現実:探索
VRでは全てのゲームに置いて自分の分身となるアバターを作成しなくてはならない。このDUNGEONE MAKEでも俺はアバターを造っている。といっても現実の俺と大差ない。
日本人の典型的な黒目黒髪に身長173センチの普通体型、顔も特にイケメンにはしていないが決して不細工にはしていない。第一印象で「優しそうだな」という印象を与えられるようにはしているが。
DUNGEONE MAKEにログインした俺は今日も今日とてモンスターを造っている。
いや、別にダンジョンを広く深く造っていこうとは思ってはいるのだが、それには時間が非常に掛かる。リアルタイムで1層造るのに約10時間、加えてシステムの関係上俺が鶴嘴やスコップで掘るわけではなく、ダンジョンクリエイト専用ゴーレムが勝手に広げてくれる。よって俺はその間ダンジョンでやることが無くなるのだ。
時間潰しには主に『探索に出す』、『モンスターの合成・進化』、『アイテム錬成』と色々あるのだが主にやっているのはモンスターの合成。頑張ってモンスター図鑑を埋めたいのだ。探索中も暇にはなるが。
もちろんDPでモンスターは購入できる。しかし選択肢は多くはないし、強さもそれほどではない。だからこそ合成・進化していきどんどん上位ランクのモンスターにしていかなくてはならないのだ。ダンジョンをより堅牢な要塞と化す為に。
今俺は水属性9ランクの『神喰狼』を造ろうと頑張っている。
他にも闇属性9ランクの『世界蛇』や『死者女神』、10ランクの『狡知神』や『灼熱龍』など等、欲しいモンスターはたくさんいる。いるが、手に入るかどうかは別問題である。だって合成が半端なく大変だから……
『神喰狼』は1ランクモンスターの『狼』と『水魔』を合成し、3ランクの『水狼』にする。その後合成・進化を繰り返していくこと数回、ようやく最終目的の『神喰狼』になるのである。
現在育てているのはそんな合成を4回経て進化した7ランクモンスターの『天空狼』。合成・進化はレベルがMAXの値まで育てなくてはならず、これが一番時間が掛かる。レベルが低い時は上がりやすいが徐々に上がりにくくなっていくのだ。これはよくゲームである仕様である。
レベルを上げるためにはモンスターを探索に出したり、ダンジョン内に放し、侵入者を撃退や撃破してもらえば経験値が手に入り成長して行ってくれる。しかし侵入者が未だ50層までしか来ていない我がダンジョンでは、7ランクのモンスターを50層以下に放すなんて侵入者が全滅し、それ以上の探索をしてくれなくなるリスクが生まれるのでしたくない。
よって残る選択肢は探索に出すだけである。これはダンジョンとは別のゲーム内における『訓練場』と呼ばれるシステムで、ここにはモンスターが無限にポップされる様に設定されている、云わば経験値の泉、レベル上げ専用施設である。
何千、何万ものプレイヤーが一斉にこの施設をしようしても絶対にプレイヤー同士のモンスターが闘わない様に設定されているからモンスターの損失もない。損失すると再召喚するのに莫大なDPが必要となるので絶対に死なせたくないのだ。一般的には。
DPが余りまくっている俺にはあまり関係ないけどね。
ダンジョンは自動でゴーレムさんたちが増設してくれているので今は132層まで来ている。135層が出来るまでには何とか神喰狼を造りたいので今日もせっせと探索に送りだす。
探索から帰ってきたようだ。
インフォメーションにログが流れる。
天空狼はレベルが5上がった。
種族名:天空狼
ランク:☆☆☆☆☆☆☆
レベル:65→70(100)
HP:975→1050(1500)
MP:390→420(600)
攻撃力:65→70(100)
防御力:52→56(80)
知力:22→24(35)
速さ:65→70(100)
運:22→24(35)
天空狼は『森人の腕輪』(☆☆☆)を手に入れた。
天空狼は『良薬草×13』(☆☆)を手に入れた。
天空狼は『毒消し草×8』(☆)を手に入れた。
