第二百三十一話 エイヴリングのダンジョンの構成
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ギルドマスターの部屋に入ると、俺とナディヤさんはテーブルを挟んでイスに座った。
「あんた、本当にフェンリルを従魔にしているんだねぇ。聞いてはいたけど、実際に見るまでは半信半疑だったよ」
まぁ、そうなんだろうね。
なんかずっと一緒にいるから忘れがちだけど、世間では伝説の魔獣って言われてるもんな。
「マルクスから話は回って来てるけど、滞ってる高ランクの依頼も受けてくれるんだって?」
「はい、一応は……」
「あいにくだけど、この街はダンジョンの街だからね。冒険者は腐るほど集まってんだよ。だから今のとこ滞ってる案件はないよ」
確かに、ダンジョン目当てで冒険者はいくらでもいるもんね。
その中で高ランクの依頼を冒険者ギルドから直接冒険者を指名して依頼すれば滞ることもないだろうね。
ドランも冒険者が集まってたから滞ってる依頼はなかったもんな。
「そもそも、ダンジョン目当てでこの街にきたんだろ? ダンジョンにはいつから潜るんだい?」
「えーっと準備ができ次第潜ろうと思ってます」
「そうかい。ドランのダンジョンを踏破したことは聞いてるよ。ここのダンジョンも200年振りに踏破されんの期待してるからね」
そうなればいいんですけど。
って、いろいろダンジョンのこと聞いておかないと。
「あのですね、ここのダンジョンに潜るのは初めてなので、いろいろお聞きしたいんですが……」
「ああ、いいよ。ここのダンジョンはね27階層からなるんだ。今、1番先行している冒険者は17階層だって報告を受けている」
17階層?
随分浅いというか、一度踏破されているダンジョンなんだし、もっと下の階層まで行っててもいいような気がするんだけど。
「随分進んでないって思っただろ。実際そうなんだからしょうがないんだけどね。あんた、このダンジョンにアンデッドの階層があんのは知ってるのかい?」
「はい、聞いてます」
「18階がそのアンデッドの階層なんだよ。何と言ってもアンデッドはやっかいだからね。だから17階層で止めて、その先へ行こうとしないんだよ」
ナディヤさんの話によると、ここエイヴリングのダンジョンの構成は簡単に言うとこんな感じだ。
1~3階……ビッグラット、ジャイアントバット。ネズミとコウモリのモンスターで冒険者なりたてでも倒せる雑魚。
4~8階……ゴブリン、コボルト。下の階に行くほどボス部屋に上位種が出るがキングが出たことはない。
9階……アンデッド階層。ゾンビとスケルトンが出る。ボス部屋にはスケルトンの上位種であるスケルトンウォーリアが3体。稀にその上の上位種が出ることが確認されている。
10階~17階……昆虫ゾーン。下の階に行くほど、デカくなり数も増えていく。しかも毒持ちのモンスターも混じってくる。
18階……アンデッド階層。ゾンビ、ゾンビの上位種グール(ゾンビよりも動きが早いらしい)、スケルトン、スケルトンウォーリア、スケルトンメイジ、レイスが出る。ボス部屋にはスケルトンの上位種、スケルトンナイトが5体。稀にその上の上位種が出ることが確認されている。
19階~25階……爬虫類ゾーン。その名のとおりヘビやらトカゲやらカメやらの爬虫類系のモンスターがわんさか出てくる。昆虫ゾーンと同じく下の階に行くほどデカくなり数も増え、毒持ちも混じってくる。このゾーンの終盤24、25階あたりはすべて毒持ちとのこと。
26階……アンデッド階層。グール、マミー(動くミイラだな)、スケルトンウォーリア、スケルトンメイジ、スケルトンナイト、レイス、リッチ(レイスの上位種で魔法を使うらしい)が確認されている。ボス部屋はそれらの上位種が出ると予想される。
27階……ダンジョンボスのヒュドラ。
「10階以降は罠もあるから注意だね」
なるほどね。
なんか話聞いてると、アンデッド階層がひどいような……。
9階はまだ分かるけど、18階と26階が特にひどい。
ほとんど攻撃が効かないアンデッドなのに、上位種もけっこう出てくる。
こりゃみんな行きたがらないの分かるわ。
26階のボス部屋なんて上位種が出ると予想されてるって何が出てくるか分かったもんじゃないぞ。
ナディヤさん曰く、23階以降は200年近く前にここのダンジョンを踏破した冒険者から聞き取った古い資料しかなくて、正直なところはっきりしたことは分からないんだそうだ。
「18階層がアンデッドの階層って分かってるからね、高ランクの冒険者も17階までしか下りないんだよ」
そう言ってナディヤさんも苦い顔をしている。
話を聞く限り、17階層までで十分な実入りがあるみたいだし、そうなりゃ無理してまで18階には進まないわな。
命あっての物種だしね。
このダンジョンは8階層と10階から12階層辺りに冒険者が多いみたいだ。
9階のアンデッドはCランク辺りの冒険者なら抜けられるそうだ。
その辺に不安がある冒険者は、9階に進まず8階層までで探索を続けるようだ。
8階層まででもそこそこの実入りはあるらしい。
話を聞いて思ったのは、このダンジョンに潜るには、ドランのダンジョンよりさらにしっかり準備していかないとということだ。
だって、これじゃ肉のドロップは全く期待できないからな。
飯の準備は念入りにしていこう。
マップはどうなっているのか聞いてみると、12階層まではある程度の精度のマップがあって冒険者ギルドの窓口とダンジョン近くの出張所で売っているそうだ。
マップを買うかどうかは別として、まずは今日の寝床確保だな。
みんなは明日にでもダンジョンに潜りたいって言うだろうけど、俺としては飯の準備に少なくとも明日1日は充てたい。
だからダンジョンに潜るのは明後日からを考えている。
そうなると、今までみたいに家を借りるのはちょっともったいないからな。
ダンジョンから戻ったら家を借りることにしてもいいけど、ダンジョンに潜るまでの間は宿に泊まるのがいいだろう。
「あの、教えていただきたいんですけど、この街で従魔と泊まれる宿でおすすめのところありますか?」
「それならここの隣にある冒険者ギルド運営の宿がいいぞ。去年ここを建て替えるときに冒険者向けの宿も併設したんだよ。あんたみたいな高ランク冒険者向けの部屋もあるし、その中に従魔同伴で泊まれる部屋があるぞ。ちょっと高いがな。まぁ、それでも同じくらいの他の宿に泊まるよりかは安いぞ」
おお、そんなのあるのか。
よし、そこに泊まろう。
「それではそちらに泊まらせていただくことにします」
「そうかい。それじゃ直々にあたしが案内してやるとするかね」
「え、ギルドマスター自らそんなことしなくてもいいですよ。1人で行きますから」
「何言ってんだい。あたしはあんたに期待してるんだから、これくらいのことはするさ。付いてきな」
俺は再びナディヤさんに引きずられることとなった。




