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「こっれも駄目~♪あれも駄目♪駄目ね駄目ね~♪」


 即席で作った歌を歌いながら、出来た金属のパーツを後ろに放り投げる

ガシャンっと音をたてて工房の床にできた金属パーツの山が1つ分高くなる。


「うーーん」


 受け取った鉱石で幾つかのパーツを作ったのだけど、全部強度が足りない

合金にしてみたり色々と試したのだけど全部だめ、発砲時に破裂する可能性が………。

もっと良い鉱石を使えば簡単に解決できるけど、恐らくそれでは意味がない。

直接確認したわけではないけど、これは初心者なんかでも使えて火力を上げるための物だろうから

安価で手軽に用意できる鉱石でなければ意味がない気がするんだよね。


「どうするかなぁ」


 インベントリと銀行の倉庫を開いて受け取った鉱石の種類と手持ちの鉱石の種類を比べていく

初級から中級にぎりぎりなるかな?という所で取れるような鉱石はほとんど受け取った鉱石の中にあった。


「ぉ??これはえーーっっと…………」


 ある程度まで見比べた所で止まる、"地下墓地(カタコンベ)の鉱石"と書かれている。

首都近くの墓地を抜けた丘の上から入る地下墓地の下層のほうで取れる鉱石で、実装当時はクエストアイテムでもあったので

入手制限の為にあまり持っていないけど、試してみるかな?


「おぉ?」


 インベントリから取り出すと、黒く鈍く光る金属パーツ、本物の銃のパーツのようにずっしりと重みがある。

鑑定してみると、強度は十分足りている。これならもう少し軽量化しても強度が足りるかも?

とりあえず、データを添付してミリアルドにメールを飛ばす、反応がなかったら宿屋にメッセージを残して欲しいだっけ?

一式分のパーツを作った所で鉱石が無くなる、そしてタイミングよくメールの返事。

これで10セット分つくれるか?と、じゃぁこれから掘ってくると返事を返す。


(マッセ~マッセ~)


(んん?なんや?おかずなら今日は肉が食べたい感じやで?)


 思わずなんでやねんっと釣られてツッコミそうになる。


(なんでやねん!ぁ……思わずつっこんじゃった……カタコンベにデートに行かない?)


(………いやや!なにいうてんねん!?私がおばけとかゾンビとか苦手なんしっとるやろ!?)


(だって、2人居ないと入れないし………途中の仕掛け扉も2人必要だし)


(他の誰かに頼みぃな!ぁ、そやルー君とデートに行ったらええやん?ほら、訓練かねて!)


(えぇぇ!?ちょ、なんでそこでそうなるの?!)


(デスゲームになる前に初心者訓練場には行っといたほうがええやん?)


(それはそうだけど、わざわざ鉱石取りによばなくても……)


(ふぅん、うちはええのに、あの子はあかんのや?あーあ、かわいそうやわぁあんなにティセ慕ってるのになぁ?)


 むぐぅっと言葉に止まる、したり顔でにやにやとしているマッセの顔が容易に想像できてしまうだけに言い返せない自分が悔しい。


(けどほら、ルー君の都合もあるし!)


(うちも都合があるんねんけどなぁ?それに訓練だって言うより、用事を手伝ってのほうがええとおもうんやけどなぁ?)


(ぅ………それはそうだけど)


(そういうわけやから、うち今日は外食するんで朝帰りでもかまへんで?昨晩はお楽しみでしたねっていってみたかったしなぁ)


「むぅ………」


 からかうような笑い声を残して個人通信を切られてしまう。

たしかに地下墓地(カタコンベ)は、初心者殺しとか初見殺しとか言われていて、初心者を育てるのに一度は連れて行く場所だけど……

他に誰かいないかな……ミフネさんは忙しそうだし、鉄鬼さんはゴーレムのカスタムに夢中で返事がないし

あれ?こうして考えてみると、この姿での知り合いって意外に少ない?!

他に知り合いってギルドメンバーぐらいしか、そういえばギルドチャットで私も誰も発言していないけど

誰か居るのかな?居ないと寂しい感じがする。

別に切ないわけじゃ…………ぅぅ、なんか泣きそうだ。



(ぁ、あのティセリアさん?)


 いきなり入ったルー君からの個人通信にガタっと椅子を揺らしてティセリアの身体が驚いてはねる。


(な、な、何?)


(あ、あれ?マッセさんからティセリアさんが手伝って欲しい用事があって探していたって、個人通信使うのに気づいてないから声かけてあげてって……)


 嵌められた!自分が行きたくないからってまさか先手を打ってくるなんて………マッセ恐ろしい娘。

しかも用事があるって先に伝えられてしまえば、何も無いなんて言いづらい。


(……ぁ、ごめん、えっとカタコンベに鉱石掘りに行きたいんだけど、これからデートに行かないか?)


