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ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【一章】

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TALE#11 スカーレット・カンフィデンス

どうも、涼風てくのと申します。
「なんでこんなに人が居るんだ……」
 俺達は再び呼び出された時刻に、先の部屋を訪れたのだが、異様なまでに混雑している。部屋の中には溢れんばかりの人がひしめいていた。目の前の人だかりは列車の時を連想させる光景だが、あの時よりも人が多い。
 夜ではあるが、各部屋の頭上には白熱電球が一つ、三角屋根付きの状態でぶら下がっており、この点においては共通した雰囲気を醸していた。
「えーぁ、今日ここに集まって貰った諸君には是非とも協力して貰いたい事がある、それはここから抜け出す事である!」
「世界観的にはネタでも取りに来るものだと思ってた」
「……まあ何でもいいんですけどね」そう言ってフィルは半目で欠伸を一つしていた。

 それから老人はトーンダウンして再び話し始めた。
「この収容所から抜け出すと言う事は、生半可では無いと言うのを断っておきたいが」
 いい加減定住の一つでもしたいもんだ。
「まずここは二つの建物からなっている。この二つが直列に接続されて、その部分の出口と共に看守が置かれている。今回は、この両極から挟み込むように脱出を試みようと思うのじゃ。誰か意見か何かあるかな」
 ざわめきも収まって、全員が聞きの態勢に入っており、疑問を挟む者は居なかった。

 その内に演説は始まったのだが、
「何となく違和感があったけど、何だ、殆どみんな髪の毛が赤くないか? 程度の差はあるけど」と、囁くような声で言う。赤毛連盟か何かか。
「言われてみれば」老人のジェスチャーを何となしに眺める。「浮いていますね」再び欠伸。
「何回欠伸するんだ、」
「労働環境が劣悪すぎるので仕方がありませんね」吐き捨てるように言った。

「そうジト目で見るなよ、なんだか気が重くなるな、」梅雨時の曇天よりもじっとりとしている。それを避けるように目を()らしつつ、「たんまりと金銭が有るのに一銭たりとも使わないお前が謙虚すぎるんだな」
 思い返してみる。
 あのカジノで獲得したのが、確か金貨百枚。重要なのは有り難くもカトレアから二枚それを賜ったという事だが、とにかく近似値百枚。それをここまでの道程で金貨二枚弱の消費、残り九十八%。行く先不透明とは言え、十分に遊んで暮らせるような気がする。
「御主人も中々楽観的な人ですねえ、まあそれが功を奏したとは言えますが……」フィルが肩を竦める。
「ぐだぐだ言ってないで有難がっといた方が良いぞ、今後の対応も、あるぞ」
「とんだスウェットショップですね……」

「ああ、俺は企業でもなければブラックでもない、それと妙な英語は使うなって。でもウェットティッシュに似てるな」つまりホワイト。
「くっだらな」
「っ嘆かわしきキャラ崩壊!?」方向性の急展開に着いて行けない。
「声が大きいですよ」
「………………」いかん、このままでは体力がもたない。
「御主人が社会の爪弾きに会う前にここは一つ、ザックリ使わせて頂く事にします」
 なおも続いているジェスチャーをぼんやりと眺めつつ、思う、やめろ。差し当たりの問題は、こいつからの金銭の強奪を防ぐ事になりそうだ、とんだ暇つぶしになりそうな予感がする。

 それから幾分と経たない内に、フィルが人差し指を立て、「いつの間にか話がすり替わっていますが、元のスウェットショップの話に戻りましょうか」と言う。
 そもそもそれじゃあまり戻ってない。
「違う、赤毛の話だ。お前のやや薄い金髪が目立っているという類の話だ」
「ああ、そうですね……、色の濃淡に差があります」微妙に憂鬱さが強まっていた。
「それはそうだろうけど、」
 選ばれる事間違いナシの真っ赤な髪の人がごく少数居れば、俺達ほどではないにせよ、赤の色が薄めの人、種々様々な印象を受ける。異世界特有のエルフか何かは……、居ないな。そもそもエルフは白い髪という印象が有る。
 思い返せばグローバルじゃない俺は赤毛の人間というのを見た事が無かったな。テレビでも見た事は無いか?

 フィルは声をより小さくして、
「そうですね、勿論いい話では無いですが、赤毛の人というのは歴史的に差別が有る、有ったようですね。それからメラニン色素がどうとかの影響で、そばかすが出来やすいというのも有るそうですよ」フィルは唐突に蘊蓄(うんちく)を語りだす。「それに赤毛は転生して吸血鬼になるとか、魔女認定されるとか、まあ良くわからない概念が。いわゆる赤毛連盟という話のミソはそこなのかもわかりませんが」
「ふうん? 大変なんだな」
 当たり障りの無いというか、他人事みたいな言いようになってしまった。
「まあ今この場にはあまり関係性は無いでしょうね」フィルは少し肩を落としながら、若干ながら治っていた半目を元に戻した。

 ある程度の間話をしていたような気がするが、結局は何もわからずじまいだったという事のようだ。その他にはこれといって今までの世界の様子とも変わっているような部分は見当たら無さそう。

「そろそろ立ち(くら)みがして来そうなのですが、椅子とかに座れはしませんかね」
 言われて辺りを見回すが、人の多さでスペースすらどこにも無い。
「だいぶ時間も経過して来ましたし……」
「いや、ちょっと待てよ? 何かおかしくないか」眼前では佳境に入っているらしい演説が広がっている。
「あなたの頭はおかしいかも知れませんが、百歩譲って聞いて差し上げましょう」
「お前演説のどのくらいを聞いていたんだ」
「明日、という部分くらいの物でしょうね」再び人差し指を立てる。
「それ全然嬉しくない! 明日一体どこで何があるのかとか全然わからない!」
 質疑応答的な物も含め、いよいよそれは終わってしまったらしい。
「どうするんだよ、これ。明日何が起こっても知らないぜ、」
「まあ、ここから出て行くという事でいいのでしょう、死にそうな時は盾になって貰いますので安心してください」
「少なくとも俺に安心出来るような要素は無さそうだな」

 いや、元々安心出来る訳も無いんだ。時間も何時だかわからないけどもう寝る事にしよう。そう思った頃には既に、人はまばらになっていた。
「……ああ、やっぱり効いてるぜ。これで宇宙人も喜ぶだろうよ」
 誰もその声に耳を立ててはいなかった。
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