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ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【序章】

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TALE#3 ライトノベルと転移

どうも、涼風てくのと申します。
“「ああ、あー、……んあ?」

 見たことのない天井。というよりかは、見たことのない光景――が、頭上には広がっていた。
 と言うのもここは森林のど真ん中。シラビソやトウヒの木がうっそうと茂っている。木々の隙間からわずかに漏れる光が妙に心地よかったからか、うたた寝をしていた。
 と、軽く済ませるにもいかないことになっている。

「……どこだここ」
 まず、起き上がらない事には何も始まらない。おもむろに身を起こし、周りを見渡す。
 何もない、か。
 何より前後の記憶が全くないのだから困ったもんだ。いや、後の記憶に関してはあるわけもないけど。
 そんな無意味なことを考えつつ、今いた場所に目印を残し歩みだす。とにかく道か何かを見つけないとまずい。

 どこかの文豪が書いていたように、『斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。』という文が良く似合いそうな光景が眼前には広がっている。
 日没までに時間がある、と言いたいところではあるが、何せ森の中である。森の中を一人、さまよっていれば時間はあっという間に過ぎ去ってしまうだろう。その点を鑑みれば時間があるとは言えない。

 時間の経過、孤独感などで不安が募り、自然と歩を進める速度が速くなる。
 しかし、今日動きやすいものを履いてきたのは正解だった。今更ながらにそんなことを考えていた時のこと。

「あ……、あったあった」
 そう言い、俺はうす汚れた服でにやけてしまった。
 運が良くも少し先の方、そこに小屋を発見。ログハウスのような丸太小屋。いやはや、目が良いことの便利さをつくづく実感する生活だなあ。

 近づいてみると、多少朽ちたものではあったが、一晩を過ごす分には差し支えない程度の佇まい。今日は日暮れもすぐそこまで迫っているし、泊まらせていただくとしよう。そうと決まれば善は急げだ。いや、この場合は思い立ったが吉日、といった方がふさわしいかな。
 ガチャ、という音を立てながらドアを開けた直後、俺はその動きを止める。

 てっきり中には誰もいないものと思っていたのだが、どうやら先客がいたようだ。果たしてその言い方が正しいかはともかくとして。
「あ、あれ…………えっと」
「お待ちしておりましたっ」

 何もない部屋に、トパーズ色の髪をしたツインテ少女がひとりでに立っていた。”





「うおおおおおおおっ、この先の展開どうしようっ」
 長くパソコンと向き合っていた疲労で俺は椅子の上、盛大に伸びをする。
 頭に浮かんだことをアウトプットするのもそれなりに疲れるなあ。物語の構成を考えるのも楽じゃない。

 森の中を彷徨っていた主人公とヒロインが出会う。そこまでは良いだろう。じゃあその次のアクションは? ここから話をどうつなげていく? と考えた時にどうしても詰まる。
 てっきりある程度の本を読んでいれば何とかできるだろうと甘く見ていた節があるが、現実問題そんなわけもなかった。

「森の中の小屋で二人が出会ったの?」
 横にあるベッドに座り、足をプラプラさせている真紀が言う。
「おうぅ、そうだ。なんかないかあ?」
 椅子の上にふんぞり返った体勢で言うもんだから声がうまく出なかった。
「ううん、とりあえず何かしらの会話を続けさせてみるしかないでしょ?」
「まあ、そうする他ないよな……」
 そういうわけで俺は再度、キーボードの打鍵音を部屋に響かせ始める。

“「お待ちしていたって、まずお前はいったい誰なんだ?」
「はい、私はハート=モナ=フィルギャと申します。『フィル』とお呼びくださいねっ」
 そう言って金色の笑顔を向けてくる少女――フィルは言う。”

「何そのいかにもインターネットを使って何時間も検討した挙句それっぽい名前に落ち着いたは良いものの、どれをファーストネームにしようかでまた長いこと考えて結局フィーリングで決めたみたいな名前は」
「どうやったら名前だけでそこまでの情報が読み取れるんだよ……」
 もちろん俺に限って名前一つでそこまで苦労することは無い。こんなこともあろうかと、よさげな名前のチェックは常日頃からしているのだ!

