挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか? 作者:涼風てくの

ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか?【序章】

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1/16

TALE#1 ライトノベルと幼馴染

どうも。涼風てくのと申します。
 その日も高校に入学してから一年と一ヵ月が経った五月上旬、だったか――

 しかしながら、今となってはもう時間(それ)は意味を成さない――

 何を隠そう俺は違・う・世・界・を・経・て、いるのだから――

 とにもかくにも俺が「いった」、その事により【一連の物語】は動き出した――

 動き出してし・ま・っ・た――

 そして今、【一連の物語】を目にするだろうあなたも、俺と同じような境遇に――

 何せこの世界(ものがたり)には今、この瞬間に・・・・・・・・(そうでなかった)可能性だけに限らず、

 元から・・・・・・・・(そうだった)可能性があると知ってしまったから――


 あなたはどちらだと思うだろうか?――




―もしもーし、今暇?じゃあすぐうちに来て~!
―んあぁ? 暇じゃねーよ。
―よろしくー♪
 唐突だが今日、俺は幼馴染の家へと招かれた。いや、別段おかしなことでも無いのだろうけど。

「これ、読んでみてよ!」
 開口一番にそう言うのは、俺の数少ない女友達であり、幼馴染の示園しのえん真紀。
 幼稚園、小学校、中学校、全て同じ学校同じクラスという腐れ縁のような関係だった。
 高校こそ違うものの、それぞれが通う学校は距離的にそう遠くはない。おかげで登下校時に遭遇することもしばしば。もちろん喜べたことなんかではない。

 ついでに示園真紀のステータス。と言うのもなんだが、一応それを紹介しよう。
 まず何かを取り上げるならば、その黒紅のツインテール、か。左右ともそこそこの長さ、太さを有している。
 それ故、一部からは恵方巻と称されている。主に俺なわけだが。そう称して叩かれる(いろんな意味で)のもままあること。部活の帰り、遭遇する毎に。甲斐甲斐しくも茶々を入れ続けているわけだ。

「読む? 何があったんだよいきなり。変な物だったら帰るぞ」
「いやいや変な物なんかじゃ無いよ」

 その部活なんかは中学まではお互い剣道部だったが、高校では俺が囲碁・将棋部、真紀が弓道部で、体力の差が多少出てきてしまった感は否めない。まあ俺はあんなの二度とは経験したくない。
 でも正直、運動部を継続するってのも尊敬する。真紀の場合は元々運動ができるから仕方ないのだろうけど。

 目線はいくらか俺より低く百六十数センチ。
 蛇足も過ぎるが、かわいいと言われることが俺(もちろん男)の方が多いことに不満を抱いているよう。ただの八つ当たりだ。

 そして、ここしばらくは(もっぱ)らスカートを履いている。ある時、俺がスカート好きだと洩らしたらそれ以来。スカート狂。狂気の沙汰だよ。
 今日はと言えば、赤タータンチェックのミニスカート。制服とかでもよくあるあの柄。何となく暖かそうなイメージがあるよな。

 そんでもって、こいつには一つ下の妹がいる。兄弟姉妹がいるなんて羨ましいとは思う(一人っ子の愚かな妄想だろうか?)。
 三人暮らしと言うのもなんだか寂しい気もするし。傍から見れば兄弟喧嘩のようなものをするのも微笑ましいものだが。

「今日はライトノベルを『てて』に読んで貰おうと思ったのよ」
 そう、俺の名前はてて。フルネームで『来迎寺てて』だ。

 読みは、らいこうじ、てて。いかにも筋骨隆々そうな名前だが……、
 萌やしだ。萌やしである。因みに漢字で書くと「もやし」は「萌やし」になるのだ。無駄に可愛いよな、お前。
 もちろん細身であることが、萌やしと呼ばれる所以だ。身長百七十一センチにして体重四十七キログラム。大仰にも親に病院まで連れていかれたことすらあるから笑えない。

