第百十五話 ヴェノムタランチュラの味は……
今日は114話と115話更新です。
クレールの街を後にしてダンジョン都市ドランに向けてひた走る。
いつものように俺はフェルの背に乗せてもらい、スイは俺が肩から掛けた鞄の中に、ドラちゃんは意気揚々と飛んで付いてきていた。
しばらく進んだところで、日も落ちてきたことだしここで野営しようということになった。
ちょっと確かめたいことがあるから、飯は手早くできるものってことで、前に作り置きしてたブラッディホーンブルとオークジェネラルの合い挽き肉のハンバーグの残ってるのを使ってロコモコ丼にしてみた。
ハンバーグは既に焼いてあるから、これなら載せるだけで簡単だしね。
まずは、ネットスーパーでレタスときゅうりとプチトマト、それから卵を購入。
レタスは適当な大きさにちぎり、きゅうりは薄く斜め切りにして、プチトマトは半分に切っておく。
それから目玉焼きを作る。
フェルとスイの分にはハンバーグを3個載せるから卵3個分の目玉焼きを焼いて、ドラちゃんは今までの食い具合からいくとハンバーグ2個だから卵2個分の目玉焼きだ。
炊いてあった飯を皿に盛って、その上に野菜をバランスよく盛り付ける。
その上にハンバーグを載せてソースをたっぷりとかけたら、その上に目玉焼きを載せて完成だ。
お好みでマヨネーズをかけても美味いぞ。
最初はかけないままで。
「飯だぞー」
フェルとスイとドラちゃんが集まってくる。
「これはな、こうして混ぜて食うんだ」
ちょっと崩すのがもったいないけど、ロコモコ丼は混ぜて食うもんだからね。
3人の皿を軽く混ぜてやる。
『これで食っていいのか?』
「どうぞ」
3人が食い始める。
『美味しーね。お野菜もあるからさっぱり食べられるよ』
『うん、こりゃうめーなっ! 卵があるのもいいぞ』
スイとドラちゃんからは好評のようだ。
『うむ、美味いが、我は野菜はない方がいいのう』
フェル、ロコモコ丼に野菜は必須なんだぞ。
「野菜なしだと、この丼は魅力半減だよ。これはね、野菜と一緒に食うから美味いんだから」
フェルってば野菜食えないわけじゃないけど、好きじゃないんだよねぇ。
特に生野菜は好きじゃないみたいだし。
困ったもんだ。
俺も手早く作ったロコモコ丼を食う。
うん、簡単だけど美味いね。
やっぱ野菜と一緒に食うから美味いんだよね、これは。
ドラちゃんは一杯で腹いっぱいになったみたいだけど、フェルとスイはその後もおかわりした。
フェルは野菜なしでとか言ってたけど、野菜は食った方がいいんだからって言い聞かせて、野菜少な目にして出してやったよ。
飯を食い終わって少し休憩を挟んだところで、土魔法で寝床の箱型の家を作る。
「みんなは先に寝てていいぞ。俺はちょっとやることがあるから」
『うむ、分かったが、今からやることとは何だ?』
「あー、ヴェノムタランチュラって食えるって言ってたじゃん。だけど、どんな味か想像できないんだよね。ロドルフォさんが塩ゆでにすると美味いって言ってたから、試しに1本ゆででみようかと思ってさ。味がわかんないと料理しようにもできないし」
『なるほどのう。蟲はあまり好かんが、ゆでるとどのような味になるのか我も気になる。ゆえに我も付き合うぞ』
って、フェルはただ食いたいだけだろ。
『なーに? まだ美味しいものあるの? スイも食べるー』
『おいおいおい、俺も食うぜっ』
スイもドラちゃんも食うみたいだ。
結局みんなで試食会。
ヴェノムタランチュラの足は全部64本。
とりあえず1匹分の足8本ほどゆでてみることにした。
ヴェノムタランチュラの足をアイテムボックスから取り出す。
黒に近い紫色で、よく見るとうっすらと毛が生えている。
うう、こりゃよく見ちゃダメだな。
色さえ違えば見た目はカニの足っぽいんだけどね。
とりあえず洗って塩ゆでにしてみたところ、ゆで上がりは殻が赤く変色して本当にカニみたいだった。
「ゆで上がりはカニみたいだけど……」
クモだと思うからダメなんだ。
これはカニ、これはカニ。
おそるおそる殻を外して、少しだけ食べてみた。
おろ?
不味くないってか、けっこう美味いぞ。
味は見た目に似てカニっぽい。
だけど、カニかと言われると、んん?って感じだ。
カニに似てるけど、もっと安っぽい味というか何というか。
んー、前にも食ったことあるような味なんだよなぁ。
何だっけか…………あっ、あれだ!
これってば、カニ風味のかまぼこだよ。
食感もそれにそっくりだ。
まぁまぁいけるな。
『おい、一人で食ってないで我らにもくれ』
「ああ、ごめんごめん」
殻を剥いて3人に出してやった。
『うむ、前に食ったときよりも美味く感じるな。やはりゆでてあるからかのう』
『ホントだな。俺もヴェノムタランチュラは食ったことあるけど、生よりこっちの方が断然美味いぜ』
フェルもドラちゃんも食ったことあるみたいだね、生で。
さすがにクモを生では無理だわー。
2人ともゆでた方が美味いって言うんだからそうなんだろうね。
『うん、美味しいね。でも、スイは赤いお肉の方が好きかなぁ』
赤いお肉か、スイは動物系の肉の方が好きみたいだね。
『それを言うなら、我も普段食っている肉の方が好きに決まっとるな』
『俺もだな。この蟲も不味くはないが、比べるなら断然そっちだぜ』
フェルもドラちゃんも動物系の肉の方が美味いって意見か。
そらそうだわなぁ。
カニ風味のかまぼこと肉どっちがいいって言ったら断然肉に決まってるしな。
しかし、ヴェノムタランチュラの足はあと56本も残ってるんだよねぇ。
これは何とかメニューを考えて消化せねばもったいない。
うーん、カニ風味のかまぼこか、後でちょっと考えてみよう。
この後はスイと一緒に風呂に入った。
驚いたのはドラちゃんも風呂に興味を持って入りたがったことだ。
とりあえず、濡れタオルで全身を拭いてから風呂にいれてあげたよ。
スイみたいにドラちゃんも気持ちよさそうにプカプカ浮いていた。
ドラちゃんも風呂が気に入ったみたいだ。
この中で風呂嫌い(洗うだけだけどね)はフェルだけだな。
一風呂浴びてさっぱりして、みんなで布団に入ってゆっくり寝たよ。
旅路で布団で寝れるって最高だよなぁ。