコーダさん、これは……」
「まぁ……」
「畑だ……」
 いきなり出来ていた畑にテレーザもアイヤもセリヤちゃんも驚いている。
「いやぁ、元農家もいることだし、畑があればとれたて野菜が食えるかなぁってね」
 みんなの食糧にもなるんだから無駄なことじゃあないよ。
「ねぇねぇ、ムコーダのお兄ちゃん、畑で何を作るの?」
 ロッテちゃんが無邪気にそう聞いてくるが、そういや漠然と野菜とだけ考えてただけで何を作るかまでは考えてなかったな。 
「ロッテちゃんちでは何を作ってたの?」
「んとねー、畑ではジャガイモをいっぱい作ってたよ」
 ジャガイモか。
 こっちでもよポピュラーな野菜だもんな。
「じゃあジャガイモも作ろうか」
「うんっ」
「その他はねぇ……」
 どうせなら、異世界の野菜とか果物を作ってみるってものありかも。
 そんなことを考えていると、アルバンの声が。
「ムコーダさん、終わりましたよ」
「お、ご苦労さん」
 アルバンたちが畝を作り終わったようだ。
「よし、一区切りついたし休憩入れよう」
 何かおやつでもとネットスーパーを見ると、トップの今日のお買い得の中にメロンが……。
 メロンか。
 これ種あるし、ちょうどいいかも。
 異世界パワーでちゃんと育つかもしれないし。
 もし芽が出なかったとしても、あとでアルバンに別な野菜植えてもらえばいいし、試すだけ試してみるのもありだよな。
 それならということで、俺の好きなスイカも買ってみた。
 ネットスーパーは季節関係なく割と何でも売っているから、スイカ丸々1個も当然のように売っていた。
 俺の予想では、このネットスーパーは日本に繋がっているというわけじゃなく、魔法的な何かでネットスーパーの仕組みを再現されているんじゃないかって思ってる。
 おそらくだけど、俺が利用していた期間に売っていたものがそのまま再現されているんじゃないかな。
 だって旬の何々とかある割に、全然旬じゃないものも普通に一緒に売ってたりもしてるからな。
 まぁその辺は想像でしかないからわからないけど、俺としては季節関係なくいろんなものが売っているからありがたいけどね。
 だって、それは食いたいと思ったらいつだって買えるってことだしさ。
 そんなことはさておき、メロンとスイカを購入して、みんなでおやつだ。
 昼寝をしていたフェルとドラちゃんとスイも、いつの間にか来ていた。
「フェルたちも来てたのか。果物食うか?」
『もちろんだ』
『食う食う』
『食べる~』
 アイヤとテレーザに手伝ってもらい、メロンとスイカを切り分けていく。
 その間に警備のみんなを呼んできてもらうように子供たちに頼んだ。
 フェルたちの分は皮からを外して切り分けて皿に盛ってやった。
「こっちがメロンで、こっちがスイカな。メロンの方が甘くて、スイカは甘くて瑞々しいぞ」
 フェルたちがガッフガッフと食い始める。
「あ、みんなも食べなよ。あ、このスイカの黒いのは種だから、とっておいてね。畑に蒔いてみるから。アルバン、この種も含めて畑の半分で異世界の野菜とか果物を育ててみようと思うんだけど、いいかな?」
「もちろんですよ。私も興味があります」
 メロンの種は既に取り分けてある。
 アルバンの許可ももらったし、これを食い終わったらちょっとネットスーパー覗いてみよう。
 ネットスーパーに園芸用品ってメニューがあるから、多分野菜の種なんかも売ってると思うんだよね。
「甘~い」
 ロッテちゃんがメロンを口にして嬉しそうにそう言った。
「こっちの赤いのは甘いうえにすごく瑞々しいですね。こんな果物初めてです」
 スイカを食ったアルバンが目を丸くしている。
 うんうん、そうだろう。
 メロンもスイカも厳密には野菜ってことみたいだけどな。
 ほかのみんなも口々に甘いと言っている。 
 というか……。
「タバサ、何で2人は泣いてんだ?」
 アホの双子が「この甘さが腹に沁みるなぁ」とか言って泣きながらメロンとスイカを食っていた。
「いや~、何かわからないんですけど、多分今日は肉食ってないからだと思いますよ」
 詳しい話を聞くと、肉好きの双子が今日は朝も昼もパンと玉子しか食ってないとのことだった。
 何でも今日のメニューはアイヤさんが作ったオークの肉と野菜たっぷりのスープだったらしいんだが、アホの双子はオークの肉と聞いただけで顔色を悪くして食わなかったそうだ。
「アイヤさんの作ったスープ、すごく美味しかったんですけどねぇ」
 オークの肉か、何となく分かった。
 昨日、オークどもとあれだけの死闘を繰り広げあとで、オークを思い出すようなもんは食いたくないってことだろう。
 俺も昨日の夕飯はちょっと迷ったもんな。
 結局ロックバードの焼き鳥丼にしたけどさ。
 まぁ、今朝は普通にオークの肉使ったそぼろ丼食っちゃったけどさ。
 双子はけっこうやられて満身創痍だったからなぁ。
 昨日のことを思い出したくないというのはわらないでもない。
 でも、もう少し図太い性格かと思ったら案外繊細だったのな。
 笑っちゃいけないと思いつつもちょっと笑っちゃったぜ。
 休憩が終わったら、ネットスーパーで種を購入。
 思ったとおり、いろんな種が売っていた。
 とりあえず目についた、レタス、キュウリ、トマト、ナス、トウモロコシ、カボチャの種を購入。
 アルバンたちに野菜の写真入りの種の入ったパッケージを見せたところ、レタスとトマト以外は見たことがないとのことだった。
 キュウリ、トマト、ナス、カボチャは本当は苗にしてから植えた方がいいみたいだけど、お試しということで、今回は種のまま蒔いてみた。
 聞くところによると、この街は年中温暖な気候とのことだから今から蒔いても大丈夫だろう。
 メロンとスイカを含めてそれぞれ1畝ずつ種を蒔いてみたんだけど、みんなで蒔いたらからすぐに終わった。
 種を蒔き終わったら肥料だ。
 種を選んだときに液体肥料もあったので買っておいた。
 アルバンやトニに渡してあったジョウロに水をたっぷり入れたところに液体肥料の原液を混ぜる。
 それをみんなでかわるがわる畑にシャーっと掛けていった。
「あの甘~いのできるといいね~」
 メロンが大層気に入ったのがロッテちゃんがニコニコ顔でそう言った。
「そうだね。みんなちゃんと育ってくれるといいね」
 異世界パワーでちゃんと育ってくれればいいんだけどな。




以前感想に畑でもっていうのがあったので、面白そうだと思って書いてみましたw
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