第二百八十九話 ウゴールさん激激激おこ
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
新年一発目なんとか4日中にと思ってたので、ギリギリ間に合ってよかったです(汗)
久しぶりのドランの冒険者ギルド。
「ただいま~」
エルランドさんののん気な声が響いた。
あ、エルランドさんを見た職員の人が走っていった。
ウゴールさんを呼びにいったんだろうな。
少しすると、バタバタと急ぎ足でウゴールさんがやってきた。
「あ、ウゴール君ただいま」
「…………ただいまじゃありませんよっ! このアホーーーーーッ!!!」
ウゴールさんの怒鳴り声が冒険者ギルドに響き渡った。
偶然居合わせたムキムキマッチョな冒険者たちまでビクッとしてる。
「あれほど王都で用件を済ませたら、すぐに帰って来てくださいって言ったじゃありませんかっ! それなのにっ、それなのに何でエイヴリングでダンジョンに潜ってるんですかッ! もうっ、もうっ、本当にあなたって人はーーーッ!!」
ウゴールさん、激おこ、いや激激激おこだな。
「い、いやね、帰ろうかなぁって思ってたときにさ、ムコーダさんがエイヴリングのダンジョンに向かうって話を聞いて、私も是非ご一緒したいなぁなんて思ってね……」
激オコなウゴールさんに、エルランドさんもタジタジだ。
「ムコーダさんがエイヴリングに行かれるからって何なんですか? なぜあなたまで行く必要があるんですか? ただあなたが行きたかったってだけじゃないですかっ」
「い、いや、で、でもさ、ムコーダさんの従魔、ピクシードラゴンなんだよ。そのピクシードラゴンのドラちゃんと冒険できる機会を、ドラゴン好きの私としては逃せないわけで……」
エルランドさん、その返答はどうかと思うぞ。
火に油を注ぐだけだと思うんだけど……。
「あなたって人はっ……。馬鹿だ馬鹿だとは思っていましたが、本当に馬鹿な人ですねっ!」
ドラゴンと冒険したかったからなんて言われちゃ、そりゃウゴールさんも怒るってもんだよ。
「ウ、ウゴール君、馬鹿馬鹿ってちょっと言い過ぎじゃないかな?」
「馬鹿に馬鹿と言って何が悪いんですかッ!!!」
うひゃっ。
エ、エルランドさん、今は口出しちゃダメだよ。
今回は明らかにエルランドさんの方が悪いんだから。
「私、何度も何度も言いましたよね? 今はとんでもなく忙しいから、用件が済んだら即帰ってくるようにって。それこそしつこいくらいに言いましたよね」
「そ、それは……」
「聞かなかったとは言わせませんよっ! 大体ですねっ、あなたは……」
ウゴールさんもだんだんエキサイトしてきてるね。
ここはとばっちりを受けないうちに早々に退散した方がいいだろうな。
『おい、フェル、ドラちゃん、退散するぞ』
念話でフェルとドラちゃんに伝える。
ちなみにスイは冒険者ギルドに入って早々に革鞄に避難している。
『う、うむ、そうだな』
『あ、ああ。さっさとこっから出ようぜ』
俺たちはそっと冒険者ギルドを退散した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「無事出てこられて良かったな」
『うむ。何だかわからんが、あのエルフの男、相当怒られてたな』
『あいつウザいからな。いい気味だ』
ドラちゃん何気にひどいよ。
「今から商人ギルドに行こうと思う。ここでも一軒家を借りようと思ってるからな。みんなも広い方がいいだろ?」
『うむ。広い方がいいな』
『俺も広い方がいいぜ。もちろん風呂もないとダメだからな』
もちろん風呂付の所を借りるよ。
ドラちゃんはすっかり風呂に魅了されてるね。
「大きい風呂付でな。フェルもしばらく風呂入ってないし、借りたら入るからな」
『む、風呂か。別に汚れてはないから入らなくても大丈夫だぞ』
「そんなことはないよ。ダンジョンにも潜ったし、旅もしてるんだから。小さい埃やら砂利やらがいっぱい付いてるはず。本当はダンジョンから出たときに入ってもらいたかったけど、宿の風呂は小さかったからな。ここでは大きな風呂付の一軒家借りてしっかり洗うからな」
『ぬぅぅぅ』
フェルたちと話しているうちに商人ギルドに着いた。
今回は紹介状がないけど、俺も一応商人ギルドのギルドカードを持ってるし、いろいろあったものの、いざとなればここの商人ギルドのギルドマスターのアドリアーノさんとは顔見知りだから何とかなるだろう。
とりあえず商人ギルドの窓口へ向かった。
「すみません、えーとですね……」
受付嬢に、俺の後ろに控えるフェルとドラちゃんを見せながら、みんなで一緒に泊まれる一軒家を1週間程度借りたい旨伝えた。
信用を得るために、冒険者ギルドの金ピカのSランクのギルドカードと商人ギルドのアイアンランクのカードも見せる。
「エ、Sランクの冒険者ムコーダ様ですね。商人ギルドにも登録なさってるのですね。少々お待ちください」
上ずった声でそう言った受付嬢が、席を離れていった。
金ピカのカードは出さない方が良かったか?
でも、一軒家となるとそれなりに金もかかるし、一応金は持ってるんだぞっての示さないと貸してくれなさそうだからな。
少し待っていると、受付嬢がギルドマスターのアドリアーノさんと40前後の中肉中背の男性職員を連れてやってきた。
「ムコーダさん、お久しぶりです」
「お久しぶりです、アドリアーノさん」
「聞きましたよ。エイヴリングのダンジョンも踏破されたと」
「ええ、まぁ一応」
商人ギルドのギルドマスターだけに、さすがに耳が早いね。
「ドロップ品やらで宝石などがありましたら、是非ともまた買取させていただければありがたいのですが」
「エイヴリングのダンジョンから出た宝石類はすべてエイヴリングで買い取ってもらったんです」
残念、宝石類は全部買取になったんだよね。
「そうなんですね、残念です。従魔と泊まれる一軒家をお探しでしたね。こちらが不動産部門を統括しておりますニコライです。何なりとお申し付けください」
アドリアーノさんから不動産部門を統括するニコライさんを紹介された。
「こちらの希望としては、フェルでもゆったり出入りできて風呂が大きい一軒家がいいのですが」
ニコライさんに希望を伝えると、3つの物件を紹介された。
1つ目の物件は、8LDKで庭もそこそこ広い、元は貴族の持ち物だった物件だ。
2つ目の物件は、9LDKで庭も広いが少し古い建物で、これも元は貴族の持ち物だった物件。
3つ目の物件は、7LDKで庭がちょっと狭いが街の中心部に近い、これは元は商人の持ち物だった物件だ。
3つとも実際に見せてもらった結果、1つ目の物件を借りることにした。
建物も比較的新しくキレイだし、フェルも余裕で出入りできた。
何よりも風呂が広くて素晴らしかった。
さすが元貴族の持ち物だね。
賃料は1週間で金貨78枚。
俺はニコライさんに賃料を支払い、鍵を受け取った。
「赤竜の解体は明日お願いすることにして、あとはやることもないしゆっくりしますかねぇ」
『おい、夕飯は約束通り亀の肉だからな』
すかさずドラちゃんの念話が。
「はいはい、分かってるって」
『亀の肉か、いいな』
あ、これは大量にスッポン鍋用意しないとダメだな。
その日の夕飯は当然スッポン鍋。
久々とあってみんなもりもり食ってたぜ。