第百四十一話 水責め
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翌朝、朝飯を食った後に早速探索を開始した。
この階層のボス目指して森を突き進む。
途中エンカウントする魔物は、昨日と同じくフェル、ドラちゃん、スイの順番で倒していく。
昨日も出てきたマーダーグリズリーにジャイアントキラーマンティス。
ジャイアントキラーマンティスは今度は30匹くらいの群れが出てきた。
それからイシュタムの森にいたジャイアントセンチピード。
これもあの時のより大分デカいやつだ。
あとはワイルドエイプっていうBランクのサルの魔物の群れで50匹近くはいたかな。
他にも昨日と同じく森の中にいそうな獣系、鳥系、蟲系の魔物が次々と出てきたけど、もちろんうちの子たちが撃破。
26階層ということで、総じてAランクかBランクと高ランクの強い魔物だったけど、みんなには何の問題もなかったよ。
またまた大量のドロップ品を入手しつつ森の中を進んだ。
ドロップ品が大量過ぎて、俺ももう何がどれくらいかなんて把握してないよ。
すべての魔物がドロップ品を落とすわけじゃないけど、やっぱり高ランクの魔物は落としていく確率が高い。
今までにみんなが倒した敵の数を考えると、ドロップ品が大量に手元にあるのは当然と言えば当然なんだけどさ。
それにしても、みんな強くてどんどん魔物を倒していくからさ、さらにドロップ品が増えていくよ。
俺のアイテムボックスが満杯になるようなことはないだろうけど、こりゃ地上に戻ってからが大変だな。
大量のドロップ品を整理しなきゃならんよ。
そんなことを考えていると、俺を乗せたフェルの歩みが止まった。
『この先にキラーホーネットの巣があるな……』
ホーネットってことは、スズメバチの魔物か?
『キラーホーネットかよ。俺あの魔物は苦手なんだよなぁ。とにかく数が多いし、俺と同じく飛び回るからさぁ』
ドラちゃんが嫌そうにボヤいた。
ドラちゃんが嫌がるってことは、それ相応の魔物のようだね。
『確かにな。強いとは思わんが、あれは数が多い上にブンブン周りを飛び回って鬱陶しいことこの上ないからな……』
フェルも嫌そうな顔をしている。
ああそういうので嫌われてるわけね。
確かに蜂なら1匹だけってことはないから、数十、いや数百匹単位でいるか。
『こりゃ定石どおりやるのが良さそうじゃねぇか?』
『そうだな。先に巣を始末してから、巣の外にいるキラーホーネットを始末していくのがいいだろう』
先に巣の中のキラーホーネットを全滅させてからか。
まぁ、そうしなかったら次から次へと襲って来そうだもんな。
ってキラーホーネットの巣ってどこにあるんだ?
フェルに聞いてみると、見える位置まで移動してくれる。
見えたのは、ワゴン車くらいの大きさのキラーホーネットの巣だ。
巣は大木の根元にへばりつくように作られていて、その回りを体長30センチくらいの蜂がブンブン飛び回っている。
『次はスイの番なのだが、スイの攻撃は酸弾と水魔法だからな……遠距離攻撃で一気に巣を全滅させるには少し相性が悪いのう』
フェルがそう念話で話した。
確かに酸弾で攻撃しても一気に巣を全滅ってのは難しそうだし、水魔法もウォーターカッターじゃなぁ……。
『ヤダヤダっ。スイ一人で倒せるもん。スイが倒すのー』
スイが一人で倒すんだと駄々をこねる。
『おい、スイ、お前なぁわがまま言うじゃねぇよ。ここはフェルの言うことが正しいぜ。相性の良い悪いはどうしても出てくるんだから、我慢しろよ』
ドラちゃんがそう言ってフェルを援護する。
確かにフェルやドラちゃんの言うことはもっともなんだけどさ……。
スイに甘い俺は何とかしてやりたい。
『ううー、スイの番なのに……グスッ…………』
ああっ、スイが涙声に。
スイちゃん泣かないでよー。
酸弾に水魔法……水、水、水、うーん……あっ!
