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とんでもスキルで異世界放浪メシ 作者:江口 連(旧 妖精壱号)
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第百三十話 完全防御のスキル

今回は会話文が多いです。
 宿の部屋に戻ってきて、いつものように呼びかけた。
「えー、女神様たちいますかー?」
 呼びかけるとすぐに返事が頭の中に響く。
『ぬ? お主、いつもより早いのう。いい心がけなのじゃ。みんなを呼んでくるからちょっとだけ待っておれ』
 少しすると、ガヤガヤとみんなの声が聞こえてきた。
『異世界人クン、今回は早いのね~。お願いしたいのもあるし、嬉しいけれど』
『ホントだな。こっちとしてはありがたいけどよ』
『……ご飯とお菓子』
『おおっ、待っておったぞい。いや~異世界の酒は最高じゃなぁ。おう戦神の、どんな酒を頼むのか相談しようじゃねぇか』
『おっ、異世界人来たか! そうだな鍛冶神の。異世界の酒はどれもうめぇから迷うな』
 なんか、みなさん注文する気満々ですね。
 ヘファイストス様とヴァハグン様は何の酒を頼むか相談まで始めてるし。
「実はですね、明日からダンジョンに潜る予定なので、潜っている間はお供えとか出来ないと思うんで。俺の固有スキルのネットスーパー使ってるところを他の人に見られたくないんで」
 他の冒険者たちに見られるのだけは避けたいからな。
『まぁ、そうじゃろうのう。何せ異世界のものが手に入るというけったいなスキルじゃが、使い方によっては莫大な利益を生みそうじゃしな。そのおかげで妾も異世界の甘味を堪能できているのじゃが』
『そうよね~。そのおかげで私たちも異世界のものを手に入れることができるんだけど』
『確かになぁ。神である俺たちでも聞いたことも無いスキルだもんな。異世界のもんが手に入るスキルなんて』
『……異世界のご飯とお菓子』
 このスキルのおかげで俺も元の世界のものをいろいろん手に入れられるのはありがたいし、助かってる部分もあるけど、こうして神様方に集ら……ゴホン、供え物をしなきゃならないからねぇ。
 まぁ、その代わりに加護をもらってはいるんだけどさ。
「とにかく、他の冒険者に見られるわけにはいかないので、ダンジョンに潜る前に皆様に供え物をすることにしました。それでは皆様のご希望をお伺いいたします。あ、1人銀貨3枚までですからね」
『うむ。分かったのじゃ。では妾はいつものとおり甘味じゃ!』
 ホントにこの人(女神)ブレないねぇ。
 というか、どんだけ甘い物好きなんだよ。
 俺はネットスーパーを開いて、ニンリル様の希望する甘味を選んでいく。
 ニンリル様の好物のどら焼きを中心にその他は洋菓子と和菓子、菓子類と甘い炭酸飲料を購入。
「お次どうぞ」
『キシャールよ~。この間の洗顔料と化粧水と乳液それからクリーム、とっても良かったわ! 特にクリームが良かったわね。あなたの言うとおり、夜に多めに塗ってねたら翌朝の肌がプリプリなのよ。乾燥してたなんて嘘みたいなお肌になったわ。おかげで毎日鏡を見るのが楽しみなのよ~』
 はぁ、そうですか。
 何かキシャール様は自分の顔を鏡で見てうっとりしてそうだね。
 ま、まぁ、何にしろ美容にうるさいキシャール様のお眼鏡にかなって良かったですよ。
「それで、何をご所望で?」
『それなんだけどね、顔をお手入れするものがもっと欲しいわ。何かいいものないかしら?』
 う~ん、女じゃないからパッと思いつかんな。
「ちょっと見てみますんでお待ちください」
 俺はネットスーパーのスキンケア商品が並ぶ欄を見ていく。
 クリームが気に入ったって言ってたし、これなんてどうかな。
「クリームが気に入ったということなんで、同じくクリームなんてどうですかね。1つで銀貨3枚吹っ飛びますけど、高い分美容成分が豊富に入ってるみたいですよ」
『び、美容成分が豊富に入っているですってっ?! 絶対それよっ! それにしてちょうだいッ!!』
 キシャール様、美容成分豊富に反応し過ぎだよ。
 俺はキシャール様のご希望通り銀貨3枚のクリームをカートに入れた。
『何だ、キシャールは1個のものに銀貨3枚全部使ってしまったのか? お主、案外バカだのう。ブフフ』
『ホントだぜ。いろいろ頼んだ方がいいのにな』
『……コクコク』
『放っておいてちょうだい。私は美容に目覚めたのよ』