「で、どんなのなんだ? わざわざ呼び出す必要があるのか?」
「もちろん。私の執筆したライトノベルですから」自信満々である。
「はっ? 帰るわ」
「まあまあまあまあま! そう言わずに読んでみてよ! ……名前で呼び合う仲でしょ」
 それは俺達が幼馴染だからってだけだろうが。変な誤解を生むから止めてくれ。そもそも「ま」が一つ多いんだよ。俺は呆れ顔をしながらそう思う。

 示された方を見ると、どうやらそれはパソコンに書かれているもののようだった。
 俺は愚痴を零しながらもパソコン前の椅子に腰かける。
「あぁ……今日は厄日だ。いや厄年かも知れん」
「それでライトノベルの方はどうだった?」
「まだ読んでねえよ!」不当にもせかされた。
 畜生。何故こいつのラノベなんかを……。
 画面に視線を移すとそこに示されているライトノベル、もといラノベはインターネットにアップロード(?)されていた物だった。

 そいつを読むこと約3分(やけに短かった気がする)。
「可哀そうだから声に出して何か言ったりはしないけど、まああれだな」
「……?」
 察してくださいよ真紀さん!
「よくこういうのが書けるよなあ、ってさ」
「と、言いますと?」
 そうして小首を傾げる真紀さん。鈍感すぎる! これもう鈍感っていうレベルじゃねーぞ!? 鈍感を通り越して錆びるよ!

「どうしたらこんなにひどくなるんだよ、って」
「…………ぇっ!? そんなに駄目な訳?」
 大げさなリアクションをとる程真紀さんはご不満な様子。というか最初の間はなんだよ。
 まずこれ、表現にぎこちない部分がある。その上、ら抜き言葉も散見されるしな……。
 このままではいつかラノベは「ノベ」になってしまうのでは無いだろうか? あ、それじゃあただの小説か。いやでもラノベだからら抜きでも、ノベでもいいのか。……あれ?

「これでも賞を狙って書いたつもりなのに」
 そんな事を呟く真紀。一体全体どんな賞なら狙えるというんだ……。
「第一おつむ弱いのに小説を書くなんて無謀すぎるだろ」
「いやまあ国語力があればいいでしょ」
「どの程度の国語力があるってんだ?」
「小説がスラスラ読める程度の国語力はあるよ」
 いや、それぐらい誰でもあるだろ。小学生じゃあるまいしそんな僅少な国語力で自慢するなよ。拙さすぎるわ。
「そんな目を見開いても何が言いたいのかさっぱりだよ(笑)」
「(笑)ってなんだよ! どこぞの居酒屋だよ! ていうか察しろよ!」
 思わず頭を抱えてしまう。
「じゃあ国語力ありありの、てて先生にご教授願います(笑)」
「はああ? 呼び出しておいて図々しいっての! 一回土下座! おう、土の下に座るんだぞ! 土の下! 地中奥深くに!」
「よくわからないけどキャラ崩壊してるよ(笑)」
「キャラとか言うなよ、くそっ! いいさ俺は教えるつもりなんて元より無いんだからな」
 真面目ちゃんな俺の友達が読んだら色々と指摘、アドバイスしてくれるのかもしれないが、俺はしてくれないんだ、これ結論。
 ははっ。人選ミスだな示園真紀!

「まず、おつむが弱いのと才能があるのこととの間に相関関係は無いでしょ? しかも3回とも全国模試偏差値四十九だから! そこまで弱くないから!」
 そういって胸を張ってくるが、正直胸を張るタイミングがよくわからない。それに控えめな胸が云々だ。
 そもそもの話、常識的に考えて三回も同じ偏差値なんてありえないだろ……。なおかつその絶妙な数字をとってくるあたり、とてつもないものを感じる。
 どれくらいとてつもないかと言えば。地上一メートル程度の高さから落とした五十円玉が直立するぐらいとてつもない。まず五十円玉って、普通に立てようとしても中々直立してくれないんだよな。

「俺からしてみれば全国平均より低いのは駄目なんだよ」
「そりゃあ全国模試で一桁を死守してる誰かさんからしてみればそうかもしれないけど……。でも才能はあるかもしれないでしょ!」
 そこは譲らないようだ。勉強しない奴はテスト直前に謎の自信が湧いてくるらしいが、これもその類なのだろうか。
 でも受験層が偏れば平均が変化するから基準としては不安定とかなんとか言われるとややこしくなってたから一安心。

