◆4-a◆高校3年生のバレンタイン〜女房一筋(sinichi)
「工藤先輩っ! アヤ、本気なんですっ! 超超ちょ〜スキですっ、貰ってくださいっっ!」
明るい茶髪をストレートにし、大きな瞳が印象的な少女は、可愛らしい赤色でラッピングされた包みを新一に差し出した。
『アヤの憧れる工藤先輩へvv
工藤先輩がダイスキなアヤよりvv』
ピンクとムラサキで書かれたメッセージカードが、綺麗に包みに添えられている。
「悪いけど…オ」
「毛利先輩と付き合ってるのはもち、知ってますよ!! けどアヤ、ど〜しても止められなくて…とりあえず、食べてみてください、美味しいですよ!!」
新一の言葉を遮った彼女は、必死に包みを押し付ける。
迷惑そうな顔をする新一を、何とかしようと必死なのだ。
「悪ィけど…そ」
「ってゆーか、毛利先輩よりアヤのほーがカワイイしぃ〜せんぱぁい、考え直してくださいよ〜」
すると今まで迷惑そうにしていた新一が、低い声で呟いた。
「悪ィけど、そのチョコ、受け取れない。その理由は、蘭がいるからってわけでもない」
「え…」
彼女は新一の態度に、一瞬身を凍らせた。
「今度蘭を嫉妬でそんな風に言ったら……」
新一の目つきが鋭くなったのを見ると、彼女は目を伏せてそそくさと去っていった。
「モテモテっすな、名探偵!」
「やっぱり女房人筋かよ! あのコ、オレ狙ってたのになぁ〜」
「やっぱアンタは、蘭の事なると周り見えなくなるわねぇ〜」
草むらから出てきた人影は、するりと新一の前に現れる。
「園子…!? そのにお前等…!?」
園子とクラスメートの男子は、ニヤニヤしながら囁きあう。
「普段なら、天下の名探偵、私達に気づくわよねぇ〜??」
「そりゃあもう! 告られてるとこ覗いてたって一発だし!!」
「女房中傷されっと、ポーカーフェイスも観察力も崩れるねぇ?? なぁ、名探偵??」
面白半分に覗いていた彼ら。
新一は、蘭のコトになると周りが見えなくなる。
つまり、去っていた彼女に蘭のよさを話すうちに園子たちの存在に気がつかなかったというわけだ。
「……工藤、理由はよ〜くわかった」
「あ?」
「本命から。まだ貰ってないんだろ? 嫁さんさっき男に言い寄…」
「なっ…!?」
最後まで聞かないうちに、新一は鞄を持って校舎へと全速力で駆けて行った。
残った3人は、溜息をついて。
けれど何処か綻ばしそうに、小さくなる彼の背中を見送った。
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