第百二十話 酒好きにバレた(前編)
今日は120話と121話更新です。
エルランドさんから教えてもらった宿”迷宮都市の宿”に泊まることにし、そこの中庭でみんなで飯にした。
その後、フェルとドラちゃんは獣舎で寝てもらうことにしたんだけど、フェルの布団を敷いてやるのを見てドラちゃんが『俺も専用のが欲しい』と言い始めたからドラちゃん専用の敷布団を買ってあげた。
ドラちゃんは小さいから1枚で済んだけどね。
俺とスイは宿の部屋へ。
ベッドの上に俺用の布団を敷くと、すぐさまスイはそれに潜り込んだ。
俺はというと、やらなきゃならないことがあるからまだ寝れない。
女神様たちへのお供えをしなきゃならないからな。
少し遅れちゃったけどね。
何かブチブチ文句言われそうで嫌なんだけど、そんなことも言ってらんないしね。
これ以上遅くなったらなったで向こうから何か言ってくるだろうし。
さて、連絡しますかね。
「あー、女神様たちいますかー?」
『遅いッ! 遅いのじゃッ!! お主、忘れておっただろうっ』
ニンリル様か。
うーん、否定できんわ。
『ホントよ~私たち首を長ーくして待っていたんだから。遅くなったのはあなたの約束違反よ。お詫びは欲しいところよね~』
グッ……痛いところを。
キシャール様ってけっこう抜け目ないよな。
『そうだそうだ。詫びを要求する』
アグニ様は便乗かよ。
『……約束違反』
ルカ様、地味にズシッときますからいつものように無言でいてください。
まぁ、約束違反って言われるとぐうの音も出ないからなぁ。
「あーはいはい。俺も遅れて申し訳ありませんでしたね。その代わりと言っては何ですが、いつもは銀貨3枚のところを今回限りはお詫びとして銀貨4枚にします。それで勘弁してください」
『うむっ。それならば許すのじゃ』
『銀貨4枚ね。それでいいわよ~』
『おう、銀貨4枚か。そんならいつもよりいろんなの送ってもらえんな』
『……許す』
銀貨4枚ですぐ許してもらえたよ。
女神様たちってけっこうチョロいかも。
「それじゃ、希望を聞いていきますので。いつも通り最初はニンリル様からですか?」
『うむ。妾からじゃ。妾の希望はいつもと同じ甘味じゃ。どら焼き多めで、今度はけーきとぷりんも所望するのじゃ。あとは、シュワシュワ甘い飲み物じゃな』
ニンリル様はいつも通りの甘味と。
ニンリル様、ここはブレないねぇ。
ネットスーパーでニンリル様希望の品を銀貨4枚分カートに入れていく。
どら焼き多め、ケーキ、プリン、コーラ、サイダー、それから洋菓子と和菓子を数種に残りは適当に菓子類をチョイスした。
「次はキシャール様ですか?」
『ええ、そうよ。シャンプーとトリートメントとヘアマスクは前にもらったのがまだ残ってるからいいわ。それよりも、他に美容関係のものでよさそうなものってないかしらぁ?』
「美容関係ですか?」
美容関係っていうと、すぐに思い浮かぶのは洗顔料とか化粧水とか乳液かな。
「えーっと、美容関係なら洗顔料とか化粧水とか乳液とかどうでしょうか?」
『え、何なのそれはっ?』
キシャール様が食いついてきた。
「というか、この世界にはないんですか? 顔の肌を潤すようなものは」
聞いてみると、化粧水のようなものは存在しないみたいだ。
顔に塗るのは乾燥対策でオリーブオイルを精製したものを塗る程度らしい。
そのオリーブオイルを精製したものも高価なものらしいから、結局のところ何の手入れもしてないというのが一般的らしい。
前から思ってたんだけど、キシャール様は美容関係の物を欲しがるけど、神様にそういうの必要なんかな?
神様っていうからには、神様パワーでいつでも綺麗に整えられてるとかじゃないのかなって思ってるんだけど。
「不思議に思ってたんですが、神様って髪とかお肌のお手入れって必要なんですか? そういうものは常に綺麗に保たれてるんじゃないんですか?」
気になっていたことをキシャール様に聞いたら猛烈な勢いで否定された。
『何言ってるのよっ! 私たちだってこの神界にいる分にはそんなに人と変わらないのよっ。地上に大きな影響を与える力は持っているけど、神たちが集う神界ではそんなのみんな持ってるし。私たちだって、ここにいればお腹も減るし眠くもなるし、年だって取っていくのよ。そりゃ人に比べたら寿命は相当に長いし病気もしないけど、それ以外は人と何ら変わらないんだから』
なるほどねぇ。
この世界の神様ってそういう感じなんだ。
でもまぁ、完全無欠じゃないところが逆に親近感が湧くな。
「そうだったんですね。それならば、洗顔料とか化粧水とか乳液はいいかもしれないです。キシャール様のお肌の悩みは何ですか? それに合わせて選んでみますんで」
『やっぱり乾燥かしらね~。精製したオリーブオイルも取り寄せて使ってはいるんだけど、特に目元が乾燥するのよね』
ふむふむ、なるほど。
ネットスーパーのスキンケア製品を見ていく。
そこで目を付けたのが、ヒアルロン酸とコラーゲン配合とかいう同じシリーズのしっとりタイプの化粧水と乳液でそれぞれ銀貨1枚と乾燥が気になるとのことだったので同じシリーズの銀貨1枚と銅貨5枚のクリームだ。
残った銅貨5枚でチューブに入った洗顔フォームを購入。
「次はアグニ様ですね」
『おう、オレはな前と同じ酒『『ふははは、ようやく尻尾をつかんだぜぇ』』……うおッ、な、な、何でお前らがここにいるんだッ』
アグニ様が話してる途中で男の声が聞こえた。
『うぎゃっ、な、な、何で此奴がいるのじゃっ?』
『そ、そうよ~。まさか、アグニちゃんが?』
『ち、ちげーよ。こいつ等になんか教えるわけないだろッ!』
『お酒の匂い嗅ぎつけた』
ルカ様のその一言で納得したのか、女神様たちが『だから酒はやめろと言ったのじゃ』とか『酒はやっぱり拙かったのよ~』とか『オレだって異世界の酒飲みたかったんだよ』とかワーワーギャーギャー言い合いをしている。
『何々なるほど、お前は異世界から召喚されし者か。そんで、ふんふん異世界から物を取り寄せるスキルがあるのか。その中に酒もあると……。よう、鍛冶神の、俺たち異世界の酒がたっぷり飲めそうだぜ』
『ふははははは、そうじゃのう、戦神の。儂たちはついてるのう』
『そうだな』
『ふはははははは』
『ふはははははは』
『『ふははははははは』』
な、なんか野太い声の笑い声が不吉な予感しかしないんですけど……。