第七話 地獄の特別講義
あの戦闘から一週間が経ち、俺は現場復帰の報告を艦長、田部 総一郎に伝える為、艦長室へと向かった。
「艦長! 白馬 雪徒少佐、現時刻を持ってPFのパイロットに復帰します」
そう言い、雪徒は敬礼を解く。
「ご苦労。そうそう少佐、君には後でトレーニングルームに行ってもらう」
「トレーニング……ですか? あっ……」
少々疑問はあったが翌々考えてみれば、自分は記憶喪失でPFを碌に操縦できないことを思い出した。
「そういうことだ、少佐」と意味ありげな笑みを残し、田部艦長は仕事に戻った。
◇
トレーニングルームに設置されてあるPF操縦教習用のシュミレーターに閉じ込められ、雪徒は延々と加奈子の講義を受けることなったのである。
「……少し休憩にしないか?」
「お前はもう少し真面目にやる気はないのか?」
おいおい、話が全然噛み合ってないって……。
「貴様が記憶を失くさなければ、こんなことをしなくて済んだものを……」
「だから、俺はお前に頼んだ覚えは無い!」
「艦長命令だ! 意義があるなら田部艦長に申し立てろ!」
それは兎も角、加奈子はまさに鬼だ!! そう言いきれるほど、彼女の講義はハードでなのである。
歩行訓練、空中動作、戦闘の基本やらを頭に叩き込まれ、雪徒神経回路がパンク寸前というところでトレーニングルームの扉が開いた。
「あの〜、差し入れ持ってきたから少し休憩にしませんか?」
菜癒季がおにぎりを持ってきた。
その姿は雪徒にとって救世主そのものであった。
「そうだな……。冷めると不味くなるし、少し休憩にしょう」
「……助かった」
シュミレーターから降りてきた雪徒は死に掛けの老人のようであった。
「どうぞ〜」
菜癒季は二人におにぎりを手渡した。
「……美味しいな」
加奈子は率直な感想を述べる。こういうところにも性格が出るようである。
「うん、美味しい。これ、春日さんが作ったんだ?」
「ふふ、違いますよ」
彼女は意味深な笑みを浮かべる。
加奈子は誰が作ったなど関係なしにおにぎりを食べる。
「じゃあ、誰が作ったんだ?」
「明日香さんですよ」
「あの子何でも出来るんだぁ?」
「……それだけですか?」
菜癒季はキョトンとした目でこちらを見ている。
……どうやら、意外な返答に不意を突かれたようである。
「いや、凄いなぁ……って」
「隊長らしいですね」
何が隊長らしいのか雪徒にはさっぱり理解できなかった。
そんな一時もすぐに消え去っていくのであった。
「……緊急事態、緊急事態、PFパイロットは各自のPF内で待機。繰り返す……」
緊急放送が非常ベルと共に艦内に鳴り響く。
ここまで大袈裟に言って、何も無かったら流石に殴りたくなる。
「急ぐぞ!」
三人は格納庫へと走っていった。 |