 キシャール様は他の女神様に馬鹿にされたけど、どこ吹く風のようだ。
 ただな、ニンリル様、言っておくがクリーム1つで銀貨3枚は序の口なんだぜ。
 世の中にゃ1個数万円するクリームすらあるんだからな。
 美容オタクの俺の姉貴は1個3万円もするクリームを買ってたぜ。
 美容に金の糸目はつけない主義なの(キリッ)とか言ってたなぁ。
 姉貴は美容成分がどうとかこうとか言ってそれだけの価値があるのよとか力説してたけどさ。
 まぁさすがに美容クリーム1個で3万円使った姉貴には”バカじゃね”とは内心思った。
 口には出さなかったけどね、絶対に。
 世界が同じだったら、キシャール様と俺の姉貴はものすごい気が合ったかもしれないな。
「えーと、次はアグニ様ですか?」
『おう、俺だ。俺はこの間の酒と同じでいいぞ。いろんな酒があるから飽きないし、全部美味い酒だったからな』
 アグニ様はこの間と同じ組み合わせか。
 でも、同じメーカーじゃつまんないから、違うところにするか。
 メーカーが違えば味も違ってくるしね。
「じゃ、この間と同じ組み合わせで、メーカー違いのものを選ぶようにしますね」
『そこら辺はまかせるわ』
 俺はこの間の組み合わせで、メーカー違いのものを選んでカートに入れていった。
「次はルカ様ですね」
『ご飯とお菓子』
 ルカ様も前回同様か。
『牛丼っていうやつが美味しかった。あるなら欲しい』
 牛丼か。
 甘辛い牛肉が飯とマッチして美味いよな。
 あるなら欲しいってことだけど、あるんだな、これが。
 ダンジョン用に作り置きしてたのがさ。
『それからお肉を串に刺して焼いてあるのも美味しかった』
 あー、それ焼き鳥か。
 んじゃ焼き鳥も買ってと。
 あとはダンジョン用に揚げたから揚げ、それからビーフシチューとロールキャベツも提供しましょう。
 残りはいつもと同じく食パンに菓子類だね。
「次は……」
『おう、ヘファイストスじゃ。次は儂たちの番じゃな。儂の分は、あの酒精の強いウィスキーって酒をお願いするぞい。あれは美味かった。お主の言った通り氷を入れて飲むも良し、水で割って飲むも良しじゃったわい。そのまま飲んでも美味かったぞ。本当に異世界の酒は美味いもんじゃのう』
 ヘファイストス様はウィスキーだね。
 うん、強い酒が好きならウィスキーはいいかもね。
『ヴァハグンだ。俺の分は、ウィスキー以外の酒だ。この間のとは違う種類があればなおいいぞ。鍛冶神の、それでいいんだよな?』
『おう。ウィスキーは美味いが、異世界の酒をもっといろいろと楽しみたいからのう。戦神の、お主もそれでいいじゃろ』
 この2人は協力して酒を確保するようにしたみたいだな。
『お主ら、酒のこととなるとやけに協調性があるのう』
『ほんとよね~』
『まったく自分の好きなもん選べばいいのによぉ。酒のことんなると、小ズルいことするよなお前らは』
『……お酒不味い』
 女神様たちが呆れてるよ。
 この2人、以前からの女神様たちの話しぶりからも酒に関しちゃいろいろとやらかしてそうだよなぁ。
『ハッ、何とでも言うがいいわい。酒のことに関しちゃ儂らは妥協せんのじゃ』
『そうだぞ。美味い酒が手に入るならいくらでも協力するぜ。あと、ルカ、酒はマズくないからな。この上なく美味いもんなんだ』
『ああそうじゃ。儂らにとっちゃ命の水だからのう。ガハハ』
 2人とも無類の酒好きってことだね。
 んじゃ、早いとこ選んじゃうか。
 ヘファイストス様はウィスキーか。
 今回はアメリカ産のとスコットランド産の、それから前回の日本のメーカーとは別のメーカーの3本のウィスキーを選んでみた。
 ヴァハグン様はいろいろで、前回と違うものがあればなおいいってことだったな。
 それならばと、地酒と2人とも酒精が強い物が好みのようだからウォッカとラム酒を選んでみた。
『あ、そうだ。お前、ダンジョンに行くんだよな?』
 ヴァハグン様がいきなりそう聞いてきた。
「ええ、明日にはダンジョンに潜ることになると思います」
 そう答えると、何やら神様たちで話し出した。
『おい、お前ら、異世界人に防御系のスキルやってあるんだろうな?』
『防御系のスキルじゃと? 何故じゃヴァハグン』
『って、お前ら防御系のスキルやってねぇのかよ。何やってんだよっ』
『そうじゃぞ。儂らのためにも此奴に防御系スキルは必須じゃというのにのう』
 ヴァハグン様もヘファイストス様も何言ってるんだ?