「というわけでだが、この後洋服の設定なんかをしようと思うんだが、どうやって文章にすればいいんだ?」
「いや私に聞かれても何ともね」
「お前今まで色々書いてきてんだろ」
「とりあえず適当に書いてみれば?」
「いやもちろんそうするけどな、お前は何のためにここに居るんだよ」
「私がここに居ることを問うのは人間の存在意義を問うのと等し」
「なるほどよく分かった!!」
 わけ分からん。

「『婦警さん風のワンピースです。ワンピース全体は手触りがよく伸縮性のあるネイビーの生地を使い、ベルトやポケットなど、部分的にビニール調の光沢のある黒生地を使用。本格的なドレスではなく、お遊び用のコスプレっぽいかわいさを目指して作りました。それでも、セクシーな感じになりすぎないようスカート丈や襟ぐりの開きに気を使って、上品さをキープしています』という文章をそのまま流用させて頂こうと」
「ただのコピーペーストだよねそれ!?」
「因みに『カラーパニエ(ブラック)』と『フリル使いのレースアップブーツ』を同時にコーデだ。このブーツのリボンとか高級感あふれるフリルなんかが黒ですごくかわいいんだぜ」
「その性的嗜好の方が……ていうかまず、それを作品に合うように表現しないとだめなんだよ?」
「まだ投稿してないし何とかなるだろ」
「はああ、もう誰が森の中で迷ってるのか分からないわ……」

“見るとその少女はネイビー色のワンピースを着ていた。
 首にあるベルトのボタン。ウエストの太めのベルト。両胸のフェイクポケットにあるボタン。さらに肩章。ギャザーを寄せたローウエストのスカート。裾にフリルのついたアンダースカート。極めつけは黒色のブーツ。
 見れば見るほどにかわいrasikuteeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeくぁwせdrftgyふじこlp”

「くっ、やっぱ無理があるなこれ」
「そもそもの話、その文章が世界観とあってないような気がする……」
 世界観があってないとわかっても、どうやって対応していけばいいかがわからない。
「あー、どうすればいいんだろう。体験したことが勝手に文章になれば簡単なんだが」
 まあ、そんな便利なものがあったら世の中はとんでもないことになりそうだな。

「やっぱりこだわり過ぎないほうが良いんじゃないの? 細かすぎるとわかりにくいしね、って」
「いやいや何を言ってるんだ貴様は? 異次元の少女だぞ? 可愛くてなんぼのだ! それをないがしろにするなんて我慢ならねえ! 『うふっ』って笑うことを許される唯一無二の存在であると言っても過言ではないぐらいの奴! わかるだろ!? しかも無料で服装の選択ができるんだ! これを使わないなんてもったいないの極みだ!! 何のためのもったいない運動だ!」
「やっぱりテンションの差が激しいよね……。それが創作の醍醐味かもしれないし、共感できないではないけど。いきなり完璧にする必要はないんじゃないの?」
 引き気味に真紀が言う。あまり共感は得られなかったようだ。
「ふっ、待て。ワンガリ=マータイさんも言っていただろう。3Rしろってな」
「それに至っては全く関連性のかけらもないと思うんだけどね……。まあとにかく、頑張ってよ。今日中に投稿するんだからさっさと書かないと」
「へいへい」

 でもこうしてみると、小説を書くのってある種の異世界転生なのでは? と俺は感づいてしまった。これはついに2次元の世界に行く禁断の方法が解明されてしまったか。長年期待されていたことがついに……。

――ふわぁ……、もう時間が無いよぅ。
「あんまり気の抜けた声で言うなよ」
「いや私は何も言ってませんけど」
「あんまりキレるなよ……。じゃあ誰が言ったっていうんだ? そもそも今何か声、聞こえたよな?」
「まあ声みたいなのは聞こえたけど」
「じゃあ空耳ってことは無いだろうしなあ。まあ気にしてても仕方ねえか」
「……まさか、招かれざる客人が」
「ちょっと何言ってるかわからないぞ。いやちょっとどころじゃない」
「はいはい良いから書いた書いた」
 何故だ、何故俺がたしなめられているんだ。


