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青の世界の冒険者 ~八人目の勇者~ 作者:つばめ男爵

1章 新米冒険者ケージ編

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もっと俺を優しく扱って

なんとか無事50話まで書き続ける事ができました。日頃読んでくださっている方やブックマークしてくれている方に感謝です。こちらも凄く励みになります。どうもありがとうございます。引き続き宜しくお願い致します。
「まずは冒険者ギルドに行きましょう」

 昨日の朝も同じような台詞を聞いた気がするが、サミの提案で3人は冒険者ギルドへと向かった。昨日決めた今日の予定は確か、ゴロツキどもから情報を入手する筈であった。恵二はサミにそう尋ねるとこう返ってきた。

「真っ当な仕事もしないゴロツキ連中が朝から活動している訳ないでしょ?先にギルドに行って情報を集めるわよ。ついでに黒鋼狼(スチールウルフ)の素材も売れたようなら、残りの報酬分も巻き上げちゃいましょう」

 後半はともかく前半の説明には納得した恵二は、それ以上異論を唱えることは無かった。

(ついでに馬の操縦を出来る人も聞いてみるかな?)

 いくらボロギルドでもそれくらいの情報はあるのではと幾ばくかの期待を胸に、町の南にひっそりと建っている冒険者ギルドを目指した。



「申し訳ありません!お支払いは当分お待ちください!」

 恵二たちの姿を見るなり、受付にいた職員の男はそう声を上げた。

「え、ええ。まあ別に今日じゃなくてもいいわよ・・・」

 職員の勢いに最初はふんだくる気満々であったサミも気圧されたのか、そう答えた。

(しかし冒険者を見るなり第一声が“支払いを待ってくれ”ってギルド職員としてどうなんだ?)

 声には出さず心の中で恵二はそう考える。

(まあ、俺はお金は何時でもいいし、それよりも乗馬を教えるのがうまい人を教えて欲しいのだが)

 しかし恵二ほど甘い性格では無いサミは、今日が駄目なら何時払えるのかとキッチリ言質を取ろうとする。ところがサミのこの質問に職員の顔はみるみると青ざめていく。それを気の毒に思ったのか、隣にいた別の職員がこう答えた。

「実は昨日あの後すぐに黒鋼狼(スチールウルフ)の素材を売りに行ったのですが、どの商店も買取をしてくれないのですよ・・・」

「・・・っ!それってどういう事!?」

 何か引っかかったようでサミは更に職員を追求する。すると職員はこう説明をした。

「いつも利用している商店はおろか、セレネトの思いつく限りの商店を当たってみたのですがどこも買取拒否を致しましてですね・・・」

「まさか、それって・・・」

「はい。貴族の仕業で間違いないです」

 ギルドの職員は普段懇意にしている商人から根気よく粘って説得をしたが、結局買取は断られた。その代り名は明かせないがとある貴族の命令で買取が出来ないのだという事を密かに教えてくれたのだ。

「つまり現在この町ではギルドが素材を売ることは出来ません。恐らく冒険者である貴方たちも同様でしょう」

「――っち。これだから貴族って奴は!」

 職員の説明にサミは悪態をつく。

「じゃあさ、他の町で売るのは駄目なのか?ヘタルスにまで馬車で持って行って・・・」

「それだ!」
「それよ!」

 セオッツのナイス助言に声が重なる恵二とサミ。だが無情にもギルド職員はセオッツの案にダメ出しをする。

「それはこちらも試しました。今朝一番に馬車で出かけようとしたのですが、門番に素材の持ち運びは許可しないとの通達がありました」

「「「はあ!?」」」

 今度は3人の声が重なる。売るのも駄目。町の外に運ぶのも駄目。こんな横暴が許されるのだろうかと恵二は職員へと尋ねるが、ギルド職員は悔しそうな表情でこう話してくれた。

「“町に素材を買取できる商店がいくつもあるのに、町の外へ売りに持っていくとは何事か”と怒鳴られ門を通してくれなかったのです。町中の商店で買取拒否をされたと訴えても、それはお前たちの問題だと・・・。現在ギルド長が抗議をしてくれていますが、果たして効果があるのかどうか・・・」