 やってしまった、やってしまったよ?!どうしよう?!

慌てていていつもマッセに言うのりでデートに行こうと言ってしまった、いや、きっと何も問題はない。

うん、男同士だし、冗談で……というかデートでいくような所じゃないし、ルー君ならわかってくれるはず。

必死に自分に言い聞かせて落ち着かせる。


(はい!わかりました、きちんと装備や道具を準備しますね!1時間後ぐらいに南門でいいですか?)


 一瞬の間を置いての明るいルー君の声、いつものように恥ずかしがったりしている感じはない

あれ?よかった、狩りに出かけるよって意味で伝わったんだ。

いやいや、なんでちょっと残念だとか思っているんだろう?

大丈夫だ、問題ない。



(うん、じゃぁ一時間後に南門で)


 さて、準備しなきゃね!

ポーションとか雑貨はインベントリにいつもあるし、店の在庫も大丈夫……うん。これだけあれば数日寝泊りしても大丈夫!

えーっと、装備はどうしよう?ちょっとぐらい綺麗な格好のほうがいいかな?

どういうのがいいんだろうか?可愛いのとか?キリっとしてる感じのほうがいいのかな?

やっぱり男として絶対領域は必要だよね?

……………いやいやいや、何を考えていた? 

私は男で、ルー君も男、ok?

私は普通に女の子が……いえ、違いますロリコンじゃないです。

女好きって書くとコレもなんか違う気がするけど、健全な男です。

なのになぜ、デートに来ていく服に悩んでいる乙女の図になってる?

早くログアウトできるようにならないと不味い気しかしない、けど、考えたら現状では負け。

うん、よし、今日寝たらきっと忘れるだろう。


 無理やりに頭を切り替えて準備に戻る。

ポーションや雑貨はさっき確認したし、地下墓地のマップは持っているし、解呪薬もばっちり

灯りも用意してあるし………ぁ、そうだ、この時間から行くなら夕飯作っていかないと。

んー、何にしようか?

マッセも私も日本人だから日本食が多いけど、ルー君って違うっぽいしなぁ

海外の晩ご飯ってどんなのだろう?

ステーキを食べている映画のワンシーンしかでてこない。

カルボナーラとカルパッチョとかでいいかな?

スキル発動させて、さくっと料理を作る。

インベントリにいれておくと劣化しないってすごいよね。主婦の夢だよねぇ。

洗い物の心配もいらないとか!

一人暮らしが長いと思考が主婦みたいだなぁ………。


*****Side ルードヴィッヒ

(……ぁ、ごめん、えっとカタコンベに鉱石掘りに行きたいんだけど、これからデートに行かないか?)

 

 一瞬何を言われたのか理解できなかった。

少し遅れてデートに誘われた、しかもティセリアさんのほうからと理解する。


(はい!わかりました、きちんと装備や道具を準備しますね!1時間後ぐらいに南門でいいですか?)


 早く返事をしなければと思ったけど、頭の中が真っ白で何も考える事ができず

条件反射というのかな?頭の中に浮かんだ文章をそのままティセリアさんに伝える。


(うん、じゃぁ一時間後に南門で)


 何か期待されていたのだろうか?少しだけがっかりしたようなティセリアさんの声。

やっぱり何か付け加えたり、気の利いた台詞を返したほうがよかったのだろうか?

けど、ティセリアさんとデートなのだ、そうデート。

鉱石を取りに行くという用事はあるものの、わざわざ自分を誘ってくれた。

しかも、恥ずかしいのか冗談のようにデートにいこうと。


「うわぁっっ」


 思わず声をだして、ベッドに飛び込む。初心者ボーナスで無料で泊まれる狭い部屋、狭いベッドの上で

ぎゅうっと枕を抱きしめて転がる、デート、デート、デート!

自然と頬が緩んでくるのが自分でも自覚できる。

ぁ、着ていく物はどうしよう?けれど装備を変えれる程の余裕はないし………

この間ティセリアさんが作ってくれた装備でいいよね?

あとは、道具の確認とかをして、時間より早めにいって………花束とか用意したほうがいいかな?

 



話によって短かったり長かったりしますが、ご容赦くださいませ。


ちなみに、デートしようと聞いたルー君は、条件反射で返事をして

通話を切ったあと暫く硬直し、ほっぺたをつねってみたり、耳をひっぱりしてから

真っ赤になって悶えながらベッドを転げまわっていました。


地下墓地(カタコンベ)に付いてですが、同じ鉄の鉱石であっても

瘴気やらなにやらで変質しており、違う物になっている感じです。


ルー君は日本人ではないです。




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