第百二話 ワイバーンの肉=和牛A5ランク
今日は102話、103話更新です。
「ああ、そうだ、ワイバーンの皮をランベルトさんのとこに持っていかないとな。フェル、ちょっとランベルトさんの店よっていくから」
『分かった。早くするのだぞ』
ランベルトさんの店によると、ちょうど店先にランベルトさんがいた。
「ランベルトさん、皮を持って来ましたよ」
「おお、それではこちらへ」
店の奥の応接間へランベルトさんと入る。
「それじゃ、これでマントと鞘付きベルトと靴をお願いいたします」
「はい、確かに。それでは、ちょっと待ってていただけますか」
そう言ってランベルトさんが席をたち部屋を出て、少しして戻って来た。
「それでは、受注の証としてこちらを」
ランベルトさんが渡してくれたのは木札だった。
そこには今日の日付と受注品と預かったもの(ワイバーンの皮)のことが焼き記されていた。
「半年後にこれと代金を引き換えに商品をお渡しすることになりますから、失くさないようにしてくださいね。まぁもし失くされても、ムコーダさんのことは忘れませんので大丈夫ですが。ハハハ」
「いやいや、ちゃんとしまって失くさないようにしますよ。半年後楽しみにしていますから。ああ、そうだ、近日中にこの街を出ることになりましたのでそれもお伝えしておきます。私の居場所は冒険者ギルドに聞いていただければ分かると思います。冒険者ギルドのギルドマスターにも、ランベルトさんが聞いてきたら教えてくださいとお願いしてありますので、何かあったときはそちらにお願いします」
「おお、いよいよ旅立たれるのですか。ムコーダさんにはいろいろと世話になりましたな」
「いえ、こちらこそお世話になりました。マントやらができる半年後を目途にまたこの街に戻ってきますんで、そのときはまたよろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそ。いい品を仕立てて待っていますよ」
「はい、よろしくお願いしますね」
ランベルトさんにワイバーンの皮を渡して、俺たちは店を後にした。
「なあフェル、海に行くって話だけどさ、明後日にワイバーンの買取代金やらもらったらすぐ旅に出た方がいいか?」
『うむ。さきほどダンジョンの話を聞いて興味が湧いたからな。すぐに行きたいぞ』
「いや、何度も言うようだけど、ダンジョンは入らないし。それに、ダンジョン都市ドランの前にクレールっていう街にもよらないとダメなんだぞ」
『む、そうだったな。そこで依頼を受けねばならんのだろ?』
「そういうこと。でも、フェルなら簡単だろ?」
『まあな。我にかかれば造作もないわ。さっさとそのクレールという街の依頼をこなしてダンジョン都市に向かおうぞ』
「そんなすぐには行かないぞ。この国では自由にしてもいいってお墨付きがあるんだから、せっかくだからクレールも少し観光したいし、紡績が有名な街らしいから服も新調したいしさ。何日かは滞在するぞ」
『むっ、ダンジョン……』
「そんな急がなくてもダンジョンは逃げないって。それに急ぐ旅でもないんだからさ、ゆっくりいろいろ見て回るのもいいじゃないか」
『ぬぅ、仕方がない』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さて、飯にするか」
『うむ。ワイバーンの肉だ』
「はいはい」
ワイバーンの肉をアイテムボックスから取り出す。
それにしても高級そうな肉だなぁ。
見た目は雑誌やテレビのグルメ特集なんかでよく見る和牛A5ランクとか言ってる肉にそっくりだ。
さしが入っていて、見るからにいかにも高級そうな肉。
何を食っていたかによって肉質が変わるっていうけど、この肉を見ると、ワイバーンは余程いいものを食っていたんだろうな。
それなりに強い魔物みたいだからそれも頷ける話ではあるけど。
こういうのはあれこれ手を出さずにシンプルなのが1番美味いかもしれないな。
そうなるとやっぱりステーキか。
それならばとネットスーパーを開いた。
これだけいい肉なんだから、塩と胡椒にもちょっとこだわったものを使いたい。
塩の売り場を見ると、1つの商品が目に留まった。
何々”海水を塩田に引き1年以上かけてつくった天日塩”だ?いいな、これ買いだ。
あとは胡椒か、お、これいいな。
目をつけたのは、ミル付きブラックペッパーだ。
黒胡椒が粒のままボトルに入っていて、ボトルの先を回して挽きたてを使えるようになっている。
この2点とあとこれだけの肉なんだからワインも一緒に楽しみたいからワインも購入する。
ワイバーンの肉をステーキ用に厚めに切り分ける。
フライパンに油をひいて、強火で熱していく。
引いた油はワイバーンの脂身を使ってみた。
ワイバーンの肉に塩胡椒をして焼いていく。
いい肉だからレアでもいい感じだから、両面をさっと焼いていく。
見た目は実に美味そうだ。
よし、まずは味見を……パクリ。
……うんまっ。
何だこれ、めちゃくちゃ美味い。
とろけるように柔らかい。
そして口いっぱいに肉の旨味が広がる。
味としては牛肉に似ているな。
ボーナスが出たときに、奮発して有名店で食った国産和牛のステーキを思い出す。
いや、それよりもワイバーンの肉は美味いな。
『おい、我にも早く』
『スイも食べたいー』
「ああ、すまんすまん。今焼くからな。この肉は肉自体が美味いから、余計なものは付けない方が美味いと思う。ここはシンプルに塩胡椒だけで焼いていくからな」
ワイバーンの肉があまりにも美味かったからついね。
『何でもいいから早くしろ』
『あるじ、早くー』
フェルは涎垂らしてるし、スイもすぐにでも飛びつきそうな感じだ。
急いで塩胡椒をしたワイバーンの肉を焼いて出してやる。
『おお、やはりワイバーンの肉は美味いな』
『このお肉柔らかくって美味しいねー』
ワイバーンの肉、美味いよなぁ。
あの見てくれからは想像できない味だよ。
フェルとスイの追加の肉を焼く傍ら、俺もワイバーンの肉を食う。
ワインもコップに注いでと。
もちろんワインは赤だ。
とろけるように柔らかくて美味い肉とワインだなんて、なんか贅沢な気分だな。
それから俺たちはワイバーンの肉を十分に楽しんだ。
フェルとスイは何回もおかわりして腹いっぱいになるまで食ってたぜ。