 職員の男は実に無念だと身体を打ち震えながらそう語ってくれた。ここまでするかという貴族に対する憤りと、冒険者ギルドをコケにされたというこの上ない屈辱が、恵二の胸にも伝わってきた。

(正直、この世界の貴族を甘く見ていたな・・・。まさかここまでの無茶をするとは・・・。いや、この世界では無茶でもなく当たり前の出来事なのだろうか)

 普段からこんな理不尽な目に会わされていれば、確かに貴族不審になるのも無理は無いと恵二はサミを見ながらそう考えた。

 すると立てつけの悪いギルドの扉が勢いよく開いた。そちらを見ると顔を真っ赤にしたひ弱そうな男、ギルド長であるマドーがズカズカとギルドの中へと入ってきた。

「あの衛兵では話にならない!いくら問い詰めても領主の命令だとぬかすだけだ!ガルシア様は一体何を考えているのか―――」

 声を荒げながらマドーは近寄ってくると、恵二たちの姿を捉えた途端“しまった”と呟いた後、急に態度を柔らかくして声を掛けた。

「おや、サミ君にケージ君、セオッツ君もいらっしゃい。昨日はありがとう、お蔭で助かっよ。でも支払いはもう少し待ってくれると助かるねえ。今ちょっと素材を売るのに手間取っていてね・・・」

「・・・もう事情は粗方聞きましたよ」

「へ?」

 間抜けな声を上げたマドーはギルド職員の方をみると、職員たちは無言で頷いた。

「そ、そうか・・・。それはお恥ずかしい話を聞かせてしまったね・・・」

「まあ、本来は一冒険者である私たちが首を突っ込む話じゃないんですけど、流石にここが潰れたら困りますしね」

 サミとしても生まれた町であるセレネトのギルドが無くなることは大きな痛手であった。出来ればこのギルドには立て直して貰いたいのだが、どうやらあからさまに潰しにかかっている貴族がいるようだ。

「・・・ガルシアですか?」

「だろうね。彼は冒険者ギルドだけでなく、南側全体のテコ入れに躍起になっているようだしね」

 その話を聞いてサミはハッとなる。薄々そうではと思ってはいたのだが、教会や孤児院への嫌がらせも領主であるガルシアの仕業であろうかと考えていた。その事をマドーに相談してみると、彼は更に険しい顔をする。

「そうか、コーディーさんのところもか・・・。お恥ずかしい話、自分たちの事に必死でそこまで目を向けていなかったんだよ・・・」

「そうですか・・・」

 どうやらギルド側では余りこれ以上の情報は望めないようであった。すると再びギルドに扉が音をたてて開かれた。どうやらまた来客が現れたようだ。

 その来訪者は恵二たちとそう変わらなそうな年齢の薄緑色の髪をした少年であった。

「おや、テラード君か。今日は依頼を受けに来たのかな?」

 マドーはその少年に気さくに声を掛ける。

「ええ、マドーさん。何か僕でも受けられる依頼は入ってきていないですか?」

「うーん、実は今ちょっと取り込んでいてね・・・。ん?そういえば、テラード君の実家は確か商人ではなかったかな?」

 マドーに急に話を振られ、テラードと呼ばれた少年は慌ててこう答えた。

「え、えっと。はい、そうです。正確には行商人でして、父さんは殆どセレネトの町には滞在してはいないですがれっきとした商人の息子ですよ」

 テラードの返答に、ギルド職員達はざわめく。

「そうか!この町に滞在していない行商人に売ればいいんじゃないか?」
「行商人なら流石に貴族の命令もされていないだろう」
「いや、しかし門の検査で引っかからないか?」

 職員達はあれこれと討論をする。ただ一人、状況の分からない少年は首を傾げた。

「一体何があったんですか?」

「うん、実はだね・・・」

 マドーはテラードに今の状況を説明していく。その間に恵二は職員を1人捕まえて、この少年の情報を得た。

 どうやら彼は最近この町で活動を始めた冒険者なようで、ランクはまだFだが年齢が15才ということもあってかギルド職員たちは何かと目をかけているのだとか。

(俺の1コ下か・・・。冒険者の後輩を見たのは初めてだな)

