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工房からでると、カウンターの前に戦士の男が2人が立ってこちらを見ている。

レベルは20代、なんというのだろう?チンピラにしか見えない。


「やっとでてきたか」


「何か御用でしょうか?」


「おう、首都近くの森にゴブリンの砦ができたんで討伐隊からの要請だ。中級ポーションを作って売ってくれや」


「そうですか、お断りします」


即答すると、さすがに男達は一瞬詰まる。


「はぁ?おいおい、ここは初心者用の為の店なんだろ?だったら俺らが砦潰したほうが初心者も安全だろうがよ!?それに……なぁ?お前も守ってやるぜ?」


下卑た笑いと共に、男の舐めるような視線が身体を這う

ぞわりっと全身に鳥肌がたってくる。

表現がリアルになってから視線やらなんやらを感じるようになったのは良いんだけど

気持ち悪い……、男、しかもこんなのにっていうのは、もう、拷問だ。


「まだオークの方がマシ。それに持ち込みで頼むのならともかく、その分初心者への供給が減るのだけど?」


「あぁ?協力できねぇってのか?掲示板にも呼びかけがあるだろうが!」


こちらを睨みつけながら、低い声を出して威圧してくる男2人

その程度のレベルで凄まれても特に怖くもなんともないんだよねぇ。

確かに掲示板には黒騎士中隊のギルドマスターが、イデアの森にできたゴブリン砦の破壊をする事、有志募集の書き込みがあった。


「有志の募集であって、参加強制なんて書いていないけど?」


「あぁ?!」


ドスの効いた声をあげて、男達がすごむ。

ガンっとカウンターを叩き、店内に残っているプレイヤーがびくっと身体を竦ませている。


「あの………ティセリアさん……大丈夫ですか?あと、その……ゴブリン強いのが森にいるのは本当だと思います……」


ひょこっと工房からルー君が顔を覗かせてこちらを見ている

会話が聞こえてたのだろう、心配そうな顔で。


「おいおい、初心者店の女主人様はああいうのがお好みかよ?ガキので満足できるのかぁ?」


「へ?ぇっ…………??」


少しの間を開けて、言葉の意味を理解したのだろう

真っ赤になってオロオロとしはじめるルー君、うーん可愛いなぁ。


「とことん屑ね?一生懸命な後輩を助けてあげたいと思うのは普通だと思うけど?それに鍛冶屋でまさかオーダーメイドもしたことないなんて……まさかねぇ??」


ふっと笑ってやる。

オーダーメイドはこのゲームをしている上では必須

使いやすい自分にあった武器、防具というのはそれだけで自分の戦闘が変わってくる。

掲示板で騒がれている有名な厨と言われる自分勝手なプレイヤー達ですら

オーダーメイドを頼む職人には敬意を払うし、大事さを知っている。

PK(プレイヤーキラー)でさえ…いや、PKだからこそ、そういう職人は大事にするし。

あれ?ルー君がしょんぼりしてる?


「あぁ?何わらってやがんだ!」


「知らない人が多いけどこのゲーム、録画機能の他に、条件付きだけど映像をリアルタイムで流せるのよ?」


自分の敷地内やPTを組んでいたりすれば全員の承認が必要であったり

キワドイ格好なんかはプログラムなんかで特殊な手続きをしていないと自動に弾かれたりと条件があるが

スクリーンショット機能や録画機能のほかに、リアルタイムで映像配信ができるのだ。

そして、募集掲示板のスレッドにこの2人の録画映像があり、今もリアルタイムで流れている。


「ここか!!!」


バンっとドアが開けられて、揃いの騎士風の鎧をまとったプレイヤーが5人ほど入ってくる

名前の上には<黒騎士中隊>の文字

そしてそれぞれの鎧の肩には、黒色で馬に乗った騎士のロゴ、ギルドエンブレムが描かれている。


「現行犯だ、審判(ジャッジ)の承認もでているからな、牢屋にぶちこんでやれ!!!」


「お、おい!なんだてめっがっ!?」


食ってかかろうとした男のみぞおちに、金属の小手に包まれた拳が容赦なく突き刺さる。

表情を歪めてぐったりとした男を抱える騎士風のプレイヤー。

もう1人の男は既に拘束されていた。


「すいません、お陰で詐欺師共を捕らえられました」


5人の騎士達がこちらへと敬礼する。


「いいわよ?お粗末すぎるもの」


ひらひらと手をふって返すともう一度敬礼をして去っていく。


「ぁ、あの……ティセリアさん?」


ルー君が、いやルー君だけじゃなくて店に残っていたプレイヤーからも不思議そうな視線を向けられている。


「ん?あぁ?なんで詐欺だってわかったかって話?」


こくんっと小さくうなづくルー君。

なんだろう、弟みたいに思えてしまう。


「まず、黒騎士中隊って礼儀正しい大人のギルドだからね。あそこのギルマスやサブマスは、きちんと礼を知ってる」


何度か頼まれて納品した事があるけど、あそこのギルドの対応は凄く丁寧だった。

砕けた感じなどではなくて、こう、会社とかの仕事のような感じで

納品書の確認、値段の確認、商品の確認をきちんとして、言葉遣いも敬語できちんとしていた。


「2つ目、イデアの森の死神知ってるよね?」


初心者フィールドのイデア森。

比較的安全にも関わらず、採集の効率が良いことで有名なのだが

ちょっとした事件というか運営のほうでの問題があって、白い少女の姿をした亡霊モンスターが実装されたのだ。

一定時間以上イデアの森内にいるプレイヤーに対して、攻撃してくる

しかも攻撃力は、攻撃されるプレイヤーのレベルに比例する。

それを回避するには、小さな砂糖菓子というアイテムが必要になってくる。

ポーションよりもなによりも、数が必要で優先される。


「イデアの森に入るならポーションだけじゃなくて、別のアイテムも一緒に頼むのが普通。というかポーションよりも重要だからだよ」


「そのアイテムがあれば死神は大丈夫なんですか?」


ルー君と一緒に聞いていた初心者の1人が質問してくる。


「そうだね、1つで30分もつよ?けど今はゴブリンとかで物騒なので見通しの良くない森とかは避けるほうがいいと思うよ」


「ありがとうございます」


ぺこりとお辞儀してくれる。日本人かな?


