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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第三百十二話 スイ特製エリクサー、再びの出番

 母屋のリビングに戻ってきたところで、アイヤに声をかけた。
「えーと、アイヤはまだ本調子じゃないんだよな?」
 そう聞くと、夫のトニがガバっと頭を下げた。
「何とか回復していますっ。どうか、どうか見放さないでください」
 息子のコスティ君と娘のセリヤちゃんも不安そうな顔で、アイヤさんの服を握っていた。
 何か悪い方に勘違いしてるみたいだな。
 まったくの見当違いだぞ。
 俺はあなたたちを買ったんだから今さら見放さないってば。
「いやいや、そういう話じゃなくってですね」
 面倒だ、鑑定してみた方が早いな。
 アイヤを鑑定してみると、どうも肺の病気のようだ。
 ステータスを見ても、完治はしていないみたいだな。
 今の状態は、借金こさえてまでやった治療が効いてはいて、病状は落ち着いているものの完治はしていないということのようだ。
 そういうことなら、間違いなくこれだな。
 俺がアイテムボックスから取り出したのは、スイ特製エリクサー(劣化版)だ。
 スイに作ってもらったはいいけど、ドランで出会ったダリルとイーリス兄妹に渡した以外はそのまま未使用で残ってたからな。
 2本ばかり手つかずで残っていた。
 小瓶に入ったスイ特製エリクサーをアイヤに渡した。
「それ飲んでください。それなら病気も治るから」
 俺からエリクサーを受け取ったアイヤが戸惑っている。
「あの、それはポーションですか? 私が見たものと少し色が違うようなのですが……」
 トニが心配そうにおずおずとそう聞いてくる。
 ま、女房が飲むんだし気にもなるか。
「それはですね、エリクサーですよ。どんな病気もそれ飲んだら一発で治ります」
 俺がそう言ったら、元冒険者の5人が5人とも「ブフォッ」って噴いた。
 汚いなぁ。
「いやいやいやいやいや、ムコーダさん、エ、エリクサーって、そんなの出したらダメでしょうっ」
 タバサが身を乗り出してそう言った。
「ムコーダさんはSランクの冒険者だし、ドランのダンジョンも踏破したって話だから持ってるんだろうけどよ、姉貴の言うとおり、こんなとこで出しちゃダメだろっ。何で奴隷にホイホイあげちゃうんだッ?!」
 ルークがタバサに続いてそう言った。
 ってか、俺がドランのダンジョン踏破したこと知ってたんだな。
「そ、そうだぞっ! それ1本でいくらすると思ってるんだよッ?! ここにいる奴隷を全員買ってもお釣りがくるぞ! そんな一攫千金のお宝を簡単に渡しちゃダメだろうがッ」
 アーヴィンがそう力説した。
「うむ、そうだぞっ! エリクサーと聞けば、どんなに金を積もうとも欲しがる金持ちがたんまりいるわいっ」
 バルテルまで焦った口調でそう言った。
 ペーターは先の4人の言葉にウンウンと何度も何度も頷いている。
 いや、俺だってダンジョンから出たようなものならこうホイホイとは出さないよ。
 だけど、これはさ……。
「いや、これはエリクサーはエリクサーでも劣化版だし。病気とかケガは治るけど、寿命は延びないぞ。それに自前で用意したものだから、ダンジョン産ってわけじゃないし」
 そう言ったら5人とも唖然としていた。
「じ、自前?」
「…………なぁ、エリクサーって自分で作れるもんなのか?」
「確か、昔出会ったエルフに聞いたことがある。レシピはあるのじゃが、材料が材料だからまず無理だろうと言っておったな」
 最年長でもあるバルテルがそう言うと、元冒険者たちがゴクリとのどを鳴らした。
「で、その材料って何なんだ?」
「ドラゴンの肝とか血とかを使うらしいぞ。その他にも貴重な素材をたんまり使うんじゃと言っておったな」
 ………………。
 5人とも無言にならないでほしいな。
「ま、まぁ、作り方はさておき、俺にとってはまったく手に入らないってもんでもないんだよ。だからアイヤに使うんだ。ささ、グッと飲んじゃってください」
 5人が呆然としている間に、さっさと飲んじゃいなよ。
 トニ一家が泣きながら「ありがとうございます」って言ってるよ。
 分かったから、トニさん拝まないで。
 コスティ君もセリヤちゃんも泣きながら「一生懸命働きます」って、君たちは子どもだからお手伝い程度でいいから。
「えーっと、アイヤ、早く飲んじゃってくれるかな」
 そう言うと、アイヤが深々と頭を下げた後にスイ特製エリクサーをゴクゴクっと飲んだ。
 飲み干した直後にアイヤの体が白く光った。
 突然のことにみんな驚いたが、その光はすぐに収まった。
 トニ一家も一連のやり取りを黙って見ていたアルバン一家も呆然としていた元冒険者5人も、目を見開いて驚いている。
 俺もエリクサーを飲んだ人を直接見たのは初めてだったから驚いたし、焦ったぜ。
「だ、大丈夫か?」
 すぐさまアイヤに声をかけると、アイヤは泣きながら笑っていた。
「大丈夫ですっ……。息苦しくて、ずっとダルかった体が、今は、今は何ともないんですっ!」
 そのアイヤの言葉を聞いて、トニ一家が抱き合って喜んでいた。
 えかったなぁ~。
 それを中断させるほど俺も無粋じゃないよ。
 アイヤを見る限り、大丈夫そうだな。
 顔色も良くなったし。
 試しに鑑定してみたら、病気もなくなっていた。
 よっしゃ!
 さすがスイ特製エリクサーだ。
 効き目抜群だぜ。
 さて、トニ一家も落ち着いたようだし、次はロッテちゃんが楽しみにしている飯だな。
 アホの双子が「ホントに奴隷にエリクサー使いやがったぜ」とか「あれ1本で一生遊んで暮らせるってのに、アホだな」とかコソコソ言っている。
 お前ら、主人に向かってアホはないだろ。
 聞こえていないつもりなんだろうけど、全部聞こえてるからね。
 ってか、内緒話はもう少し小さい声でするのが基本だろうが。
 アホの双子がアホ過ぎて怒る気にもなれなかったよ。
 ハァ~。




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