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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第三百三十一話 【神薬 毛髪パワー】の販売方法とワイバーンのマント

「ランベルトさん、こんにちわ」
「おおムコーダさん、いらっしゃい」
 ちょうど店先に出ていたランベルトさんに挨拶をした。
 伯爵様に献上した【神薬 毛髪パワー】の件の話でランベルトさんの店を訪れた。
「実はお話ししたい件がありまして……」
「先日、伯爵様が来られたのと関係がある話ですかな?」
 さすがは商人。
 伯爵様と俺が会ったというのも把握してるんだろう。
「ええ。実は……」
 ランベルトさんに伯爵様と会ったときのことを話して聞かせた。
 もちろん【神薬 毛髪パワー】の効果も含めて。
「そんなことになっていたのですか……」
「ランベルトさんの名前勝手に出してしまってすみません。卸すとしたら、ランベルトさんの店しか考えられなかったもので」
 やっぱりお願いするとしたらランベルトさんしかいない。
 ある程度付き合いがあって信用できる商人って言ったらランベルトさんしか思い当たらないし。
「すごい効き目のようですが、やはり商人としては効果を確かめてからでないと何とも……」
 それは当然だろう。
 売るとなれば金が絡んでくる話だしね。
 そこはそういう話になるだろうなと思って、昨日の夜にシャンプーと【神薬 毛髪パワー】を用意して持ってきていた。
「それでは、シャンプーと育毛剤を置いていきますので効果の程を確かめてください」
「分かりました。おかげさまで私は薄毛で悩むことはありませんが、従業員の中にうってつけの者がおりますので、その者に試させましょう」
 ランベルトさんにはしっかりと使い方の説明をした。
「そうだ、ご注文のワイバーンのマントですが、あと数日でお渡しできると思いますよ。私も見ましたが、素晴らしい出来栄えです。職人自身もこれほどの出来栄えはそうそうないと申しておりました」
「ほ~、それは手にするのが楽しみですねぇ」
 ランベルトさんも作った職人さんも素晴らしい出来栄えと評するならば、さらに手にするのが楽しみになる。
「それと、鞘付きベルトと靴の方は出来上がってるのですが、お持ちになりますか?」
 そういやマントメインで考えてたし今のベルトと靴で不満もなかったからすっかり忘れてたけど、鞘付きベルトと靴も頼んでたんだった。
 どうせならマントと一式受け取った方が嬉しいかなと思って、そのようにしてもらう。
「それでは効果を確認し次第ご連絡しますので」
「よろしくお願いします」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ムコーダさん、ランベルト商会からの使いです。何でもすぐに店に来て欲しいそうです」
 フェルたちにせっつかれてちょうど狩りに行こうと思った矢先にテレーザからそう伝えられた。
 この間ランベルトさんの店に行ってから2日しか経ってないんだけど、ワイバーンのマントが出来たのかな?
 それにしちゃ、すぐっていうのもおかしな話だし……。
 ま、行ってみればわかるだろう。
 とにかくすぐに行かないといけないな。
「そういうわけだから、今日は狩りは中止だ」
『なぬ?!』
『何だってー?!』
『ええ~』
 これからという矢先だったものだから、フェルもドラちゃんもスイも不満そうだ。
「しょうがないだろ、すぐっていうんだから。明日連れて行ってやるから。何なら、冒険者ギルド行って適当な依頼がないかどうかも確認してみるしさ」
『むぅ、しょうがない。ランベルトと言うと、あの皮の店だろう?』
「ああ」
『すぐに連れて行ってやるから、それが終わったら冒険者ギルドで依頼がないか確認しろ。受けるなら、歯応えのある依頼だからな。そして、あるようだったらすぐに受けるのだ』
 ええ~、それって依頼確認して場合によっちゃすぐに出発するってことだろ?
『お、それいいな』
『ビュッビュッって戦えるの~?』
 ドラちゃんもスイもヤル気になっている。
 しょうがないな、もぅ……。
「分かったよ。とりあえず、ランベルトさんのところはすぐにって話だからそっちが先だ」
 俺はフェルの背に乗せてもらい、ドラちゃんとスイも一緒にランベルト商会へと向かった。


