第百一話 海までの旅のルート
今日は100話と101話更新です。
「それで行き先は決まっているのか?」
ギルドマスターの部屋で向かいに座ったギルドマスターが聞いてきた。
「行き先というか、海へ行くということだけは決まってます」
『うむ。海だ。クラーケンとシーサーペントを食いに行くのだ』
「ということです」
「クラーケンとシーサーペントか、またどえらい名前が出てきたな」
「何か、すんません。フェルが美味いんだって聞かなくて……」
『む、あれは美味いのだぞ。それにたまには海のものを食うのもいい。お主に料理してもらえば、きっと更に美味くなるのだ』
あーはいはい、分かったから。
「そういうことで、海に向かいたいと思ってます」
「海か、ちょっと待ってろ」
そう言ってギルドマスターが立ち上がり、机の引き出しから紙を取り出した。
「これがこの国とエルマン王国の地図だ」
机の上に広げられた地図はレオンハルト王国とエルマン王国の地図だった。
この国とエルマン王国だけの地図でけっこう詳しく書いてある。
ちなみにこの地図はレオンハルト王国とエルマン王国の冒険者ギルドではどこでも売っているそうだ。
「海へ行くならば、この道を通って行ってくれるとありがたいのだがな。道も整備されているからおすすめということもあるが、3つの主要都市を通るからそこで依頼を受けてくれると助かる」
「それはいいですけど、3つの主要都市ってどこなんですか?」
「ここから出発してまず着くのは、このクレールという街だ。そこを通って次がダンジョン都市ドランだ。そして次のネイホフ。終着が海の街ベルレアンだ」
ギルドマスターが指さすところを辿ると最後には海に面したベルレアンという街に着くようだ。
最初に着くクレールという街はこの街ほど大きくはないが、紡績で有名な街らしい。
色とりどりの糸や布を求めて商人も集まってそれなりに賑やからしい。
その次のダンジョン都市ドランは、その名前のとおりダンジョンがあるらしい。
ダンジョンがあることで、冒険者も商人も集まってかなり大きな街のようだ。
このカレーリナの街はレオンハルト王国でも5番目に大きな街だが、その上は王都とこの国にあるダンジョン都市3つで占められているそう。
ダンジョンがあれば街は栄えるってことだな。
大きな街らしいから楽しみではある。
そしてネイホフの街は焼き物の街で陶器工房がたくさんあるとのこと。
風呂もここで作られているらしい。
そして最後が漁港の街ベルレアンだ。
新鮮な魚介を食うならこの街と言われるほどに有名らしい。
この世界は海にも魔物がいて普通は漁もままならないらしいのだが、ここの街の漁師はその魔物をものともせずに漁をするんだそう。
ベルレアンの漁師は強くなきゃ務まらないっていうのは有名な話らしい。
魔物をものともしないとは随分アグレッシブな漁師だな。
まぁそのおかげで、この街ほど魚介が豊富にある街はないと言われているそう。
魚好きの日本人としては、魚介類は非常に楽しみだ。
「このダンジョン都市ドランは中でもおすすめだぞ。冒険者が集まっているから、武器・防具屋も多いし、食い物も美味いぞ。それにダンジョンから出た珍しい品も売ってるしな。そうだ、時間があるようならダンジョンに潜ってみるのもいいかもしれないぞ」
『ぬ、ダンジョンか。人の街にあるダンジョンは初めてだな。面白そうではないか』
フェル、ダンジョンに反応しないの。
なんか嫌な予感がするな……。
『ダンジョン? 戦うのー?』
ああ、スイが鞄から這い出してきちゃったよ。
『ああ、そうだ。スイ、ダンジョンに行くぞ』
『ダンジョン~』
何故かテンションが高くなったスイがポンポン飛び跳ねる。
「スイ、飛び跳ねないの。おい、ダンジョンなんて入らないからな」
ダンジョンはもうコリゴリだ。
絶対にダンジョンには入らないからな。
『ダンジョンか。いいことを聞いたな。早く行こうではないか』
『スイもダンジョン行くー』
「いやいや、入らないってば。それに行こうじゃないよ。まだだぞ。ワイバーンの買取代金やらをもらってからだから、出発するのは早くても明後日だよ」
俺とフェル(スイは念話だから俺とフェルにしか聞こえない)の会話を聞いてギルドマスターが笑っている。
「ハハハ、ダンジョンを楽しみにしているのはいいですが、ベルレアンの街までの途中の街での依頼もよろしく頼みますよ。もちろんドランにも残っている依頼はあるはずですから」
『分かっておる。我にかかれば、そんなものすぐに終わるわ。それからならダンジョンに入るのもよかろう?』
「ええ、もちろんです。ドランのギルドマスターにもよく伝えておきますので」
『うむ。人の街のダンジョンか、楽しみだ』
『スイも楽しみ~』
「いやいやいや、だから入んないからね」
聞きたいこと聞いて言いたいこと言ったら、フェルはまた寝てしまった。
相変わらず人の話を聞きやしない。
まったくこいつは、はぁ~。
「ハハハ、お主も苦労するのう」
「ええ、苦労してますよ」
「この地図はお主にやるから、くれぐれも依頼の方よろしく頼むぞ」
「分かりました。ギルドマスターも途中の街への連絡よろしくお願いしますね」
「ああ、分かった。あ、それからさっきの地竜だがな、ドランなら解体が可能かもしれん。その辺のこともドランのギルドマスターに伝えておくことにしよう」
「ありがとうございます。あ、それと、商人のランベルトさんが聞きに来たら俺がどの辺りにいるか教えてもらえますか」
冒険者ギルド間で転移の魔法道具で手紙のやり取りしてるって話だから、俺たちがどの辺にいるかってのも筒抜けだろうしね。
「ほーランベルトさんと知り合いか?」
「ええ。いろいろとお世話になってます。それにワイバーンの皮でマントをお願いすることになってるんです」
「なるほどな。分かった。ランベルトさんが来たら伝えよう」
「お願いします。それじゃ、明後日また来ますんで」
こうして俺たちは冒険者ギルドを後にした。
「さてと宿に帰るか」
『うむ。今日の飯はワイバーンの肉がいいぞ』
「分かってるって」
ワイバーンの肉かどんな味なんだろう。
想像できないな。
倉庫で見たときは、さしが入っていてなんか和牛みたいな見た目だったけど。
高級食材みたいだから、不味くはないはずだ。
ちょっと楽しみだな。