挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【一章】

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

14/16

TALE#14 意外と上手くいくかもしれない件

どうも、涼風てくのと申します。
 程なくして抜けた森の先に、商店街の一端があった。そのまま流れで、レストランのような場所に入った後だ。部屋は薄暗く、眠気を誘うほど閑散として人っ子一人居ない。
 気絶していた奴が若干一名いたが、今は持ち直しているらしい。もっとも起きていても寝ていても変わらないようだが。

「百枚もありゃ、こりゃ遊び呆けられるぞ!」とカトレア。
「だれの金だと思ってるんだ、後何年いるかもわからんのに」頬杖を突きながらで舌がもつれ気味になった。
「最近の心労は凄まじいです」とフィル。
「ずっと寝てただろうが」俺の方が翻弄されてるだろ。
「報酬が無いと何の利益も上げないぞ」と今度はアリシア氏。
「俺に何の利益があるんだよ、逆に」いや、明らかに無い。
「ふふふ、日々の心労を癒さんとな、とりあえず先払いという事だ」
 そう言ってアリシア氏は運ばれてきた料理に手をかけ、俺の訴追からトン面をこく。
「これからの事は任しておけって、心配せずとも何とかなるだろ」とカトレアは言う。
「先の事はわからないもんですねー」
 そこにフィルの追い打ちがかかった。いい加減腹が立つな!
「自分の意識があるのは今だけだ。未来には無いんだぞ」
 深い事を言って気を紛らわすなよ……。

 腕時計に視線を流してみると、今日も既に朝八時を回っている。起きたのが六時前後だったから、二時間も経過しているという事か、中々早いもんだ。
 外を見る限りでは、今日も雨なんかちっとも降りそうな気配も無い、すこぶる青空だ。商店街なんかをうろつくには絶好の天気。先が察せられるな。

「それはそうと、明後日はまた掃討の日になってるんだ。どうせなら便乗して行くか?」
「稼ぎになるんなら便乗しよう」とアリシア氏。いちいち厄介事を引き受けるな。
「うちからは何も出ないが」と俺から斜め向かいのカトレアが目配せをしてくる。
「ちょっと待て、俺に利益が無いだろ」
「はっはっは、早いうちに何とかしないと赤毛んなるぞー?」といってカラカラと笑うカトレアに、俺は怪訝な目をする。
 数瞬の沈黙が降りた後、フィルがそれを破る。
「それはまた大掛かりな事をするんですね」

「そりゃあそうだ」と二房の深紅を揺らしながらカトレアはそう言ってから、口に含んでいた物を飲み下す。「一体奴の大きさは計り知れないぜ。あれから何十年と戦っているが、一度だって惜しい所までなんか行った事は無いし、その内にこんな有様だよ。それをだ、明後日いきなりやろうという訳じゃなくて、これは前々から明後日と決まっていたんだ。だからこのタイミングで隔離施設の有志達も決起した、というかそういう手筈(てはず)になっていたというわけ。準備はある程度していたけれど、まだまだ戦い方のコツを掴めていないもんでね。それを強運と称せられている君の主人に何とかしてもらおうというわけさ。もっとも、今日のあの様じゃ期待はし難いけどね」と、俺の周りの奴にしては珍しく熱弁を振るっていた。
「はああ、それは大層ですね……」適当にあしらうのかよ。
「便乗したいというわけじゃないがそいつを倒すとどういう利益があるんだ? 俺じゃなく周りに。やっぱり人的被害か?」
「それもない事は無いがな、やっぱりあれさ、鉄道の利権だか何とかと――」とそこでカトレアは言葉を切る。「解放、かな」

