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気づかない内にそこだけ別世界  作者: あちゃま
第2章 脅威の迷宮
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別世界:脅威認識

ネプチューンは様々な事をアグリントらに聞いた。


そもそもダンジョンには転移石というモノが存在する。転移石があれば一度行ったことのある階層に一瞬で飛ぶ事が出来る、そういうモノである。

だがこのような非常に便利なものがあるのになぜ今回ネプチューンらは使わなかったのか、疑問が出て来る。しかしそれにもきちんと理由がある。


転移石とは非常に高価で貴重な道具アイテムなのだ。それこそBランクの冒険者であれば一年ほどお金を貯めなければ変えない程の値段であるのだが、今回金を溢れんばかり稼いでいるSランクのネプチューンらには関係のない。重要なのはもう一つの理由。


それが一度行った階層に、という点である。


ネプチューンたちは一度もこのかめさんのダンジョンに潜ったことはない、つまり行った事のある階層がないのだ。

ではアグリント達『白象ガネシャ』たちと行けばいいのではないのか、とも思うがそれも出来ない。転移石が運んでくれるのは運ぶ際に全員が共通して行った事のある階層なのだ。


だから主に複数パーティ冒険者に使用される際、新しく仲間が入った際はダンジョンの踏破階数が非常に重要になって来る。何故ならもう一度入り口からダンジョンを制覇していかなければならないかもしれないからだ。

これには非常に時間も体力も消費されてしまい、割りに合わないことが多いのだ。


今回はそんな事もあり、ネプチューンたち『三牙狼トリアイナ』は今回1階層からのスタートとなり、『白象』の三人はキリの良い100層で待機、という形になったのだ。

三牙狼トリアイナにとって100層などそんな苦労も時間も必要ないからだ。それでも一応は調査を行いながら、という事もあるので今回は一週間という期間を設けたというわけである。


実は白象ガネシャの三人が治療中で完治まで時間が掛かったというのは内緒である。


ダンジョンを攻略しながらの質問タイム。それを行い始めてどれ程の時間がたったか分からないが、それでも既に数時間は経過しているのではないだろうか。

質問をするのは主に三兄弟の長男のネプチューンでたまに相槌の様に他の二人、対して答えるのはアグリントというそんな形が既に出来上がっていた。


「で、何故だかここはボスが毎回変わっている事が多いんだ。俺たちはこれまで何回もボス戦をやって来たが、同じボスだった記憶何て全く無いほどに変わっているんだ。だからこそ用心に用心を重ねた方がいい事は間違いないな」


「ですが100層のボスである悪魔デビルだけは変わりがないのですよね。そこは何故なのでしょう?」


「分からん。分からないが俺たちネックにいる冒険者の間では“100層の試練”って言っている。他のダンジョンでも100層は壁だ。そこを越えればギルドでも一目置かれる存在になるし、目には見えないが様々な特権が手に入るだろう?それを真似た洒落シャレなんだけどな」


「なるほど……100層の試練、ですか。ですが他の階層のボスは毎回違うのに100層だけを変えていないという事は迷宮主ダンジョンマスターが意図的にそうしているという事です。不味いですね……」


「まぁ、そうだろうが……それがどうかしたのか?何が不味いんだ?」


ネプチューンがアグリントの言葉に対し心配そうな色を含めて答えた。

だがアグリントはネプチューンが一体何を心配しているのか理解出来なかった。それは白象ガネシャの残りの二人も同じく理解が及んでいない様な困惑の表情を見れば分かった。


対して三牙狼トリアイナのネプトゥーヌとネプトゥリアの二人はネプチューンの不安視している事が分かったのか、少し悩む素振りをしながらも眉間にシワを寄せ険しい表情へと変化させた。


Sランク冒険者とAランク冒険者の違い、それがそこには現れていた。


「いいですか、よく考えてみて下さい。本来ダンジョンには主たる迷宮主ダンジョンマスターがいるのが普通です。迷宮主ダンジョンマスターは魔物が務める事が多いため、その性質上多くが高度の知能を有していない事が多いためにダンジョンの運営をコアに任せている事が多い。ここまではいいですね?」


確認するように白象ガネシャの三人の顔を眺めるように見るネプチューン。

三人だってAランクの冒険者であるのだからネプチューンが今言った事など百も承知なのだ。了解の意を表すように三人は頷いた。


「ですがコアだって完璧ではない。何年も昔ですがコアの解析を行った時に分かった事なのですが、コアに任せているとはいってもそのコア事態にも一定の法則が存在しそれ以上の事はしない様なのです」


「一定の法則、ですか?」


白象ガネシャの中でも頭脳派の魔法使いインディが興味深々の様に前のめりに聞いていく。


「一定の法則、それが当て嵌まるのは迷宮主ダンジョンマスターが高度な知能を持たない魔物だけです。宝箱から出て来る宝は高価ではない、罠が存在しない、モンスターは全て迷宮主ダンジョンマスターが属する一系統に属している。そして最後に…………ボスは常に一緒、なのです」


ネプチューンのその言葉を聞いたインディの目は見開かれた。


もしも今、ネプチューンが言った事が事実なのであればこのダンジョンは違う点が多すぎる。


宝箱から高価な宝が出てこない?では何故国宝級とも言われる森の守護者ハイエルフの腕輪などが出てきた?

罠が存在しない?ならば何故落とし穴や壁から矢が飛び出してくる?

モンスターが一系統しか出て来ない?なら何で獣系のヴォルフやアンデット系の死体ゾンビが一緒に出て来る?


これまでの数々の出来事が走馬灯の様に頭の中に流れていく。


そもそも、だ。このダンジョンは初めからオカシカッタではないか。

通常の迷宮ダンジョンの様に誕生期は無かったし入り口にはご丁寧なまでに精巧に作られた地図があり、洞窟の様なはっきり言って自然界に普通にありそうな洞穴の様な入り口からは想像も出来ない様な内部の広大さ。ここまでの広大さと奥行きがあれば、通常ならもうっと高度な技術の粋を集めたような重厚で精巧で繊細な入り口になっているのが普通の迷宮ダンジョンではないか。


かの魔王城まおうじょうだって入り口は優に数メートルはある鋼鉄の様な扉と左右に悪魔の立像、繊細な装飾がされた照明や一切の隙間のなく積み上げられた城壁があるらしい。荘厳さは世界に存在する人類が建城した城を含めた中でも、他の追随を許さない程の圧倒的一番であるという。


比べて見るのも烏滸おこがましい程の違いがあるのに難易度や規模は近い所まで来ているのではないか。

歪過ぎる迷宮ダンジョン、その中に今いるという事の危険性をようやくインディは理解し始めた。


「では……このダンジョンにはいるマスターとは……」


絞り出すように吐き出したインディのか細い声。注意していなければ聞こえなかったかもしれないその声を、しかしネプチューンはしっかりと聞き取った。


「その通り。我々人類に対して謀略をはかる事が出来るほどの高度な知能を有し、目的は不明ですが人類に対してダンジョンの内用を知られる事なく物事を進められる理知りちと推進力を持っている。間違いなく、このダンジョンのマスターは――――――――魔族です」


一つの勘違いから始まった歯車の回転。やがてそれは連鎖するように隣の歯車は回り始める。

最初は小さな歯車の回転、しかしそれはやがて大きな歯車を回し始める。


『かめさんの迷宮』という大きな歯車が回転するのは、もうすぐそこだ。

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