“何をとってもかわいらしい。

「で、何で俺なんかにお仕えするんだ?」
「それが私に与えられた使命なのですっ。否が応でも付き従わせていただきますよっ」
 そういって微笑む少女。どこか切なげでもある、だろうか。
「使命……ね、質問攻めで悪いが、どうしてそんな使命なんかを持っているんだ?」
「ご主人を守護するための存在ですからっ」
「ふうん……? 守護する存在、ね」
 俺は相手の、フィルの目を見て言う。髪の色に近く、奇麗な金色の目をしている。

「もしかしてオーケーしていただけるんですかっ?」
「そうだなあ、ただし一つ条件がある」
 そう言うとフィルは怪訝そうな目をこちらに向けて、「何でしょう?」と。
「はきはきと喋ってもらうのは構わないんだが、いや、敬語は使わなくて良いってことだ、話しづらいから、な」
「うはwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwツンデレ乙wwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」”

…………って
「お前何打ってんだよ。興ざめするだろ」
 そんな感じで興がのっていた俺である。これが楽しいかどうかはともかくの話ではあるけどな。
「どうしても我慢できなかったから」
「言い訳にもなってねえよ……」

 そんな他愛もないやり取りを交えつつも地道に続きを書き続けていった。ある程度区切りのいい箇所が見えてきたので、そこを目指してまとめていくことにする。
 聞いた話によれば、一話当たりの文字数は二、三千程度で問題ないそうなので、早いところで切り上げていこう。
 軟禁され始めたのにシリーズものとしてしまう、という重大なミスを犯してしまったことに気づいたが、後悔先に立たず。というわけで俺はめでたく軟禁コースへ。この先のことを考えると目頭が熱くなるな。


“「何はともあれ、どうしてお前はここにいたんだ?」
「ご主人がここに来るという未来だったからでしっ」
「ふうん」
 敬語を回避しようとしたためか、語尾がおかしくなっていたが気にしない。まあこの世の中にはとんでもない語尾で話す奴もいるしな。そこら辺は表現の自由という事にでもしておこう。人の権利だ。

「そういえばお前は寒くないのか?」
 薄暗い部屋はランタン一つ、その光によって照らされている。

「寒くはないですよ。お気遣いなさらず」
「それならそれでいいんだが、この後はどうするんだ? 何か食事でもとれたりするのか?」
「ひとまずここは…………?」

 そのタイミングで、ザッザッザッザ、と足音が一気に近づいてくる。
「な……なんだ?」

「だあぁぁぁぁっ、危なかったっ、と。だいたいあんな大きな狼が……あれ」
「…………。」
「…………、どちりなきりしたん?」
「いやそれ方言でも何でもないですよ……。語尾がそれっぽいっていうだけで、判断してしまうのは早計だと思います」
「って何なんだあんた達は!?」”


来た。きた。キタ。きたきたきたきたあああああああああああ!!!!
 ばっ、と起き上がり叫ぶ。
「出来上がったぞおおおおおおおおおおお!!」
「結局自分で叫んでるじゃない……」

――好機到来! 時機到来! この時を待っていた! ってね。

 その声とともに空中に影が落とされる
「ぐっ……!」
 そこから何かが現れた、途端、とてつもない爆風が巻き起こり、窓ガラスが割れる。机の上のものが吹き飛び、体が壁へと吹き飛ばされる。
「ど、泥棒かっ!?」
「スタイリッシュすぎるでしょうがっ!」

 そんな真紀の声を聞きながらも、俺の意識は薄れていく。爆風が強すぎて思うように動くことができない。
 ドアに打ち付けられた真紀はもう、気を失っているのだろうか。そんな思案を最後に、俺の意識は途絶えてしまった。





――お仕事完了……かな?
 気の抜けた声とともに、その部屋からは――誰もいなくなった。

「何が起こった……」
 という声を残して。





「ああ、あー、……んあ?」

 見たことのない天井。というよりかは、見たことのない光景――が、頭上には広がっていた。
 と言うのもここは森林のど真ん中。シラビソやトウヒの木がうっそうと茂っており、太陽の光はあまり届いていない。


「……どこだここ」
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