第一話 記憶喪失
「……待っていたぞ」
会議室の扉が開かれ、一人の青年が入って来る。
青年の名は、白馬 雪徒。過去の戦役において素晴らしいほどの成果を残している。
歳は18才だが、少佐という高階級に就いているのもその訳である。
「何の用ですか?」
青年は何も聞かされていないのか、少し挙動不審気味である。
「では率直に言うが、君には再び我が大日本帝国が誇る高性能攻撃空母・大和撫子に乗艦してもらいたいのだよ」
一番奥の議長席に立派な武将髭を蓄え、堂々と腰掛けている最高議長、松永 茂雄が答えた。
「……自分がですか?」
君しかいないという声が他の議員からも上がったが、気にせず理由を訊く。
「君は過去に米軍の日本制圧を阻止した部隊の隊長だからだ。それでは理由にならんかね?」
会議室の奥の方にいる松永の声は大きくハッキリと聞こえる。
しばらくの沈黙の後、雪徒は口を開いた。
「一つ、いいですか?」
「……何だね?」
「過去の記憶を失くした自分でもいいのですか?」
それを聞いた議員達の批判の声で途端に会議室が騒がしくなる。
流石にこの騒ぎで取り乱すこと無く落ち着いていたのは、松永とその他何名かの地位の高い人達だけであった。
「黙れ!!」
松永が怒鳴ると途端に室内は元の静けさを取り戻した。
「……だが、アレに乗れば再び記憶が戻るやもしれん。 君には予定通り大和撫子に乗艦してもらう」
「解りました……」
「乗艦日時は折り入って、連絡を寄越す」
雪徒は敬礼し、会議室を出た。
「……で、君はどうするのだね?」
一人の定年間近の年寄りが松永に問う。
彼は立花 奏作。議員の中では松永の次に偉い男である。
「……暫し様子を見る。 駄目なら代えを用意してある」
その言葉を最後に松永も席を外し、今日の議会は閉会された。 |