第二百九十五話 エイヴリングのダンジョンのドロップ品、どうする?
森に着くと、フェルとドラちゃんとスイが意気揚々と狩りへと出かけて行った。
フェルにマジックバッグ(特大)を預けてあるから、まぁ大丈夫だろう。
その間俺はというと……。
「解体の復習だな。何がいいかな……。まだ解体してない魔物がけっこうあるんだよな。コカトリスにレッドボアはもちろん、ドランに来る前にフェルたちが獲ってきたやつも……」
アイテムボックスの中を確認していく。
ワイバーン、絶対に無理。
ワイルドバイソン、これもちょっとデカ過ぎて無理かな。
ゴールデンシープ、これは金色の毛が素材として価値がありそうだから、奇麗な状態で毛を刈れないなら手を出すべきじゃなさそうだ。
ジャイアントホーンボア、軽トラサイズのデカい猪なんて1人で解体できるわけないやん。
ロックバード、まぁデカいけどこれならなんとかなりそうではある。
となると、コカトリスかレッドボアかロックバードのどれか。
「よし、ロックバードにしよう。コカトリスとレッドボアはエルランドさんに教わりながら出来たし、新しい魔物に挑戦だ」
羽をむしって、ヴァンパイアナイフをズブっと刺してと。
もちろん素材として売れそうな羽などはちゃんと回収してアイテムボックスへ。
鳥系の魔物コカトリスの解体を思い出しながらミスリルのナイフを振るった。
「ふぅ、こんなもんかな」
少し切り方が粗いかなという部分もあるにはあるが、概ね上手くいった。
内臓は鑑定した結果、食えないことはないけどマズいということだった。
残念。
そうこうしているうちに、フェルたちも戻ってきた。
「お帰り。今日は早かったな」
まだ陽も高いうちに帰ってくるなんて珍しい。
『うむ。この辺はあまりいい獲物がいなかったからな』
「あー、ドランはダンジョン都市だし、冒険者が多いからじゃないかな。冒険者だってずっとダンジョン潜ってるわけじゃないだろうし」
冒険者が多いっていうことは、魔物もそこそこ狩られてるってことだろうしな。
とは言っても、フェルたちが何も狩ってこないはずないよな。
マジックバッグの中を確認すると……。
藍色の毛並みの牛が出てくるわ出てくるわ。
大きさはそうでもないけど、角があって黒毛和牛そっくりでその黒毛を藍色にした感じの牛だ。
鑑定してみたら、Cランクの魔物でブルーブルと出た。
「いい得物がいなかったって割にすごい数だな」
『うむ。ブルーブルの群れに出会ったからな。数だけは多い』
『スイねー、青い牛さんにビュッビュッってしていっぱいたおしたのー』
『こいつらはほぼスイが倒してたよなー。俺はデカい鳥をみつけたから、それ獲ったぜ』
ドラちゃんの言ってるデカい鳥ってのはこれか。
2メートルくらいあるドデカい七面鳥が姿を現した。
鑑定すると、これはBランクのジャイアントターキー。
結局マジックバッグの中からは、ブルーブル×38、ジャイアントターキー×4も出てきた。
「何だかんだ言ってけっこうな数あったな」
『まあな』
これで解体してない魔物もかなりの数になってきたし、明日冒険者ギルドで解体してもらうとするか。
牛系の魔物肉も欲しいところだったしね。
自分で解体ができるようになったとはいえ、1人で解体するには限りがあるからな。
やっぱりまとめてお願いするなら、冒険者ギルドにお願いするのが一番だ。
ブルーブルとジャイアントターキーをアイテムボックスに放り込みながら、さっきアイテムボックスの中身を確認していて気付いたことを思い出していた。
エイヴリングのダンジョンのドロップ品の闇玉とか武器防具の素材になるものをドランで買取とかエルランドさん言ってたんだけど、その話が出なかったもんだからアイテムボックスに残ったままなんだよな。
どうすんだろ?