 恵二はこっちの世界に来てから16才となり、セオッツやサミは更に1つ上の17才。恵二たち3人とほぼ同年代の冒険者であった。

 マドーの説明が終わると、状況を理解したテラードが口を開いた。

「残念ですが、それは無理ですよ。最悪父さんがしょっ引かれ兼ねないですし、それに今はこの町にいませんよ?」

「そ、そうか・・・。いや、変な事を聞いて悪かったね・・・」

 行商人に売るという手も無理そうだと悟り、すっかり落ち込むギルド職員たち。だが、恵二は一考の価値があるのではと思っていた。

(この町に席を置かない者に買い取って貰うってのは、悪くない線だと思う。問題はやはり門での検査か・・・)

 貴族の策は周到で、やはり門での兵士の取り調べがネックであった。

「俺が馬車で運んでいくってのも駄目なんですよね?」

「うん、そうだね。我々じゃなくても、冒険者であるテラード君も当然マークされているだろう」

 そうですか、と一言呟いて考え事を始める少年。だが、恵二は今の台詞に別の考えが浮かんだ。

「えーっと、君は馬車の操縦が出来るのか?」

「え?」

 恵二はテラードへと話しかけた。さっきの台詞から彼が馬車を操れるのではと考えたからだ。急に見知らぬ者に声を掛けられ戸惑う少年に、横からマドーが恵二たちを紹介していった。

「CランクにDランク冒険者!?僕とそう変わらなそうなのに、凄い!!」

 後輩に褒められるという滅多にない経験に恵二は照れながらも話を続けた。

「テラードは馬の操縦が出来るのか?」

「はい、ケージさん。俺は行商人の息子なので馬の扱いも、幼い頃から父に習いましたよ」

「おおー!・・・こんな状況でアレなんだけど、良かったら馬の操縦を教えてくれないか?報酬はちゃんと払うから」

「ええ、いいですよ。マドーさん。そういう訳で今日は先輩に馬の扱いを教えてきますね」

「それがいいかもね。ギルドは今こんな状況だし・・・。こちらも何か他に打つ手がないか考えてみるよ。・・・そうだ。折角だからケージ君はギルドに依頼を出さないか?」

「?俺が依頼を出すんですか?」

「そう。内容は“馬車の操縦を教えてくれる人募集”として依頼を出す。それをテラード君に受けてもらう。勿論こちらは仲介料なんて要らないよ?今回は君たち同士で決まった約束に横から割って入ったのだし」

 マドーはお金は要らないから、今回の馬車の操縦を習う件は依頼として受けてはどうかと提案してくる。

「それって意味はあるんですか?」

「うん、そうだね。君たちも今後冒険者として活動していくなら、依頼を出すことも経験しとくのはありだと思うし、テラード君も依頼を受けたとしてランクの評価に影響される。ギルドとしても何も活動しないのは体裁が悪いしね・・・。どうだろう?」

 そう説明されると別にこちらにデメリットはないし、ランク査定に影響があると聞いたテラードは是非にとお願いするので、今回の件は正式な依頼として申し込む事にした。



「お、おい!いきなり俺が馬を操縦するのか!?」

「実践以上の経験はありませんよ?横でちゃんと教えますから頑張って下さい!」

 テラードに馬の操縦を教えて貰うことにした恵二たちは、町の外へと出た。町に出る際には、やはり門での検査は厳しいものであった。兵士たちは魔物の素材を持ち出していないか再三尋ねて確認をしてきたのだ。