『いや、スイでも十分倒せるよ』
『お主、またそんなこと言ってスイを甘やかして』
しょうがないだろ、スイちゃんかわいいんだから。
って、そことは別にマジで大丈夫だよ。
『スイを甘やかしてることは否定しないけど、俺の思いついた作戦なら大丈夫だよ』
どんな作戦なんだっていうフェルとドラちゃん、そしてスイに俺が思いついたことを説明した。
大きな水の球を作ってその中に巣を閉じ込める。
あとは中のキラーホーネットが全滅するまで少し時間をおくと。
要は水責めだな。
『……お前、けっこうえげつないこと考えるな』
俺の説明を聞いたドラちゃんがそう言った。
火魔法とか雷魔法を身にまとって、それで魔物の土手っ腹を貫いたりするドラちゃんには言われたくないわ。
『水で窒息死させるというのは悪くない。スイ、それでやってみろ』
『分かったよ、フェルおじちゃん』
スイちゃんや、その作戦を考えたの俺なんだからな。
スイがキラーホーネットの巣が入るくらい大きな水の球を作ると、それを移動させて中に巣を閉じ込めていく。
水責めにあった巣から何匹かのキラーホーネットが飛び出してきて水の球から逃れ出てきたが、羽が水に濡れて上手く飛べないようでよろよろしている。
そこをスイは酸弾で仕留めていく。
「これで少し時間をおけば、巣は全滅だろう。あとは、巣の外にいるやつだけど……なぁ、みんな腹減ったよな?」
『ああ』
『俺も腹減ったー』
『スイもお腹ペコペコー』
やっぱりな。
そろそろ飯時かなと思ってたんだよ。
「なぁ、スイ。巣はああやってスイが倒しちゃうだろ。だからさ、巣の外にいるハチさんを倒すのはフェルおじちゃんとドラちゃんに手伝ってもらってもいいかな? そうすれば早くご飯にできるしさ」
『うん、ご飯早く食べたいし、それならいいよー』
ってことで、フェルとドラちゃんお願いします。
巣の異変を感じ取ったのか、戻って来たキラーホーネットを2人が次々と倒していく。
俺はドロップ品の回収だ。
キラーホーネットのドロップ品は毒針ばっかりだったけどね。
飛んでいたキラーホーネットを倒し終わったところで飯タイムだ。
きっちり止めを刺す意味でもスイの水の球はそのまま維持してもらうことにした。
飯は作り置きしておいたワイバーン肉の牛丼にしたよ。
牛丼にはやっぱこれがないとってことで……。
26階層まで来ると、俺たち以外に冒険者なんていやしないからネットスーパー使って半熟温玉を購入。
フェルたちには最初は温玉なしで出してやって、その後のおかわりで温玉を載せたものを出してやった。
俺も両方食いたかったから、小ぶりの器に最初はそのまま、次に温玉載せで食った。
いやワイバーン肉の牛丼美味かった。
ドラちゃんもおかわりしてたし、フェルもスイも何度もおかわりしてたよ。
たっぷり飯を食った後は休憩だ。
『あっ、倒したみたいだよー』
スイの声にキラーホーネットの巣を見てみると、消えていた。
スイに水を消してもらって、ドロップ品の確認だ。
「毒針ばっかりだなぁ」
蟲だから素材になりそうなもんなさそうだしね。
「あ、これは……」
瓶に入った白っぽいもの。
鑑定してみると……。
【 キラーホーネットのローヤルゼリー……非常に栄養豊富。 】
ローヤルゼリーか。
健康食品とかに入ってるやつだろ?
非常に栄養豊富ってそんな感じするけどさ、それだけの説明て。
『おお、いいものがとれたではないか。ハチの巣から採れるそれはな、少し舐めるだけでも元気が出るぞ』
フェルは知ってるみたいだね。
舐めるだけで元気が出るんじゃ、このまま取っておいてもいいかもね。
毒針やらローヤルゼリーをアイテムボックスにしまって、俺たちは再び森の中を進んでいった。
その後も獣系、鳥系、蟲系の魔物を倒しながらドロップ品を回収しつつフェルが言う階層主を目指して進んでいく。
暗くなってきたところで、この日の探索は終了となった。
翌日も、同じく獣系、鳥系、蟲系の魔物を倒しながらドロップ品を回収しつつ森の中を進んでいった。
途中に宝箱を発見し、宝物を手に入れたほかは変わりなく進んだ。
ちなみに宝箱の中にあったのは宝石が2種で、サファイアとアレキサンドライトだった。
フェルの話だと、いよいよ階層主とぶつかるらしい。
フェル曰く、そこそこ強い気配だとのことだ。
どんな階層主が待ち構えているのかねぇ。