第百八十四話 ご褒美
飯を済ませた俺たちは、まったり休憩中だ。
ちなみに飯は、ドランの街を出るときに作り置きしておいたものを出した。
旅で大分消費したけど、それぞれの料理で少しずつ余った分があったからそれを出した。
だから、から揚げがあったりハンバーグがあったり餃子があったりと、バラエティーにとんだ飯だったぞ。
フェルもドラちゃんもスイも、いろんな料理があるって大喜びだった。
全部が作り置きしてた料理の残り物なんだけどさ。
俺はその中の肉豆腐と米を食ったぜ。
味が染みてて美味かったよ。
あ、そうだ。
みんなにがんばったご褒美として、食後のデザートを振る舞おう。
俺も疲れたから甘い物食いたいし。
今回はみんなよくやってくれたし、奮発しちゃってもいいな。
俺はネットスーパーの不三家のメニューを開いた。
フェルにはやっぱこれだな。
選んだのはフェルの好きなイチゴショートだ。
今回はそれのホールケーキのLサイズを購入。
この大きさならフェルも喜ぶだろう。
ドラちゃんは当然プリンだよね。
選んだのはギフト用のプリン詰め合わせだ。
カスタードプリンとキャラメルプリンとマンゴープリンがそれぞれ4個ずつ入った計12個入り。
プリン大好きなドラちゃんもこれなら満足だろうね。
スイは見てると、けっこうチョコ系のものが好きだったりするんだよね。
ということで選んだのは、チョコレートケーキだ。
スイはイチゴも好きみたいだから、チョコレートケーキの上にイチゴが載ってるやつがあったからそれにしてみた。
大きさはフェルと同じホールケーキのLサイズだ。
これはスイも喜びそうだね。
俺は何にしようかな……。
ずらっと並んだカットケーキのメニューを見ていく。
お、涼しげだね。
よし、これにしよう。
俺が選んだのは今の時期限定の白玉クリームあんみつだ。
精算を済ませると、いつものように段ボールが現れる。
中からケーキを取り出してと。
「みんな、ちょっとおいでー」
声を掛けると、フェルとドラちゃんとスイが集まってくる。
「今日はみんながんばってくれたからな、はいこれ」
みんなの前にそれぞれ置いた。
『む、大きいな。食っていいのか?』
フェルは何でもない風にしてるけど尻尾がブンブン揺れている。
『おおっ、こりゃプリンか? いっぱい入ってるじゃねぇか!』
ドラちゃんは大喜びで飛び回っている。
『うわぁ、大きいケーキだーっ』
スイも大はしゃぎで高速でポンポン飛び跳ねている。
「今日は、みんながんばってあのすごい数のイビルプラント討伐してくれたからね。特別にご褒美だ。食っていいぞ」
そう言うと、フェルとスイはケーキに食らいついた。
あぁ、フェルの口の回りがクリームでベチャベチャだよ。
スイも嬉しそうにチョコレートケーキを取り込んでいる。
「あ、ドラちゃんはどれにする? 3種類味があってな、これがカスタードプリンで、これがキャラメルプリン、そんでこれがマンゴープリンだ」
『うん、全部だな』
「3種類とも食うのか?」
『もちろん食うぞ』
へいへい。
俺は、3種類プリンを開けて皿に載せて出してやった。
『ウメェ! 全部美味いけど、このオレンジのウメェなっ!』
マンゴープリンもお気に召したようだね。
残りのプリンは預かって、夕飯のときにまた出してやることにした。
うんうん、みんな嬉しそうに食ってるね。
さて、俺も白玉クリームあんみつをいただこう。
「久しぶりに食ったけど、美味いねぇ」
甘過ぎないから、どんどんいけるね。
色とりどりのフルーツに白いクリーム、そしてもっちりした白玉に甘い寒天。
それにあんこと黒糖の蜜が合わさると何でこんなに美味いんだろうな。
「ふぅ、美味かった」
フェルもドラちゃんも満足したのか、口の周りをペロペロ舐めている。
スイも満足したようで、いつの間にか革鞄の中でスヤスヤ眠っていた。
「それじゃ、街に帰るか」
『うむ』
『ああ』
イビルプラント討伐を終えた俺たちは、こうして街に帰って行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ネイホフの街に戻ると、俺たちは冒険者ギルドに向かった。