 長い検査を終えて町を出ると、4人は馬車の練習に最適な広い平地へと赴いた。そこへ着くといきなりテラードは恵二に馬車の御者を任せるのであった。

 最初は勢いで馬の操縦を教えて貰えないかお願いした恵二だが、こんな状況で自分の我儘の為に時間を割くのはどうかと考えたのだが、意外にセオッツやサミも乗り気であった。

「私も丁度いいからこの機会にきちんと馬の扱いを覚えるわ」
「俺も馬車の操縦ぐらいは出来るようになりたいしな」

 そんな訳で現在は3人ともテラードから馬の扱いを教えて貰っていた。

「しかし、本当に良い馬車ですね。馬も賢そうですし・・・。さすがCランクの冒険者ですね」

「あー、これは貰った物でな・・・」

「これが貰い物!?信じられない。こんな揺れない馬車なんて初めて乗りましたよ。これならどんな下手くそが操縦しても絶対酔わないですよ!」

「そ、そうか・・・」
「・・・・・・」
「――プッ」

 テラードの台詞に三者三様の反応を見せた恵二たち。つまり恵二は相当酔いやすい性質なのか、それともそれ以上にサミの運転が酷いのか、セオッツは後者と受け取ったらしく思わず吹き出してしまいサミに杖で叩かれる。

「いてて・・・。けど、実際どうなんだよ?自分で操縦してれば酔わないもんなのか?」

「・・・操縦にいっぱいいっぱいでそれどころじゃねえ」

 確かに今は馬を操るのに夢中で酔いはしなかった。この効果が永続的であればいいのだがと恵二は願った。


 この後4人は昼の休憩を少し取っただけで、ずっと馬車を走らせていたのであった。



「サンキュー、これが今日の分の報酬な」

「うわー、こんなに!ありがとうございます!」

 恵二は授業料を少年に支払った。報酬は日払いとなり、3人はそれぞれ折半してテラードに支払った。少し相場より高めな報酬なのは先輩の見栄と若手育成の為にと考えてだ。

 テラードと別れた3人は夕飯には少し早いが孤児院へと戻ることにした。ゴロツキどもの調査もしたかったのだが、ほぼ半日荒い操縦の馬車に座っていたので3人ともくたくたであった。さすがに今日は疲れたので、また明日改めて行うことにした。

「ただいまー」

「おかえりなさいサミ」

 孤児院へと入ると、玄関には丁度アミーが出かけるタイミングだったのか出迎えてくれた。

「アミー姉どこか出かけるの?」

「ええ、ちょっと夕飯のお買いものにね。悪いけど子供たちの相手をお願いね」

「わかったわ・・・。ケージ、アミー姉についていってあげて」

「え?俺?」

「こんな状況だし一人で行かせるのも気が引けるしね。それに荷物運びは男の仕事よ」

「はい、はい!それなら俺が着いて行くぜ!」

 美人であるアミーと一緒に出掛けたいのか、セオッツはそう志願するもすぐにその希望は絶たれた。

「あんたはこっちで私とがきんちょ達の相手よ」

「いてて、もっと俺を優しく扱ってくれー!」

 耳を引っ張られながら連行されていくセオッツを尻目に恵二とアミーは買い物に出るのであった。



 買い物は問題なくスムーズに行われた。ギルドと同じ様に売買を拒否されたらどうしようかとも思ったのだが、さすがに食べ物までには手を回さなかったようだ。

 買い物を終えた二人は道中さりげない会話を交えながら帰路に着いた。

「それで、サミは結局どっちとお付き合いしてるのかしら?」

「ど、どっちとも付き合っていませんよ。サミは俺たちの冒険者仲間です」

 孤児院に来てからというもの、この手の質問を何度もされいい加減慣れたと思ったのだが、年上の美人さんに色恋沙汰を尋ねられると若干慌ててしまう。

「そうなの?姉の私から見てもあの子はとっても良い子よ。お嫁さんにするならああいう引っ張ってくれる女の子がケージ君には合いそうだけど」

「それならさっきセオッツが引っ張られていきましたよ。物理的に・・・」

「ふふ、そうね。あの二人もお似合いかしらね」

 そんな遣り取りをしていたらあっという間に孤児院の傍まで来た。だが、そこで思わぬ客が現れた。

「よお、姉ちゃん。えらい綺麗だねえ。なあ、そんなガキじゃなくて俺たちと遊んでいかねえ?」

 そんな三下台詞を吐いて登場したのは、いかにも”俺たちゴロツキです”と自己主張しているような身なりの男たちであった。
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