挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
256/373

第二百四十三話 芋虫と毛虫

 通路を進んで行くと、ホワイトキャタピラーが3匹通路を塞いでいた。
『俺がやるぜっ!』
 ドスッ、ドスッ、ドスッ―――。
 ドラちゃんが放った氷魔法の先の尖った氷の柱がホワイトキャタピラーを上から串刺しにしていった。
「ミギュアァァァ」
「ピギィィィ」
「ギュイィィィ」
 ホワイトキャタピラーがドロッとした体液をまき散らしながら甲高い叫び声を上げて息絶えた。
 その後には薄いベージュ色の糸の束が残っていた。
 パチパチパチパチパチッ。
 手を叩く音に隣を見ると、エルランドさんが頬を赤らめながらドラちゃんを見て拍手をしていた。
 エルランドさん……。
 この人、9階では大人しかったけど、ドラちゃんに嫌われないよう我慢してたのか。
 それがだんだん抑えられなくなってきたと。
「ゴホンッ、あ、ドロップ品がありますね。あれはホワイトキャタピラーの糸です。このダンジョンで取れる物は質が良いので特に人気なんですよ」
 拍手をしていたエルランドさんをジトーッと見ていたら、誤魔化すようにそう言われた。
 何だかなぁ、この人。
 ま、無理矢理ドラちゃんを捕まえたりってことはしないから大丈夫だとは思うけどさ。
 それに、元Sランクの冒険者のエルランドさんの薀蓄(うんちく)は勉強になるしね。
 このホワイトキャタピラーの糸も人気ということは、それなりに需要があるんだろう。
 需要があるってことは、それなりの値段で買取してるはずだ。
 8階層と10階から12階層辺りに冒険者が多いっていうのは、需要があるものがドロップされるっていうのもあるかもしれないな。
「10階で出てくるホワイトキャタピラーとグレイキャタピラーは動きは遅いんですが、前に言った通り接近すると吐き出す糸や毛で攻撃されますからね。遠距離攻撃の出来る者がいないパーティーはかなり苦戦する場所ではあるんですよ。私たちは遠距離攻撃もバッチリですから苦も無く進めますけどね」
 なるほど、ここはデカい芋虫と毛虫の階層か。
 近付かなければOKってことだな。
 でも、まかり間違って粘性の糸に絡め取られたり、毛の攻撃で痺れて動けなくなったときってどうなるんだ?
「あの、ホワイトキャタピラーやグレイキャタピラーの攻撃で動けなくなったときってどうなるんですか?」
「通常は仲間が助けるのですが、それも間に合わなかったりソロだったりした場合は……生きたまま食われますね」
 げっ……。
 ホワイトキャタピラーとグレイキャタピラーってけっこうえげつないな。
 生きたまま食われるなんて最悪過ぎるぞ。
 芋虫にも毛虫にもあまり近付かないようにしよう。
 そのためには遠距離攻撃か……。
 俺もないわけじゃないんだけど、このメンバーの中じゃ一番ショボいな。
 しかし、そうも言ってられん。
 次は久々に火魔法で攻撃してみるか。
 通路を進み、エンカウントしたのは灰色の毛虫、グレイキャタピラーだ。
 そのグレイキャタピラーは通路を塞ぐようにモゾモゾと動いていた。
『スイが倒すー』
 そう言ってスイが酸弾を撃とうとしたが、すんでで止めた。
『ちょっと待って! スイ、俺が魔法で倒したいから、譲ってくれるかな?』
『えー、スイが倒したいー』
『ごめん。俺もここでちょっと魔法使っておきたいんだ。次の魔物をスイが倒してくれるかな』
『んー、分かったー。でも、次はスイが倒すからねー』
 よし、何とかスイも了解してくれた。
「ファイヤーボール!」
 直径30センチ大の火の玉(ファイヤーボール)がビュンっとグレイキャタピラーに向かって飛んでいく。
 ドガンッ―――。
「ミギュアァァァ」
 俺の放ったファイヤーボールは、グレイキャタピラーの土手っ腹にぶち当たり爆ぜて下半身を吹き飛ばした。
 肉片を撒き散らしビクビク動いていたが、すぐに息絶えた。
「よしっ」
 俺も火魔法も少しは役に立つな。
 その後、ダンジョンルールにのっとって他の冒険者たちを邪魔しないよう通路を進み、エンカウントしたホワイトキャタピラーやグレイキャタピラーはドラちゃんとスイが中心になってサクッと倒していった。
 フェルは『雑魚はお主たちでやれ』とドラちゃんとスイに丸投げだ。
 それでも罠があるときはちゃんと注意してくれたから、ありがたかったけどね。
 落とし穴の罠があって、フェルが教えてくれたから落ちずに済んだけど、穴の底に剣山みたいな針が敷き詰められてたのを見たときは肝を冷やしたよ。
 エルランドさんはドラちゃんが魔物を倒すたびに拍手したり「すごい!」とか「さすが!」とか熱視線を送りながら応援してたよ。
 この人のドラゴン愛は止まらないだろうと放っておいた。
 ただスイがその分ちょっとスネちゃってさ。
『むー、スイだって倒してるのにー』
 そうこぼしてたよ。
 俺がその分褒めてやったら機嫌直したけど。
 エルランドさんについては、『あのエルフのおじちゃんはね、ドラゴンが大好きな変わった人なんだよ。だからドラちゃんばっかり応援するんだ。俺はスイがすごいのは分かってるからね、気にしちゃダメだよ』って教えておいた。
 スイは『そうなのかぁ』って分かったような分かってないような感じだったけど。
 ドラちゃんとスイの目覚ましい働きで、この階では俺とエルランドさんの出番はほとんどなくドロップ品拾いに徹したよ。
 エルランドさんはしきりに「みなさんすごいですけど、特にドラちゃんがすごいです! こんなに苦もなく進めるダンジョンは初めてですよ」とべた褒めだった。
 まぁ、ドランのダンジョンでもこうだったんで。
 うちの子たちがいれば大抵のことは大丈夫な気はするよな。
 ちなみにグレイキャタピラーのドロップ品はグレイキャタピラーの糸と小瓶に入った痺れ薬だ。
 グレイキャタピラーの糸は灰色の毛虫から出たものとは想像できないほど真っ白な糸で、その糸を使った純白のドレスは貴族のお嬢様方にも人気なのだとか。
 もう1つの痺れ薬は、弓士が矢じりに付けて使うことが多く、弓士が持っておくべき品の1つになっているそうだ。
 そうこうしているうちに、10階のボス部屋の前に到着。
 運の良いことに、先行している冒険者はいなかった。
 ボス部屋には、ホワイトキャタピラーとグレイキャタピラーが部屋の半分近くを埋めつくしモゾモゾ動いていた。
『んじゃ、行っくぜー!』
『あっ、スイもやるー』
 そう言って止める間もなくドラちゃんとスイがボス部屋に突っ込んで行った。
 ボス部屋にいたホワイトキャタピラーとグレイキャタピラーは、ドラちゃんとスイが突っ込んで行ってからあっという間に数を減らしていき、全部が消えるまでに5分とかからなかった。
 ホワイトキャタピラーとグレイキャタピラーが大量にいたボス部屋にはけっこうな数のドロップ品が残されていた。
 そのドロップ品を1つ残らず回収して、俺たちは部屋の奥にあった階段を下りて11階へと向かった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