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走って転けて手を伸ばす
手を伸ばして、つかめるものは何だろな?
「もうイヤだ」降り積もった感情。
 抜け出せない環境と、そこにいる人達おとなたち

 逃げ出せるものなら、とっくに出て行ってるのに、社会はそれを許さない。
 金銭的にも、それはできないから。

 だけどさ、もうムリなんだ。疲れたんだ。もう、イヤなんだ。
 陽が、じりじりと照りつける日、私は、スニーカーを履いて、小さなリュックいっぱいに食料を詰め込んで、家から飛び出し、走る。
 風を切って、息を吐いて、すぐに呼吸が苦しくなる。普段から、動いてないと、やっぱりキツイものだ。でも、早く、早く逃げなきゃ、なるべく遠くへ、見つからないように。
 その思いで、軟弱な体を無理やり走らせ続ける。
 風が気持ちいい。苦しいけど、走っていると、自由になれた気がする。決してスピードは早くないけど、いつもより少しだけ速く進む視界が、新鮮で、心地いい。

 あぁ、自由だ。もっと、走らなくちゃ、自由のために、もう縛られるのはいた。
 一人ぼっちは嫌だけど、やりたくないことに縛られるのはもっと嫌なんだ。
 
 私は逃げるために、守るために走っているけど、やっぱり運動不足のせいで、体はもう言うことをきかなくなってきている。
 足はフラフラと前へ進んで、もつれ始め、私はこけた。
 一瞬空中に浮かび、『飛んだ』なんて、のん気なこと思っていたら、すぐさまアスファルトの地面に叩きつけられた。
 膝も手も擦りむいて、血が滲んでいる。
「…痛い。」
 素直な感想を零して、リュックを探る。
 バンソウコウを探したけど、なかにそんなものはなくて、食料だけで家を飛び出した自分を嗤う。

 バカみたいだ。ご飯だけ持って、着替えもお金も、バンソウコウすら持たずに家出だなんて、やっぱり私は子供なんだ。
 世間に無理やり従わされて、自由を奪われるんだ。

「やだよ。そんなの…絶対に嫌だよ!!…………。うっ…うっ…うあぁあああああうわぁあああああああああん!!」
 もう、人目なんて気にしてなかった。もう、どうでもよかった。どうせ、一人になっていくんだ。みんないつか死んでしまうんだ。私は孤独を抱えて、死んでいくんだ。
 こんな世界…
「嫌い!大っきらい!!こんな世界壊れちゃえばいいのにっ!!」
 声は掠れて、なんて言ったのかも聞き取れないような、そんな汚い声。
 顔も、涙と鼻水でぐっちゃぐっちゃになって、醜く歪んで赤くなってる。
 瞼を閉じきっても、わずかな隙間から、涙は溢れて、土砂降りだった。

 ふと、陽の光を何かが遮る。
 それから、何かが伸びてきた。
 それは、陽の光よりも、暖かくて輝いているような気がした。
 私は、泣くのを一旦やめて、目を開く、
 優しげな笑顔を浮かべる少女。
 とても可愛らしい女の子が私に手を差し伸べている。私は、反射的にというか、そうしないといけないような気がして、彼女の手に自分のを重ねた。

 その手は、きっと太陽よりもっと、温かかった。
 ひとりじゃないんだって思った。
 こんなにも近くに、居た。
 大切な人が、
 私の親友は、私に手を差し伸べてくれた。
 大丈夫。まだきっと大丈夫。
 これからもきっと、大丈夫。
 
 彼女が居てくれるから、縛られていたって、抗える。
 きっと、縛られたりなんかしない。
 逃げずに戦える。
 そう、きっと大丈夫。

 みんな笑っていてくれている。
 私はひとりじゃない。

 一人でも、独りじゃないから…。

 私は、彼女に支えてもらいながら、立ち上がった。
 まだ、走れる。転けれる。手を伸ばせる。立ち上がれる。彼女が涙を拭ってくれる。
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