第二百二話 海の街ベルレアンに到着
翌朝、朝飯を食い終わった後に俺たちは1週間世話になった豪邸を後にした。
ちなみに朝飯は作り置きしておいたコカトリスの鶏そぼろで作った鶏そぼろ丼にしたよ。
飯の上に鶏そぼろと卵そぼろを載せて丼にしたんだけど、ドラちゃんとスイは美味いって言ってくれたけど、フェルは肉が少ないしあっさりし過ぎて不満だったようでブーブー言ってたよ。
その割に何度もおかわりしてたんだけどさ。
朝飯ならこれくらいがちょうどいいよな。
俺的には美味い朝飯だった。
まずは商業ギルドに行って、豪邸の鍵を返却した。
ちょっと早過ぎたかなと思いつつ向かったんだけど、時は金なりで商業ギルドは朝も早くから仕事を開始していたよ。
それから冒険者ギルドに向かった。
俺たちが冒険者ギルドに入ると、すぐにヨーランさんがやって来た。
「昨日のオークの肉は用意してあるぞい」
倉庫に向かいお願いしてあったオーク15匹分の肉を受け取った。
「この後はすぐにベルレアンに向かうのか?」
「はい。そのつもりです」
「そうか。本当に世話になったのう」
「いえいえ。こちらこそお世話になりました」
「また機会があったらこの街にも寄ってくれると嬉しいぞい」
「ええ。機会があれば是非とも」
「ベルレアンのギルドマスターには連絡を入れておくから、あちらの街でもよろしく頼むからのう」
「はい」
こうして俺たちはネイホフの街を後にして、海の街ベルレアンに向け出発した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ネイホフの街を出てから6日が経つ。
旅は順調に進んでいた。
俺も旅にだいぶ慣れてきたのもあって、フェルに頼んで少しスピードを上げてもらっている。
それもあってかなり速いペースで進み、フェルの話だと明日の昼頃にはベルレアンに到着するとのことだった。
『こうして進むだけなのも暇だな』
『確かになぁ』
俺を背中に乗せながら走るフェルがボヤくと、隣で飛んでいるドラちゃんも同意する。
スイはというと、いつものように革鞄の中でスヤスヤ寝ていた。
「フェルもドラちゃんも何言ってんだよ、順調に旅が進んでいいじゃないか」
『それはそうなんだが、こう走っているだけというのもつまらん』
『そうそう。手頃な魔物でも襲ってきてくれるといいんだけどよ、俺とフェルがいるからなぁ。余程の強さがなきゃ、手を出してくるってこともねぇからな』
やっぱりそうなんだ。
野生の勘ってやつなのか強者は分かるんだろうね。
フェルたちと旅してると、あんまり魔物見ないし襲って来ないもんな。
俺にとってはありがたいことだけど、フェルたちにとっちゃ不満らしい。
『うむ。それに気配を探ってもたいしたものはいないからな……ん?』
「フェル、どうした?」
『これはトロールか。はぐれトロールが街道に向かっているな』
トロールが出たのか?
ダンジョンでしか見たことないけど、やっぱり普通にいるんだな。
あのデッカイ魔物。
『トロールか。あいつはバカだからなぁ。俺たちがいても考えなしに襲ってくるってのも分かるぜ。狩るにしては微妙だけど、行ってくるぜ』
そう言ってドラちゃんが飛んで行ってしまう。
『おい、ズルいぞドラッ! 我も運動不足気味なのだ、我がやるぞ!』
「お、おいっ、フェル!」
フェルがそう言って俺を乗せたまま速度を上げて駆けて行く。
「グォォォォォッ」
道の真ん中で仁王立ちしてトロールが雄叫びをあげていた。
ドシュッ―――。
あ、死んだわ。
火魔法を体にまとわせたドラちゃんに腹の真ん中を貫かれてトロールが後ろに倒れた。
ドスンッ。
『ドラッ、そのトロールは我が見つけたのだぞ!』
『そんなん知らねぇよ。こういうのは早い者勝ちなんだよ』
『ぐぬぬぬ』
フェルから降りて、息絶えたトロールはアイテムボックスにしまっていると、フェルとドラちゃんが言い合いを始めていた。
「ほらほらケンカすんなよ。昼にはベルレアンに着くんだろ? そうなったら、どのみちまた依頼受けなきゃならないんだから、その時に発散しろよ」
『ぬぅ、分かったぞ。ドラ、その時は我が優先だからな』
『そんなん知らないねぇ』
「ドラちゃん、そういうこと言わないの」
『チェッ』
チェッじゃないよ、まったくもう。
魔物を誰が倒すかなんてことで争うなよなぁ。
フェルとドラちゃんはどうも好戦的でいかんな。
ヴァハグン様の加護のせいなのかな?
でも、加護が付く前から魔物には容赦なかったしねぇ。
よくわからんけど、これは早々に運動不足解消の場を与えないとダメだね。
その後はすんなり進み、フェルの言っていた通り昼頃にはベルレアンの街に着くことができた。
Aランクの金ピカギルドカードのおかげで、ベルレアンの街にもフェルたち連れですんなり入れた。
潮の香りがしてくる。
海の街に来たって実感するね。
さて、まずはこの街の冒険者ギルドに顔出しに行きますか。