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ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【一章】

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TALE#9 俺。異世界初の戦い。

どうも、涼風てくのと申します。
 たちどころに(ほう)られたのは、古ぼけた民家という、いかにもな雰囲気を(たた)えた建造物の中である。苔むした建物のうち一つ、その中にカーテン一枚で仕切られたベッドの部屋にぶち込まれた。今度は隔離施設かなんかか? 一体どんな仕打ちを受けるのか楽しみだ、というのが今のやけくそな心の内の言葉である。

 ところで、「誰か来ないかなあー、ああー、」
 隣のお供が例により、アンニュイな状態で手のつけようがないから正直言って面倒臭い。そう言えばアンニュイって何語だったっけ。
 俺はベッドに寝転がったまま、左手側のカーテンをひょいと(めく)りながら、
「ねーよ」
 とだけ言っておいてやった。そんなことを言いつつも、もしかしたら。あの人が助けに来てくれるかも知れない、という淡い期待を捨てきれずにはいられ無かった。ここの待遇には祈りを捧げるしか無い。

 因みに見ての通り、ここ最近のトレンドは三人になったかと思うと二人に引き戻されるというジレンマ的サイクルのようである。ハリネズミでもヤマアラシでもジレンマはいい加減に、複数人での行動をさせて頂きたいところだ。この状況じゃ二人の親睦云々も進められそうに無いしな。
 ここの隔離施設に着いてからというもの、特にこれといった説明は受けていない。拉致されたのだから、むしろあった方がおかしいのだが、ここで抗議するということはしないでおこう。俺以外に連れて来られた人間たちがわんさかと抗議をしてくれているからね。
 建物は長方形の形をしており、大きさとしては大体学校の体育館がちょうどいいと思う。勿論、天井はさして高くはなく、長押に至っては手の届く範囲であり、木の匂いが間近に感じられる。ベッドの枕とは対照的な位置に、長押――そもそも長押と言っていいのかわからん――から床までを覆うガラスがあり、日光が凄まじき勢いで飛び込んできている。但しそこから見える光景は全く正反対の印象を与えられるけど。


※※※※※※※※


 ベッドにいくらかの間寝転がっていた後、俺はジーンズ右側後方のポケットに違和感を認め、ベッドの上で(まさぐ)ってみる。
「こいつを忘れていたか……」
 そう言いつつ俺が仰向けの状態で(まばゆ)いガラスへとかざしたのは、黒いスマートフォンである。ここに現世界の物体があるというだけで心強いのではあるけれど、どうにも思った通りの操作は行えないようだ。
 表示されているのは今日俺が体験してきた事が駄文で記された画面、横書きのラノベ調の文字列である。

 この際はどうやってそれが文章に書き起こされているのかは無視するとしても、どれぐらいの範囲の事がここに書かれるのかは気になるところだ。今考えた事、行動した事が手取り足取り反映されて文章となるのだろうか。俺が右手を上げれば、俺が右手を挙げた、とこの場合は直球過ぎるが、そう執筆されるのか。

 結果から言えば予想通りだった。この際とにかく駄文でも何でもいいからどんどん書いて頂く事にしよう。これで自らの伝記が出来る。これでは書籍化も夢じゃない。
 少し調子に乗って、右側の床に転がっている竹刀をベッドの上から掴み取る。俺が人生で二度と握ることも無いだろうと確信していた逸品であるが、この際どうでも良い。床に立ち、竹刀の素振り。取り敢えずは調査である。何事もまずは実践が肝心だ。……誰も見るなよ。

 やはりと言うべきか反映されている。行動だけでなく、ある程度の思考がややタイムラグはあるようだが、きちんと文章として書き起こされる。これは素晴らしい、人類最大の発明となること間違いナシだ。
 神様は異世界にぶっ込まれても大したアクションを見せない俺にいよいよ嫌気が射してきたようである。グダグダとをさぼっているおかげでもあるのかも知れない。

「…………」
 ここに来て、ようやくというべきか、イベントが発生したようである。多少説明をすると、十代前半と思しき少年が俺の前で仁王(におう)立ちをしているのである。その彼はこちらをひとしきり睨みつけた後、果たして口を開いた。いやはや目つきが悪い。
「…………」
 とりあえず、まあ言葉としての声は聞き取れんかった。圧縮言語だったかもしれん。
 右手側にあるカーテンを俺は邪魔そうにするふりをし、左手に握ったままの竹刀をどうしようかと考えていたが、うむ。どうこうする必要は無さそうだ。かくして彼は強硬手段に走ったが、俺氏謎の抵抗。これは相当に胸熱な展開か……。
 彼は僅かの間奪取を試みた後、どこかへ行方をくらましたかと思うと、今度は彼が直々に右手に竹刀を携えてやってきた。
 そう言うわけで、俺の異世界初戦闘が今ここに始まった。
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