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第百七十五話 旅立ちの報告

 俺たちは冒険者ギルドに来ていた。

 明日にはドランを離れるから、その旨を伝えに来た。

 明日にはここドランの街に別れを告げて、次のネイホフの街に向かう予定だ。

 それを言ったとき、フェルとドラちゃんとスイはもう1回ダンジョンにーとか言い始めたけど、もちろんダメだって言ったよ。

 だって既に踏破したダンジョンなんだし、また潜る必要なんてないと思うんだよね。

 ダンジョンに入ったら入ったで何日かかるかわからないしさ。

 これからネイホフの街、そして旅の目的地の海の街ベルレアンへと向かわないといけないし。

 カレーリナの街のランベルトさんにワイバーンの皮でマントを注文してるから、それが出来上がるまでには旅の行程を終えてまたカレーリナの街に戻らなきゃいけないしね。

 そのことも考えながら進んでいかないと。

 フェルとドラちゃんとスイがブーたれてたけど、ここのダンジョンにこだわらなくてもこの国には他にもダンジョンあるみたいだから、そっち行く機会があったら行こうって言って何とかなだめた。

 まぁ、他のダンジョンなんて今のところ行く予定はないんだけど。

「ムコーダさん、いらっしゃい」

 エルランドさんがやってきた。

 隣にはウゴールさんもいる。

「ムコーダ様、いらっしゃいませ」

 2階のギルドマスターの部屋まで案内されそうになったけど、たいした用件じゃないからとここで済ませてもらうことにした。

「明日の朝にこの街を発とうと思いまして、そのご報告に」

「えーッ、もう行っちゃうんですかッ?! 私が出るまでは居てくださいよー。ドラちゃんに見送りされたいです」

 そう言ってドラちゃんを熱のこもった目で見つめるエルランドさん。

 エルランドさんに見つめられてドラちゃんが『何かコイツ気持ち悪い』と念話を送ってきた。

 しかもドラちゃん、エルランドさんの視界に入らないように俺の後ろに隠れちゃうし。

 エルランドさんは、王都に向かうときにお見送りしろっていうんですかねぇ?

 ハァ~、あなたの予定に合わせるわけないでしょ。

 まったく呆れた人だね。

「ハァ、また何を言い出すかと思えば、あなたって人は……」

 ウゴールさんもため息ついてるよ。

「ムコーダ様、ギルドマスターの話は聞かなくてけっこうですんで。それより、この間は菓子をありがとうございました。妻と子どもたちと私で美味しくいただきました。初めて見る菓子なうえに普段はあまり口に出来ない甘味に妻も子供たちも大変喜んでおりましたよ」 

 おお、それは良かった。

 やっぱりパウンドケーキみたいなのはこっちにはないか。

「あぁ、あのお菓子ね。私も家に帰ってから食べたけど美味しかったねぇ。甘いものには目がないからさ、2日で全部食べちゃったよ」

 エルランドさん、2日で全部を食ったのかい。

 さすがに糖分取りすぎだぞ。

「あれは小国群の一部で細々作られてる菓子で、たまたま手に入ったものなんですよ。気に入っていただけてよかったです」

 ウイスキーの入手先と同じく小国群の一部で細々と作られてる菓子ということにしておく。

「えー、そうなのか。美味しかったから、まだあるようだったら欲しかったんだけどなぁ」

 エルランドさんがそう言うと、ウゴールさんが呆れたような顔をした。

「貴重なものをありがとうございました」

「いえいえ、お2人にはお世話になりましたから」

 エルランドさんはちょっと変わった人だけど、ここで地竜(アースドラゴン)ことでは世話になったしね。

 ウゴールさんは言うまでもなくだ。

「それではお2人ともお元気で」

 用件も済んだし帰ろうとすると、エルランドさんから声がかかった。

「ムコーダさん、例の件忘れないでくださいよ」

 はて、例の件って何だっけ?

「もうっ、忘れてしまったんですか? ドラゴンを捕獲したらここに持ってくるって約束したじゃないですか」

 ああ、そうだったね。

 ドラゴン好きのエルランドさんのために、というかドラゴンなんてきっとここでしか解体してもらえないだろうからって、もし入手したときはここに持ってくるからって言ったんだっけ。

「分かってますって。……あ、そういや私たちベルレアンに向かうんですが、そこでシーサーペントを獲る予定なんですけど、これはどうしますか?」

 確かシーサーペントって竜の亜種とかじゃなかったっけ?

「シーサーペントですか、シーサーペントなら私も獲ったことがあるのでいいです。それよりもリヴァイアサンを獲って来てくださいよー。リヴァイアサンなら喜んで解体しますから」

 エルランドさんが俺とフェルを見てそう言った。

 リヴァイアサンなんて海の魔物のボスクラスだろ?

 無理っぽいけど、獲るのはフェルだからね。

「フェル、リヴァイアサンなんて獲れるの?」

『馬鹿者。リヴァイアサンなどそうそういるわけがなかろう。我でもまだ三度ほどしか見たことがないのだぞ』

 そっちかよ。

『まぁ、リヴァイアサンは一度獲ったことがあるからな。見つけたら獲ってきてやる』

 獲ったことあるのかよ。

 ま、まぁフェルだしね。

「本当ですかッ?! 是非是非お願いいたします!」

 フェルの言葉を聞いてエルランドさんが興奮している。

「ま、まぁ、フェルが言ったとおり見つけたらですから。あまり期待し過ぎないでください」

 そう言ったんだけど、エルランドさんはリヴァイアサンで頭がいっぱいなのか俺の話を聞いちゃいない。

「ウ、ウゴールさん……」

「ハァ~、この馬鹿は放っておいてください」

「そ、そうですか……。それではお世話になりました」

 舞い上がったエルランドさんを残し、俺たちは冒険者ギルドを後にした。






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― 新着の感想 ―
[一言] 〉「えー、そうなのか。美味しかったから、まだあるようだったら欲しかったんだけどなぁ」 どんどん図々しくなっていく。 エルランドさん言っても無駄だろうけど、仕事しなさいよ。 エルフの精神年齢…
[良い点] 海洋生物は大きくなりがちだけど、果たしてリヴァイアサンなどというものが納まる建造物があるのだろうか。
[一言] この世界では、リヴァイアサンって唯一無二の存在じゃないんだね。果たして味は、肉っぽいのか魚っぽいのか?
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