「お呼びたてしてすみません」
 店の前でランベルトさんが待っていた。
「いえいえ、何か急ぎのようですか?」
「ここでは何ですから、奥へどうぞ」
 ランベルトさんに連れられて、奥の部屋へと入った。
 イスに座り、メイドさんがお茶を出してくれた後にランベルトさんが話を切り出した。
「実はですね、ラングリッジ伯爵様から早馬で便りが届きまして……」
 ランベルトさんの話では、今、伯爵様は王都に向かう途中なんだそうだ。
 そういや社交界シーズンがどうとか言ってたな。
 それで、その道すがらベルトーネ子爵領で宿泊なさったそうなんだが……。
「ベルトーネ子爵様がラングリッジ伯爵様を見てそれはそれは驚かれたそうで。そして、ムコーダさんの育毛剤のことを少しお話したそうなのですが、是非とも欲しいと熱心に頼まれたそうなのです」
 そのベルトーネ子爵様とやらもハゲで悩んでたんだろうなぁ。
 【神薬 毛髪パワー】の効果を見たら、そりゃあ欲しくなるわな。
「ラングリッジ伯爵家の分としてとりあえず50本は確保せよとのことでした。それと、伯爵様のご紹介なしに育毛剤を販売しないようにとの仰せでした」
 伯爵様、分かります。
 【神薬 毛髪パワー】を貴族間のコネ作りに利用するんですね。
「私も伯爵様のご紹介による販売というのはいいと思います。ムコーダさんからいただいた育毛剤を従業員に試させてみましたが、その効果に驚きましたよ。使用してまだ2日だというのに、見違えましたからね。これだけ効果のあるものですから、私が売るなら1瓶で金貨50枚です。それでも安いと思われる方は多いと思いますよ。何せ、この効果を見れば、値段に関係なく喉から手が出るほど欲しいという方は多いでしょうからね」
 き、金貨50枚か……、1瓶で……。
 あれ、元値は銀貨3枚なんだけど。
 しかも、それを小瓶2つに分けて入れ替えてるし。
 スイ特製エリクサーは入れてるけど、1瓶にたったの1滴だよ。
 スイ特製エリクサーは元気ハツラツで有名な栄養ドリンクと同じくらいの瓶に入ってるから、1滴だと何本分になるんだ?
 わからんけど、1瓶でもけっこうな本数分になるんじゃないかと思うぞ。
 しかし、金貨50枚か……。
 薄毛・抜け毛の特効薬、恐るべし。
「安いと思われる方は多いと申しましても、値段が値段ですから、資産のある方向けということになりましょう。そのような場合は、伯爵様の言われるご紹介という販売方法は、確実なうえに然るべき方々へ伝わっていきますから良い方法だと思います」
 うん、金貨50枚は安くないよ。
 でも薄毛に悩むお貴族様とか商人さんがこぞって伯爵様の紹介を受けて買い求めるんだろうなぁ。
 販売方法の方はランベルトさんにお任せすることにした。
 ラングリッジ伯爵様への50本はご紹介分ということにもなるだろうから、そこは格安でお譲りするというランベルトさんの話だったので、その分は俺からの献上ということでタダにしておいた。
「ムコーダさん、よろしいのですか?」
「例の面倒ごとはすべて伯爵様が引き受けてくださいましたし、これくらいのこと安いもんですよ」
「それでは伯爵様にはムコーダ様のご提供だということをしっかりと伝えさせていただきます」
 その後、卸値についても話し合ったんだけど、何と1本金貨33枚と決まった。
 高過ぎやしないかと思ったんだけど、ランベルトさん曰く「伯爵様を通じてですが、いろいろと新しい伝手ができそうですので、うちとしては得しかありませんよ」とのこだった。
 ランベルトさんにはいろいろと世話になりっぱなしだ。
 前から思っていたけど、ここでお礼の品を渡すことにした。
「ランベルトさんにはいろいろをお世話になりっぱなしで。そのお礼と言っては何ですが、これ、是非受け取ってください」
 俺がアイテムボックスから出したのは、エイヴリングのダンジョンのドロップ品のレッドサーペントの皮のうちの1枚だ。
「こ、これは、レッドサーペントの皮ではないですかっ」
「はい、エイヴリングダンジョンのドロップ品です」
「ど、どうぞって、いやいやいや、ムコーダさんっ、レッドサーペントの皮など一生に一度手にできるかどうかの代物ですよ!」
「いいんですよ。ランベルトさんにはお世話になってますし、これからもお世話になりますってことで、どうぞ受け取ってください」
「ゴクリ…………。ほ、本当によろしいのですか?」
「はい。その代わりと言っては何ですが、これからもいろいろと相談に乗ってくださいね」
「そうれはもう」
 ランベルトさんの目がレッドサーペントの皮にくぎ付けだ。
「素晴らしい……」
 緊張気味にランベルトさんがレッドサーペントの皮を手に取った。
「ムコーダさん……、私はレッドサーペントの皮を手にするのが夢でした。このご恩は一生忘れません」
 ランベルトさん、そう言って涙目になってるよ。
 そこまで感動してくれるならやったかいがあるってもんだ。
 でも、それと同じのを俺がまだ持ってるってのは内緒だな。
「そうでした、あまりの感動で忘れるところでしたが、ご注文の品ができていますので今持ってこさせます」
 おお~、ついにワイバーンのマントが出来たか!
 メイドさんが、マント、鞘付きベルト、靴の一式を持ってきてテーブルの上に置いた。
「どうぞ、身に着けて具合を確かめてください。不都合な点があれば手直しいたしますので」
 ランベルトさんにそう言われて、早速身に着けてみた。
 ダークグレイの落ち着いた色合いのマントと鞘付きベルトと靴、どれも今身に着けたというのにいい感じに馴染んでいる。
 何より軽いのがいい。
「すごくイイです。体にも馴染んで違和感もありません。何より軽いのが気に入りました」
「気に入っていただけて良かったです。ワイバーンの皮は保温性・保湿性にも優れていますし水にも強いので、特にマントは雨の日には重宝しますよ」
 ほー、それはいい。
 今まではフェルの結界頼りの力業だったけど、土地によっては雨が多いところもあるみたいだから、そればかりに頼っていられなくなる場合もあるかもしれないとは思ってたんだ。
「これはこのまま身につけて帰ります。精算をお願いできますか」
 預かっていた木札をランベルトさんに差し出した。
 ワイバーンの皮の残りを支払いの一部にしてもらうことになっていたので、その残りを支払おうとすると……。
「いえ、お代はけっこうですよ」
「え?」
「こんな素晴らしいものをいただいておいて、お代などいただけませんよ。ハハハ」
 ランベルトさんが本当に大切そうにレッドサーペントの皮を抱いていた。
 いやいやそれとこれとは別だろうと思って、代金を支払おうとしたんだけど、ランベルトさんは一切受け取らなかった。
「それじゃ、また寄らせていただきますので」
「ムコーダさんならいつでも大歓迎ですよ」
 そう言ったランベルトさんはいい笑顔だったし、これはこれでいいんだろうと思うことにした。
 ランベルトさんの店を出た途端にフェルの念話が。
『よし、それじゃ終わったな。次は冒険者ギルドだ』
 あ~、そういう話だったなぁ。




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