うん、なかなかいい感じで上がったようである。これで後30レベルを上げればMAXになるから合成が出来る。因みに括弧内はモンスターのレベルMAXの時のステータス値になっているのだ。これを参考に配置を決めたりもしたりするのだ。
アイテムもそれなりに手に入った。探索で手に入ったアイテムはダンジョンマスターには使い道は無いが、ダンジョンには使い道がある。そう、宝箱に入れるアイテムになるのだ。
モンスターの様にアイテムにもランクが存在し、こちらは全部で5ランクだ。だが我がダンジョンにおいてランク4以上のアイテムは5個以内でしか置いてない。なんでも掲示板で6個以上置くと侵入者の数が一気に増えてしまい、ダンジョンがあっという間に陥落してしまうから注意が必要である、と誰かが助言してくれていたのだ。しかし今我がダンジョンは侵入者が少な過ぎて困っているので増やすかどうか悩み中だ。
ここはダンジョン内のダンジョンマスタールーム。今はカスタマイズして地下空間とは言えないようなパソコン画面が所狭しと並んでいる。最初はダンジョンの核が5メートル四方の空間に置いてあるだけの殺風景な場所だったのだが、こっちの現実に近い方が落ち着いて作業に没頭できるので変更したのだ。ま、広さは変わってないが。
さて、探索から帰ってきたモンスターはクリスタルに自動収納されるので今はいない。だがすぐに呼び出す作業に移る。帰ってきたばかりの天空狼だが、休む間もなく再び探索に出すためだ。普通の生物だったら休ませなくてはならないのだろうが、ゲームだから心情的にも一切気にしないでいいから楽だ。
パソコン画面は実際飾りでタッチパネルでもなんでもない。ダンジョン内の操作はウィンドウで行う為、さっそく念じてウィンドウが出るように念じる。
目の前に出た縦横30センチ程度のちょっと透けたウィンドウ。透けているのに何故触れられるのか謎だが、そういう仕様なんだと納得しておく。
メニューやヘルプ、ログアウトといった様々な選択肢があるが選択するのは探索ボタン。ここでDPをいくつ消費し何時間費やすかを決める。DPを多く費やせばより多く、珍しいアイテムが出に入り、時間を掛ければ掛けるほど多くの経験値が手に入る為レベルが上がりやすくなる。
まずは探索に行かせるモンスターを選択する。選択するのはもちろん天空狼。探索モンスターに天空狼と表示させた瞬間、クリスタルが光だしその下に魔方陣が出現した。ここに選択したモンスターが出現するのだ。
部屋に光が充満し視界が一瞬奪われる。だがそれも一瞬の事ですぐに視界は回復し、魔方陣のあった上には一頭の狼が出現していた。
金色の様にも見える透き通ったフワフワの毛並、ギラリと光る金色の瞳、口からは牙が鋭く覗いて見える。大きさは目測で2メートルくらいだが、実際は6メートルくらいある。この部屋は小さい、よって大きなモンスターが召喚された時、自動的に小さくなって召喚されるのだ。
今回も3ランクのアイテムは欲しいので3000DPを消費、時間は次にログインできる明日の午前6時までだから8時間後に設定する。場所は狼系が得意な森エリアだ。
設定した直後再び天空狼の足元に魔方陣が出現し、再び光で覆われる。次に見た時はそこには何も居なかった様にシンッとしていた。
無事に転送されたようだ。
ダンジョン名:『かめさんの迷宮』
ダンジョンマスター:『かめ』
ダンジョンレベル:67/99
ダンジョンランク:Cランク
名声:34/99
所在地:ネック
階層数:132/300
獲得モンスター数:104/216
DPダンジョンポイント:233300DP
ラスボス:『氷霧龍』
裏ボス:『冥王龍』
ボス設定
50層:合成獣
55層:氷人形
60層:幽霊騎士
65層:雪男
70層:魅惑魔
75層:水精霊
80層:吸血鬼
85層:犬海魔
90層:石化蛇
95層:巨鯨海獣
100層:悪魔
105層:神殿
110層:番犬
115層:蛮神
120層:百獣王
125層:氷霧龍
130層:冥王龍
その他設定:オート修理ON、ボスランダム設定ON、アイテム自動補完ON