「ふうん」厳めしい単語が出てきたので俺は反射的に話から引き下がった。話が何かと重い方向へと進んでいくのは奇妙だった。
 フィルはここにおいても早食いぶりを発揮し、一番乗りで食事を済ます。それでいて食べた量が少ないわけでは無い。そしておもむろに鼠色のスプーンをつかつかと鳴らし始めた。
 転移して(のち)、ここの風土は中々理解しきれない。エントランス扉から見える行き交う街の人も、どことなくぎこちないような動きに見える。
 どこまでが本物なのだろうか? いや、それとも異世界だ、当然なのかもしれないな。なんて思わせぶりな風に考えてみる。そして一つ思いついた事があった。中々の妙案だと自負するようなそれだ。
「一つ、試してみたい事があるんだが」


 現代では半ば廃れている商店街、かつての勢いの跡形も無いその姿は時代の移り変わりを実感させる異物と化しつつあるように思う。それに反するこの商店街の光景を目にすると、違和を感じるのも当たり前だったかもしれない。

 そしてその中に、一軒の靴屋がある。店先には何故かしら、ガラスの靴を持った三十路程度の店主が居る。その内の片足分を大切そうに構えながら、道行く人を品評するかのように凝視していた。とりあえず一か所目はここにしよう。
「さあ、着いたぞ。お前がやるんだ」と、俺はフィルの方を凝視しながら尊敬のまなざしで見つめる。
「は?」とフィル。
「このガラスの靴にピッタリ足のサイズが合えば、この露店ごと貰えるらしいぞ」
「いや、いらないっす」
 急に体育会系になるなよ。
「まあそうむきになるな、別にあからさまに店主が露店をやめたそうとかそういうんじゃないんだからさ」
「はああ、足のサイズが寸分(たが)わずぴったりと合致する確率がどれくらいだと思っているんですか……」
 フィルはやれやれといった(てい)で肩を(すく)めながら、店主の女の人が持っていない方の靴へと素足を突っ込む。店主の人が、小声で「むむむむ……」と呟いているのが(かす)かに聞こえる。その内に、ガラスの靴に足が入りきる。少なくとも小さ過ぎるという事は無い、というかむしろ完全一致している。ガラスだからして、外側から丸見えだ。

「ひ、ひえー」と愕然としたフィル。
「よし、ご苦労様だったな。お前はそのままでいいんだぞ」
「そ、そんなぁ!」と(すが)ろうとするが、店主に「グギギ」と効果音が付きそうな勢いで抱きしめられ、拘束されているため追ってくる事は出来ずに、白い花を咲かせていた。
 見てみると、カトレアとアリシア氏も見て見ぬふりをしてフィルの命乞いを退けていた。

 続いて二ラウンド目、質屋。
 結局さっきのガラスの靴は奪取して来たのか譲り受けたのか知らんが、フィルが泣きながら猛ダッシュで持ってきた。それを容赦無く質屋に売りつけようという算段である。何事にも犠牲は必要という事にしておこう。
 さて、それを差し出すと、質屋の店番をしている幼女が目を煌めかせながらそれを見つめる。途中で俺の次にまともなアリシア氏から「なんで幼女が店番をやっているんだ?」との突っ込みが入ったが、誰も答えなかった。そりゃそうだ、本人以外知らないもの。

「……………………どうだ?」
「ぬほおおおおおおおおお!! これは十枚物の逸品!! 喜んで買取させていただきますぅ!!」と無邪気な声で言った。
「そんな馬鹿な……一体どんな魔法を使ったんだ」
「折角異世界なんだから魔法使いになりたかったよ……」
 それから他にもやりたい事がいくつかあったのでそそくさと幼女の元を後にする。

 お次は三ラウンド目、酒店。
 利き酒だ。この場合、七種の酒の銘柄を、自分で推測するというもの。ここは一番年長、――そうに見える――のアリシア氏に試して貰ったが、案の定というか全正解で、七瓶全て貰えた。荷物持ちは無論俺。アリシア氏は目を半開きにして意識が半分程飛んで行っている。時たま譫言(うわごと)を呟きながら。

 時が過ぎてもうすぐ正午になろうかという時刻、一行は昼食を確保、例の大鉄道へと向かって行く。
cont_access.php?citi_cont_id=423076696&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