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別世界:攻略開始

セリーナ・F・メザイアは貴族である。


ミリテリアス国は君主制ではあるが貴族制度を導入しており爵位を授与された者、代々続く爵位を継ぐ者が貴族として国を運営することになっている。良識ある貴族もいれば、そうではない貴族もいる。


メザイアは伯爵の位を持つ東部の貴族。代々続く名家であり、初代は戦争での剣術・剣技が時の王に認められ爵位を与えられた。

そんなメザイア家には一人の嫡男と三人の女子がいる。三姉妹の次女であるセリーナはメザイア家の方針から幼少の頃より剣術を学んでいた為少々お転婆に育ってしまった。いや、三姉妹全員少々お転婆に育ってしまったのだ。


お転婆であったが故に家の反対を押し切って長女は冒険者になってしまった。セリーナもまたそんな長女の背中を見て育ったが故に冒険者に憧れ、両親もまた長女という前例もあり大きく文句も言えなかった。そんな中で育ったセリーナが冒険者になるのは時間の問題だった。






解放された日の朝、受け付けの列の一番最初に並びクエストを受け『かめさんの迷宮』に一番乗りした。


ネックは西部の町であり東部に拠点を持つ『月の演舞ルナティック・ダンス』の元には情報が来るのが遅かった。その為Cランクを持つ彼女らはダンジョン調査に参加しようとこの町に来た時にはすでに調査は終了していたが、解放まで二日という準備もできる絶好の日よりだった。

冒険者がこんなチャンスを逃すはずはなく、彼女たちはすぐに町中を走り回りながら準備を行い今日の日に備えた。


かめさんの迷宮の入口、そこに月の演舞ルナティック・ダンスの4人はいた。


森の中にある小さな小川の辺、本来は何の建物もないはずの場所には兵士たちが詰める衛兵所が建設されている。いつ、どんな時でも異変があれば対応できるように準備は万全である。

入口の左右には2人の兵士が今日からの解放のために待機している。


「もうダンジョンには入れるのよね?」


セリーナは入口に待機している2人の兵士に尋ねる。

全身に鉄の鎧を纏った中年くらいの男性兵士。表情は少々厳ついかもしれないが醸し出す雰囲気はどこか穏やかである。


「えぇ、もう入れますよ。御嬢さん方が一番乗りだ、一応50層までは地図があるから良かったら持っていくといい」


「おじさん、サンキュー!」


「ちょっとミレイ、失礼ですよ。兵士さん、すみません」


兵士が好意で取り出した50層までの地図。それを見た瞬間ミレイと呼ばれた少女は横から掠め取る様にサッと奪い去る。一応御礼は言ってはいるが本心では無さそうである、そんな気持ちを抱かせる。


ミレイはセリーナとパーティメンバーの1人。

セリーナと同じく前衛パワータイプで大きなハンマーを振り回す、外見からは想像も出来ない怪力である。

150センチほどの小柄な体格と赤いショートヘアー、少女というよりも少年と言った方がしっくりくるような外見をしている。しかしそれでも立派なCランクの冒険者。世の中の荒波を乗り越えるだけの力は持っている。

纏っているのは全身鎧フルアーマーと男顔負けである。


名前:ミレイ・エヴァレット

称号:―――(なし)

ギルドランク:C

性別:女

年齢:17歳

職業:重戦士ファイター

出身地:ミリテリアス

所属:『月の演舞ルナティック・ダンス


そんな少々元気すぎるミレイを抑えるお母さんのような女性はこのパーティ一番の年長者にして苦労人のオフィーリア・ポロニアス。

群青ラピスラズリの様な魅惑の髪と瞳は人を吸い付け、知的な眼鏡はミステリアスな雰囲気を醸し出す。170センチと女性にしては高い身長はより彼女の魅力を引き立てるが、同時に結婚に行き送れるのではないか、と不安にもさせるとは本人談。

とんがり帽子に黒のローブはまさに魔法使い(ウィザード)。このパーティ唯一の後衛冒険者である彼女はその身に宿す魔力を使い魔法で敵をなぎ倒す。


名前:オフィーリア・ポロニアス

称号:―――(なし)

ギルドランク:C

性別:女

年齢:21歳

職業:魔法師ウィザード

出身地:ミリテリアス

所属:『月の演舞ルナティック・ダンス


「気にしないでください、元気があっていいじゃないですか!アッハハハハハ!」


謝られても平然とするどころか笑い飛ばしてくれる中年の兵士。人は見かけに寄らない者なのである。


「そういって頂けると助かります。それに地図ありがとうございます」


「いえいえ、本当に気にしないでくださいよ。ただ御嬢さん方の様に若くて綺麗な人には無事に戻って来て貰いたいんですよ。それにこのダンジョン最初のお客さんだしな」


「そんなにこのダンジョンは危険なの?クエスト受けた時には何も言われなかったけど」


セリーナは一応の確認も込めて兵士へと質問を投げかける。

生存者を少しでも多くしたいだけだとは思うが、もし何かあるなら前もって気に留めて置かなくてはならないのがリーダーとしての務めである。


「50層までは本当に普通のダンジョンと変わらんよ。特に強そうなモンスターもいないしな。ただ普通とは見た目が違うってことくらいさ、気を付けるのは」


「そこは前情報と一緒か、それならそんなに心配しないで下層に進めるわね。ありがとう兵士さん。それじゃあ行きましょう」


言うとセリーナはパーティの先頭に立ちダンジョンへと潜って行く。その後ろを3人は続いて歩いて行く。

そんな一団の一番最後尾、少々露出の多い服装の少女に中年の兵士は視線を向ける。


セリーナ達との会話中は一切言葉を発しなかった彼女、しかし辺りに一体に注意を払っている彼女。見た目から考えると彼女の職業は盗賊シーフであろうと予想が付く。

装備も腰の短剣と見えない所に隠してある暗器だろうと予想が付く。


盗賊シーフは後衛支援型の冒険者である。

敵を状態異常にしたり、時には僧侶と同じように回復したり、トラップを張ったりと支援方法は様々存在する。


彼女の名前はレイア。

灰色の肩までのボブヘアーと同じ色の猫目。顔だけ見れば愛嬌はありそうだが一切言葉を発さない所が近寄りがたい雰囲気を出している。

同世代と比べても大きな発育の良い胸をさらしで抑え、黒いショートパンツは長い脚を際立たせている。

武器は腰にある20センチほどの短剣と全身に隠してある暗器。いかにも盗賊シーフらしい装備である。


中年兵士は願う。彼女たちが誰一人かけること無く無事に帰ってくることを。


彼女たちは思う。未だ見ぬ宝を誰よりも速くこの手に入れることを。


ダンジョンマスターは思う。少しでも多くの冒険者が侵入して来てくれることを。


三者三様の思いを胸に現実リアル仮想ゲームは交わる。

生死を掛けた戦いとただの暇つぶし。

一攫千金のビッグチャンスと無限に出せるデスクワーク


まったく逆の様相を見せるその様は一体誰の演出シナリオか……。

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