「んじゃ、ルー君続きっっ「ティセ~~!大丈夫やったん?!」


ルー君のほうへ振り向いた瞬間に後ろからぎゅぅっと抱きつかれて、よろめく。


「ちょっっ、危ないよマッセ!」


「大丈夫やってん?もう掲示板見てたらティセが変なのに絡まれてるやん?!大急ぎでもどってきてんよ?!」


ぎゅっと背中に押し付けられる胸、抱きつかれているせいで触れる肌と肌の感触

照れくさいというかなんというか、免疫なんてないので赤くなってしまうのがわかる。

ふっとルー君と目があうとじぃっとこっちを照れたように見つめている。


「マッセ、話すなら台所で。ルー君、ごめんちょっと工房でまっててね」


後ろからマッセに抱きつかれたまま、台所のほうへと歩いて行く。


「しっかし、意外やねぇ??ん~~?」


肩に顔を載せてマッセがこちらを覗き込んでくる。


「な、何がさ?」


「ん~なにがって、なぁ?イケメンやらに告白されたりしてもバッサリ行ってたのは、あ~んな可愛い子が趣味やってんや?お姉さんが教えてあげるって感じなん?」


にやにやと笑いながら、誂うようにこっちを見つめている。

お前はおっさんか!!私の中身は男だよ、まぁ確かにイケメンは爆発しろって思うし口説かれても気持ち悪い。

ネカマしてるから、なんていうか男の下心とかは丸分かりだからなぁ。

まぁ、ネカマしてるお陰でこうして体感とかがリアルになってもあんまり、違和感というか衝撃は少ないんだけど

やっぱり男に見られたりとかいうのは気持ち悪い。そこだけは譲れない。

さっきの詐欺師2人組も殴り飛ばしたかったし。


「ん~、そういうのじゃないんだけどね。チュートリアルも真面目に受けてきてるし、一生懸命がんばってる所が可愛いというか、歳の離れた弟みたいな感じっていうか………」


「ほんまにそれだけなん?けど、そのへんのイケメンよりはあの子のほうがええんやろ?」


ぅ……、まぁたしかに一緒にいて不快感は無い。

いじられ属性というか、しゃべってて面白いけど、そういうのはなぁ。

確かに生まれ変わるなら女になってみたいとは思うけど、今は男であって

ゲーム内でも男と……っていうのは、かなりイヤすぎる。


「ぅーーーん、確かに真っ直ぐでなんていうか……ぅーん、けどそういうのじゃ……」


「ふぅん?けど、ほら、あの子とあんな事とかこんな事とか考えへんわけやあらへんのやろぉ?」


うわっっ!?

そう言われて思わず想像した……うわっっ、ちょっっ、タイム、マジタイム。

無い無い無い無い!ありえないから、鳥肌が!いや、二次元?だし男の娘なら……いやいやいや!

別に二次元なら男の娘も可愛いとっ……違う違う。無い、無いから!落ち着け私。

マッセにふぅっと耳に吐息を吹きかけられてびくっと身体を振るわせてしまう。


「ひゃぅっっ!?マッセ、何すんの!」


「ん~~べっつにぃ?脈が無いわけやないんやなぁって思って。そ・れ・と・ティセが可愛えなぁと思って。ほな、仕入れの続きに戻るわなぁ」





可愛い声をあげて真っ赤になっているティセから身体を離して、くるりっと振り返る。

少しだけ開いている工房のドアから、こっちの様子を伺っている、少女のような男の子、確かルー君って呼ばれとったかな?

目が合ったので、ぱちっとウィンクをしたると慌てとる。

たしかにこれは、あのティセが気に入るのも分かる気ぃするわ。

横を通る時に、この子にだけ聞こえる声で小さく言う。


「よかったな、頑張りや少年?脈ないわけやないで?」


わたわたとしながら工房内に慌てて引っ込んでいくルー君と1人でちがうちがう、そんな事はと言っているティセを見ながら

仕入れに戻って行くマッセであった。

ティセリアにとっては、ルー君は一生懸命で真面目な弟という感じです。

あと、ネカマしている人なので

現状ではそれほど「男と女」との違和感を感じてはいません、ゲームの延長上みたいな状況だと気にしていませんので。

ネトゲでネカマの知り合いの方に何人かインタビューもしたのですが、

リアルならさすがに男とかありえないけど

ネカマしてる時はキャラになりきってる?ような感じなので

嫌悪感なんかはないそうです、ゲーム内で(男と)結婚してる人もいます。

ちなみに作者の知り合いは

「ネカマのお嫁さん募集中、騙し通してくれる人」

という募集をしていました。

可愛い~お嫁さんをゲットしていました。

っと、話がずれてしまいましたが

そのうち、リアルとゲームの意識の差や、そういった事からくる違和感というか、男女の違いのなんかのイベントも書きたいと思います。


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