『ヴァハグンもヘファイストスも何言ってるのよ~。異世界人クンには加護もあげてあるし大丈夫でしょう』
『そうだぜ。ニンリルとキシャ―ルと俺の加護があるし、あのフェンリルも従えてるんだから大丈夫だろう』
『……私の加護があるスライムも一緒』
『『ハァ~』』
『脇が甘いぜ、お前ら』
『そうじゃぞい。というか此奴ら分かっとらんわ。ヴァハグン、説明してやれい』
『仕方ねぇなぁ。あのな、明日から異世界人はダンジョンに潜るんだぞ。えーっと、そこだとドランのダンジョンか。ドランのダンジョンは難易度も高めで、そこにいる魔物も結構強く危険だ。お前ら、異世界人には加護もあるし従魔もいるから大丈夫だって言ったよな? 確か、フェンリルは結界が使えて、スライムはポーションが作れるんだったな。だがよ、ダンジョンに潜っている間ずっと結界を張り続けることは、いくら魔力の高いフェンリルだって無理な話だろう。ポーションが作れるスライムがいれば死んでなければ治せるだろうが、それはあくまでも死んでいなければだ。例えばだ、頭を潰されるほどの攻撃を受けたり、心臓を一突きされた場合はどうだ? 即死だろう。そうなったらポーションも何も意味がない』
『うむ、その通り。そういうことじゃ』
『異世界人が死んだら……』
『異世界人クンがいなくなちゃったら……』
『異世界人がいなくなっちまったら……』
『…………』
『異世界のもんは二度と手に入らんだろうのう』
『『『『マズい(のじゃ)(わ)(ぜ)(コクコクコク)』』』』
『異世界の甘味のために、此奴に防御系スキルを与えるのじゃッ』
『そうよッ、美容製品が手に入らなくなるなんてマズいどころの話じゃないわよっ』
『異世界の酒が手に入らなくなるなんて冗談じゃないぜッ』
『………(コクコクコクコクコクッ)』
『儂らだって、異世界の酒をもっともっと楽しみたいからのう。此奴に死なれるのは非常に不味い。のう戦神の』
『おう。異世界の酒は種類も豊富だし、美味いからな。これが飲めなくなったら、俺は下界で暴れるぜ』
『そういうことで、儂が異世界人に完全防御のスキルを授けようと思うのじゃが、いいかのう?』
『異議なしなのじゃ』
『当然よ』
『ああ、良いに決まってるぜ』
『早く』
『よし、異世界人、お主に完全防御のスキルを授けるぞい』
 ……何かよくわからんけど、スキルをくれたみたいだ。
『よぉし、これでしばらくの間は異世界の酒を楽しめるぞい、戦神の』
『そうだなっ。異世界の酒楽しめるな、鍛冶神の』
『むふふ、甘味甘味』
『美容製品』
『酒、酒』
『ご飯とお菓子』
 …………神様たちェ。
 俺の心配より完全に異世界の品が手に入らくなることを心配してたよね。
 はぁ~、神様なんてぶっとんだ存在なんてそんなもんかもしれないけどさ。
 なんか神様たちの相手ってめっちゃ疲れるわ。
 さっさと供え物(貢物)渡してお引き取り願おう。
 俺はネットスーパーでカートの中身を精算すると、手早く段ボール祭壇の上に並べた。
「ヴァハグン様もヘファイストス様も、この2つは酒精が強いですから注意してくださいよ。こっちのはそのまま飲みます。こっちのは氷を入れてかそのままで飲みます」
 一応、アルコール度数が高いウォッカとラム酒の注意をしておく。
「皆様のご希望の品です。どうぞお受け取り下さい」
 段ボール祭壇の品が消えると、いつものように女神たちと男神たちの歓声が聞こえてくる。
 はぁ~終わった終わった。
 神様たちの相手は疲れるよ。
 さっさと寝よ。




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