第十四話 動き出す刻
スパイ発覚事件から丸二日経った。
「……そういえば、英軍が近くに来ているとか」
つい先程、会議で英軍の作戦展開阻止の任務を告げられた事を思い出す。
「亡命……か」
頭の中にはその二文字が浮かび上がった。
「母国を売るのか? ……だが、これしかない」
彼の脳裏に明日香の笑顔が浮かぶ。
優しかった、彼女の顔が……。
それをもう一度、取り戻すためにも……。
彼は亡命する決意を固めたのであった。
そして、任務当日……。
「今回は英軍だ。油断すると撃墜されるぞ」
玉灯隊の隊長、神無月が全員に無線で激励を送る。
「…………」
雪徒は無言で出力のチェックを済ますと、亡命が成功することを只祈るばかりだった。
成功してくれ……。
俺と、明日香の為に……。
「時間だ、出撃してくれ。周囲の警戒を怠るな」
艦長、田部 総一郎は作戦開始の合図をPF部隊に送る。
「……白馬 雪徒、出撃します!」
もう後には引けないと、母艦を背に雪徒の舞桜は飛び立った……。
◇
あの日、俺が日本を捨てた日からちょうど、一年が経った。
後は、来るべき日を……、日本政府制圧の作戦を待つだけ。
記憶は未だ戻らないが、今の俺にはもう過去など必要ないとも思えてくる。
第三次世界大戦の戦局はまだ、日本が圧倒的な軍事力で世界を押し仏軍はとうとう手を引くとまで言い出す始末。
このままでは、暴走した日本は世界の脅威になりかねない。
何としても、必ず喰い止めなければならない。
例えそれが、過去の戦友を殺すことになっても……。
そして、彼女を……。
明日香を助ける。 |