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ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【一章】

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TALE#13 ケモノの森

どうも、涼風てくのと申します。
 思わずため息が漏れていた。
「一時はどうなる事かと思ったぜ……」
「どさくさに紛れてここまで来たのは正解だったね」
 そして意気揚々とそう言うのは、半日ぶりのアリシア氏だ。
「アハハハいきなり居なくなるから迷子にでもなったのかと心配したよ。全く世話の焼ける奴だ」
「そりゃ済みませんね、生憎俺もここらは見知らぬ地なもんだからな、すぐにお出迎えがあるとは知らんかったぜ」
 そう俺が言うと、彼女はすこぶる笑顔で前へ向き直った。

 俺達が散策している森の中では、緑の葉が(しき)りにそよぎ、心地よい音を奏でていた。さっきの建物からは想像もつかないほどの静かさで耳が癒される。
 少し気がかりなのはあの人達をあそこに放置してきた事だが、今の俺には幸運を祈る事しか出来なかった。抜け駆けした俺に続いてくれればいいが……。昨夕(さくゆう)の爆破事件というものがあったことで、(いささ)かなりともパンク状態だったようだし希望はあるだろう。

「所で、そっちの奴はまだ離さないんですか……?」
 腕の拘束はフィルに関しては未だ解かれていない。
「ちょっと目を回しているし、仕方が無いよ。で、そんな事よりも、早くここを抜けて仕舞わないとケモノに襲われるよ……」
「だから俺は見知らぬ地! あんたが先導するんだよ!」
 アリシア氏にへらにへらと笑う。
「ここに入っていく人間は速攻で怖気づいて逃げ帰ってくる奴か、二度と帰ってくる事が無いとか言うんだ。かく言う私は入った事が無い」
 じゃあ早く抜けましょうや。
 彼女氏の内からは際限の無い楽天主義的思考が湧いて出てくるようで、鼻歌を歌わんばかりの勢いだ。見た目には年上であるからして距離感が掴みづらい。異性と接する機会が普段は無いので余計プレッシャーがあるのだ。

 そんな感じにドギマギしていると、こつっと地面から張り出した木の根に躓いた。こんなに森の中を突き進むのなんて、森の中で友達と捜索をした時以来だが、履いているものがブーツだというのも(あだ)となったに違いない。そういえばどうしてブーツを履いているのだろう。確か転移する前は部屋に居て……、それからどうしただろう?
 立ち上がり、よろける足で前を向くと体が強張った。霧のような靄のかかったはっきりとしない映像が己の記憶を刺激する。さっきの様な幻覚とはまた違うもののようだと直感で感じた。それよりはどこかでぼんやりと見たような誰かだ。もしかすればただの夢だったろうか? ただの夢――

 その時、ガサゴソッ、と頭上で物音がした。反射的にびくっとしながらも振り仰いでみると、一匹の白鼠が器用にも枝の上を走り渡っていた。恐怖感に襲われて心拍数が上昇した。ヒヤヒヤさせるなよ。

 一拍置いてまた、背後で物音がした。今度は何ぞやと振り返ると、お次はイノシシのようだった。白い牙を大きく逸らせて、耳よりも高い位置に突き出させながら猛進していた。

 物騒な森だ。こんな中に(しばら)くいれば、歩調も自然とおっかなびっくりになる。今度は血の気が引くような感覚がした。
「鎧を着てて良かったな」と、アリシア氏は一人、心底満足しているようだった。
「そういえば今日はやけに軽装備じゃないですか、一体それで大丈夫なんですか、俺には不安因子しか見出せませんが」
「そういう物は一切部屋に忘れてきた」
 おい。
「今日は富豪が居るという訳で安心しきっていたんだな、仕方ない」
 そんな期待したような顔で俺を見るな。仲間になるには端折り過ぎだぞ。
「俺を置いて一人合点しないでくださいよ、あっ」また一つ背後から物音が聞こえてきた。「言わんこっちゃない、なんか厄介なものが……」
 何となしに横目でフィルを見やるが、彼女は相も変わらず目を回し続けているようだった。

「来るっ!」とアリシア氏が叫んだ。
――バッ、と現れたそれに俺は、身構えていながらも心底びっくりしていた。
 それは灰色の毛のトルーパーキャップの二房を揺らしながら飛び込んできた。それに対する自分自身の反応は遅々として進まず、(しま)いには硬直しかけていた。
「うおおおおおおおっ、あんたら死にたいのかいっ!」微妙にデジャブだ。
「ンな訳あるかっ!」
 俺たち二人プラスアルファは方向を転換し、逃げようとする。転換の時に聞こえてきた後ろからの咆哮には足が笑った。一瞬ばかり死を覚悟した。足がうまく回らない。が、しかし、流石(さすが)なのか、カトレアは俺が怖気づいているのを認めるや否や、だ。腰に巻いているバッグから、ピノッキオの鼻のようなステッキを取り出し、地面に何やら方円を描き始めた。
 数秒の描画の間にも、俺の立ち眩みが強く激しくなっていった。平衡感覚も薄れそうになり頭が痛かった。こんなにストレスに弱かったのか、俺って。
 そんな風に考えている内に、方円は完成し、その中心に赤い色をした鉱石、あの金貨の代わりに渡された鉱石と色違いの奴。それを置いた。
 俺には何の合図かわからないが、カトレアは手をさっと差し出し、俺達を制した。アリシア氏はフィルを面と向かうように(わき)を持ち上げ、抱き寄せていた。妙な光景だ。

「ぶっ!?」
 そして衝撃波が背中側を襲った。背骨が折れかけたような気がした。
 気が付けば俺は体で円弧を空に描いていた。朝焼けの綺麗な空に。そして(すさ)まじき浮遊感を感じた。急降下するジェットコースターのような激しさで。あるいはそれ以上だったかもしれない。浮遊感と共に天地が入れ替わるのも知覚した。木の先端部が体を引っ搔き、瞬間的な痛みを起こす。角度が四十度よりやや浅い。
 他の三人は地面に対して垂直を保っていた。俺達は既に下降を始めていた。浮遊感が増して行く。
「があああああああああああああああっ! ぶつかるううううううううう!」地面が壁に見える。後四メートル。またまた死を覚悟しないといけなそうだ。


 ビッターン。木々の禿げ目に落下する。それから全身にドゴッ、と鈍い衝撃が伝わった。肩に(ちょく)で振動が響く。他は上手く着地しているようで何よりだ。
「いったた……、無事か―っ?」とカトレア。
「んん、何とか」とアリシア・フィルコンビ。
「俺は無事じゃないです……」横たわり続けながら涙目で訴える俺。
「よし、何とか大丈夫そうだな」と再びカトレア。
 なんでだよ。俺が死んだらどうなると思ってるんだ。

「まあ、数十メートルこっちも移動したし、何とか狼も撒けただろう。取り敢えず逃げ切れて良かった。これにて一件落着というわけか……。早い内にここを抜けて商店街にでも行って、一息つこう」と、カトレアは帽子の耳から流れている二房の深紅の髪を揺らしては、俺の脳裏にぼやけた偶像を浮かべでいた。さっきからのこれは一体何なんだ? 俺は夢でも見ているのだろうか? だとすればそれは何だ?

 果たして答えはまだ見つからなかった。
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