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積み木部屋

作者:キュウ
 少女はいつも、自分の部屋に篭っていた。
 たった一人で、誰もかれも寄り付かせないで、数多の木片に囲まれて、ただもくもくと遊んでばかりいた。
 チョコンと冷たい床に座り込んで、傍に転がっている木片を手に取り、目の前に積み上げた小さな塔に、一つ、また一つと置いていった。
 円柱、三角柱、立方体、直方体。角はしっかりと、滑らかに削られている。その、指に心地良い感触を幾分か確かめた後、わずか名残惜しげに手放す。他にも、職人の工夫が凝らされたことがよく分かる様々な形状の木片が在る。全て、姉と揃って両親に買って貰ったものだ。
 今でも両親は少女に接触を謀ろうとする。しかし、彼女はいつもそれを拒んでいた。彼等が何か欲しいものはあるかと訊くと、彼女は決まって、か細い今にも溶けてしまいそうな声で「積木が欲しい」と言った。
 少女の部屋は、積み上げられた積木でいっぱいであった。
 小さな手に持った積木をコトンと床に置く。すると隣に座ってそれを見た姉が、同じように積木をその上へ置く。そしてまた少女が置き、姉が置く。ただ肩を上下に行ったり来たりさせるだけの簡素で単純な作業の繰り返しを重ねていき、積木の塔は徐々に高さを増していく。
 そのうち、少女の背丈では手が届かなくなり、少女より少しばかり背の高い姉が、少しばかり誇らしげに、得々と積めるだけの積木を積んだ。少女はその様子にちょっとだけ不満を感じ、頬を膨らませたものだが、どんどん丈の増していく積み木の塔はそれをも凌ぐ魅力を放ち、彼女の好機の視線を一心に募った。
 だから、部屋に在る積木の塔は、どれもこれも少女より背が高い。彼女の姉と同じくらい、背が高い。
 少女は、そんな積木遊びが大好きだった。姉と共に、一心不乱に積木を積み上げていく。ヨイショヨイショと積み上げる、その姉の姿を見上げるのも、同様に好きだった。
 ……それなのに。
 と、ある日の少女は呟いた。独り残った薄暗い部屋で、木片を握り締めながら、いつもの明るい声色を押し殺した声で、呟いた。なぜか、角は滑らかなはずなのに、手の平にジンジンと痛みを感じるのも気にせず、床に乱雑に散らばり落ちている木片を見つめていた。
 姉はいつしか、積木を無作法に放るように成り、家の外へ駆け出て行くように成った。
 その揺れる背中を見つめる少女を振り向き見ることもしないで、彼女からどんどん遠くへ、うんと遠くへ離れて行った。少女が、走る姉の手首を掴んでも、あっさりと振り払われた。
 それでも彼女は、独りで積木を置いていく。右手で置いたら次は左手。左手で置いたらまた右手。それを繰り返して積木の塔は高く成っていくが、少女には、それがまるで背の高いようには感じられない。もはや、見上げることもできない。
 ――そして、その日はやって来た。
 窓から、姉が外で遊ぶ様子を少女は見つめていた。当然、姉に迫り来る自動車にも気付いた。いつも自分の家のガレージに停まっているその自動車は、スピードを上げながら姉の方へ近付いて来ていた。だが、姉は、いや、姉も、自動車の運転手も、頭打ちの瞬間まで迫る危機に気付かなかった……。
 ――少女の部屋には、少女と同じ背丈の木片の塔が幾つも在る。そこに、少女以外の存在の面影は無く、彼女はいつしか、積み上げることも止めてしまった。

 両親が少女の部屋のドアを叩く慌てふためくようなひどく乱れた音が響き渡る。大声で中に呼びかけるが、一向に応答が無い。
 彼等の意識には描くこともままならない、部屋の中に在るのは、傷だらけで散乱している大量の積木と、その山の中に埋もれ伏す少女が、独りだけだった。
始終真っ暗な感じのお話ですね(笑)
何か一息入れてくださいというのを第一の主軸に3分短編を書いてますが、
一息つけましたか?
別の息がつけたという方は、あい失礼いたしました(笑)

HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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