受付でギルドカードを見せると、そのままギルドマスターの部屋に案内された。
「おぉ、早かったのう」
そう声をかけたのは仙人みたいな風貌のこの街のギルドマスターのヨーランさんだ。
「ええ、みんながんばってくれたおかげです」
『イビルプラントなど我らにかかればたいしたことはない』
フェルがそう声を上げた。
「ふはははは、そうじゃのう。フェンリルにピクシードラゴンに特殊個体のスライムにかかればたいしたことないかもしれんのう」
ヨーランさん、ドラちゃんがピクシードラゴンでスイが特殊個体だって知ってるってことは、他の街のギルドマスターからいろいろ聞いてるみたいだね。
あ、一応今日の戦闘には俺も参加したんですよ。
一応だけどね。
「それにしても、大量発生とは聞いていましたけど、本当にびっくりするくらいにいましたね」
「今回は特に多く発生していたようじゃからのう。それもあって、なかなか討伐が進まなかったんじゃ。だから、お主らが受けてくれて本当に助かったぞ」
あの数を討伐しようと思ったら、相当数の冒険者をかき集めないといけなかっただろうからね。
まぁ、俺たちだったから何とかなったけどさ。
「ああ、そうだ、魔石も小さいものですがけっこうありましたよ。ここに出して大丈夫ですか?」
「おお、そうかそうか。どれ見せてもらおうかのう」
俺はテーブルの上にジャイアントイビルプラントの魔石を出した。
俺とスイが倒したのから採れたのが16個で、フェルとドラちゃんが倒したのから採れたのは数えてみたら48個あった。
〆て64個だ。
ジャイアントイビルプラントがBランクだから、魔石も極々小さい物だけど。
今まで魔石を見てきた中でだけど、ダンジョン産のものなんかと比べるとあんまり質も良いとは言えない気がする。
「小さいがこれだけの量が出るのはありがたい。うむ、1つ金貨4枚でどうじゃろう?」
こんなのでも金貨4枚で買い取ってくれるのか。
もっと安いかと思った。
もちろん俺としてはOKだ。
「はい、大丈夫です」
「そいじゃ、イビルプラント報酬と合わせて支払うから、ちょっと待っとってくれのう」
そう言って、ヨーランさんが部屋を出て行き少ししてから戻ってきた。
「待たせたのう。今回のイビルプラントの討伐報酬が金貨430枚じゃ。それから魔石の買取代金が金貨256枚じゃな。合計で金貨686枚じゃ。ドランのウゴールから聞いとる話じゃと、大金貨での支払いの方が良いようじゃと言っておったが、それでいいかのう?」
ウゴールさんナイス。
金貨はかさばるから、その方がありがたい。
「はい、大金貨で大丈夫です」
「そいじゃ、大金貨68枚と金貨6枚じゃ。確認してくれ」
1、2、3……大金貨68枚に金貨6枚、確かにあるね。
「はい、間違いなく受け取りしました」
「うむ。申し訳ないが、もう1つのキュクロープスの方も都合のいいときに頼むのう」
「はい」
キュクロープス討伐の依頼もあるんだよな。
でもさすがにすぐってわけにはいかないから、明日1日ゆっくり休んで、行くのは早くても明後日くらいかな。
『キュクロープス討伐は明日やるぞ』
いきなりフェルがそう言ってくる。
「ちょ、フェル、何言ってんの? 明日?」
俺としちゃ明日は休みにしたいんだけど。
『うむ。イビルプラントなど数が多かっただけで何の歯ごたえもない相手だったわ』
歯ごたえのない相手ってねぇ……。
『賛成だぜ。確かに今日のイビルプラントは歯ごたえなかったぜ』
ドラちゃんまで。
『戦うのー? スイがビュッビュッてして倒しちゃうよー』
いつの間にか革鞄から這い出してきたスイがやる気満々でそう言う。
はぁ~、みんな元気だね。
「何かみんなやる気満々なんで、明日キュクロープス討伐行ってきます」
「ほう、こちらとしてはありがたいが、連戦して大丈夫かのう?」
「はい、みんな元気みたいなんで」
みんな元気過ぎるよ。
まぁ、キュクロープスは今日のイビルプラントと違って俺が戦闘に加わる余地はなさそうだからな。
みんなに任せるよ。
「そうか、それでは頼んだぞ」
「はい」
明日、キュクロープス討伐に行くことになってしまった。
はぁ、ホントみんな元気過ぎ。
さっさと帰って飯食って、ゆっくり風呂に浸かって今日の疲れを癒そう。