俺としちゃどっちでもいいけど、明日冒険者ギルドに行ったときに聞いてみるか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
次の日、冒険者ギルドに行くと、すぐに2階に案内された。
エルランドさんもウゴールさんも疲れた顔をしてたよ。
「あれ、どうしました?」
「ウゴールさん、仕事の邪魔してすみません。実は……」
エルランドさんが、エイヴリングのダンジョンのドロップ品のいくつかをドランでも買取る話をしていた旨伝えた。
「馬鹿マスター、何でそういう大切な話をすぐにしないんですか?」
「そんなこと言ったって、着いたらすぐにウゴール君が僕を拉致監禁したんじゃないか。それからは仕事漬けでドロップ品のことはすっかり忘れちゃってたんだよ」
「馬鹿マスター、物騒なことは言わないでください。こうしてここに詰めているのは、誰でもないあなたが仕事をほったらかして遊びほうけていたつけなんですから」
「ぐぬぬ……」
エルランドさん、ウゴールさんに逆らっても勝てないって。
「それで、エイヴリングのダンジョンのドロップ品はどんなものが?」
「はい、こんな感じです」
俺は残っているリストを見せた。
「エルランドさんの話では、この闇玉と武器防具になるような素材という話だったんですが」
リストを差しながら俺がそう言うと、エルランドさんが闇玉の有用性をウゴールさんに説明した。
「というわけで、けっこういい値段で売れると思うんだよね」
「なるほど。確かに話を聞くと、ここぞというときに有用そうですね。それを前面に説明して売れば、けっこう買い手はいるかもしれませんね」
しばしリストを見たあとにウゴールさんが買取りたいと言ってきたのは、ヴェノムタランチュラの毒袋、ヴェノムタランチュラ(特殊個体)の毒袋、キラーキャメルクリケットの麻痺毒、ジャイアントキラーキャメルクリケットの麻痺毒、ジャイアントコックローチの麻痺毒、ギガントコックローチの外殻、ギガントコックローチの鉤爪、闇玉、ビッグブロンズイグアナ(特殊個体)の皮のすべてだった。
毒ばっかり多すぎやしないかと思ったら、特に麻痺毒は冒険者からの需要も割と多いそうで、ウゴールさん曰く資金に余裕がある今こそ多めに買取したい品なんだそうだ。
考えてみると、ここぞというときに麻痺させて止めを刺すってやり方もあるだろうし、冒険者なら持ってても損はないアイテムかもしれない。
俺は必要ないけども。
「それでは、すぐに買取代金を用意しますので」
「あ、ちょっと解体してもらいたいものもあるので、それと一緒でもいいですか?」
「それでは、倉庫の方へ行きましょうか。そこで、さきほどの買取の品も出してもらうということで」
「ウゴール君、僕もっ」
「なりません。あなたはここでしっかり仕事をしていてください。サボったら大変なことになりますからね」
「さ、ムコーダさん、行きましょう」
おう、さすがウゴールさん。
ウゴールさんの前では、元Sランク冒険者でギルドマスターのエルランドさんも形無しだね。
「それでは、明日の昼過ぎに」
「ええ。そのときまでにはこちらの解体の分と合わせて買取代金を用意しておきます」
解体をお願いしたのは、ワイバーン×2、ワイルドバイソン×2、ゴールデンシープ×3、ブルーブル×7、ジャイアントターキー×1だ。
ちょっと多いかなと思ったけど、ドランは解体専門の職員も多いし、ウゴールさんに聞いてみたら問題ないってことだったからお願いしちゃったよ。
これで手持ちの肉と合わせたら、しばらくは保つかな。
それにいろんな種類の肉がそろったから、いろいろ楽しめそうだ。
さてと……。
「なぁ、本当に行くのか?」
『もちろんだ』
『あったりまえだろー』
『ダンジョンー』
やっぱりダンジョンに潜ることになった。
ちょろっと森に行ったくらいじゃ、フェルもドラちゃんもスイも満足しなかった。
「そうは言うけど、そんな下の階層までは潜らないからな。行ってもフィールドダンジョンの手前までだ。せっかく良い家借りてるんだし、明日中には地上に戻ってくるからな。いいか」
『うむ』
『分かったって』
『ダンジョン、ダンジョン』
本当に分かってるのかよ……。
とは言っても、潜る気満々のみんなを止めるすべはないし、しょうがない行きますか。