「まずお前、小説とか普段読むの?」
 素朴な疑問をぶつけてみた。
「読むよ」
「ラノベ以外で」
「はうっ……」
 図星だったようだ。ラノベ以外を読まない分にはなあ……。まあ、全く役に立たないというわけではないんだけど。元々は小説だったのがだんだんと分離してできてきたものだしな。何かを書くなら、なお更先に一般小説を読んでおくべきだとは思う。

「じゃあもう小説の書き方の勉強でもすれば?」
「小説の勉強、ね。じゃあ教えてくれ……」
「あー、俺の高校の友達だったらアドバイスとかしてくれたかもしれないのになあ」
 思い出したように言ってみた。
「……はあっ? だってそっちは男子校じゃない。それはちょっとね」
 明後日の方向を向きながらそう言う。
 それなら……。悲しいかな、「じゃあ女子の友達を……」と言えるほど女子の友達が居なかった。しかもその大方がこいつの影響で友達になったようなものだからな。空しい。

 しかし、男子にも女子にも人脈の広い真紀さんらしからぬ言動じゃないですか。と言うよりかはそもそも、男子は嫌なのに俺は呼ぶのか。じゃあ、俺は一体何なんだ?
「なんだかよくわからんが、誰か呼ぶか?」
「だからそれは駄目!」
「そうですかい」
「じゃ、もう帰っても良いかな」口から思わずそんな言葉が飛びだした。
 嗚呼、そうだ。そうだよ。正直なところかなり眠い。朝、朝なのだ。今は六時である。電話で叩き起こされた末、このような展開に。俺の折角の睡眠生活が……。

 もう読むもん読んだし、用も済んだはず。というわけで帰り支度をし、バッグを肩にかけた瞬間。
「そうだ!」
「えぇ! なんすか!?」
 長い間黙っていたと思ったら……どうせろくでも無いことを。
「ててもライトノベル、書いてみれば?」
「はあ? …………?」
 ろくでもなかった。

 もう何だ? こいつは何を言っているんだ? まずあれ? ライトノベルって何だっけ。
 呆気にとられてしまい混乱気味になる俺だった。それに対し考えを吐き出し続ける真紀。
「ライトノベル! いつも電車で読んでるでしょ! 今から書いてみない?」
 一瞬の沈黙。
「……は? …………はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!? ゲホッッ…………ゲホッッ……ケホッ……」
 むせる。
 ギネス保持者顔負けの肺活量を発揮してしまった気がするぞ!?
 オーバーアクション、ここに極まれり。
 ああ、これでも一応全力で否定したつもりなんだ。近所の皆さん朝早くからすみません。
「まさかまさかお前と同類にするつもりかよ!? 勘弁してくっ……ぅぐっ、」
 ベッドに押し倒された。もう何が何だか。

「よし決まり! 全会一致で可決!」
 意を決したように続ける。
「今からライトノベル、書こう! きっと楽しいよ!」
 異論は認めないようだ。

……折しも窓からそよ風が吹いてくる。
 嗚呼、すがすがしいまでの晴天だ。まさしくこれが青天の霹靂と言う奴なのだろう。
 それはゴールデンウィーク三日目の事。俺の心を描写するが如く三日続いた晴天。それに終止符を打つかのような出来事だった。
「あ、あのぅ……」
 真紀の気迫に押されて変に改まってしまった。俺の気迫はとうに無くなっていたのだ。
 解放された俺は、俯き気味にベッドから身を起こす。
「……?」微笑みそれを覗き込まれる。


「いやその、ラノベを書くのってそんなに楽しいんですか……?」
特に最近は五の倍数の日の投稿を目指しております。一話当たりの文字数は変動がかなり激しいですが、それでも宜しければ、ツイッター共々末永くお付き合い下さい。

Twitter→@suzukaze_tekuno
cont_access.php?citi_cont_id=423076696&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